baroque 28
誰しもが
bonheur
羨む事が
bonheur
幸せだとは限らない
総二郎の胸に包まれながらつくしは、涙を零す。
一粒、二粒……と涙を零し続ける。
長いこと抱き締めた後、総二郎は掠れた声を絞り出す様に
「京都に帰んの……明日だっけ?」
「……うん」
「こっちに戻って来るのは学校始まる頃か?」
「うん」
「じゃ、その頃また連絡くれよ。なっ」
「総……」
「帰って来たらまた夜抜け出そうぜ。そういやぁお前、クラブ未経験って言ってたよな?今度連れてってやるよ。それともスケートでも行くか?イルミネーションの中滑れるリンクがあんぞ、イルミネーションって言えば、プラネタリウムもいいよな…それとも…」
「…そ…う…総」
「……ワリィ……俺一人でまた突っ走しちっまってるよな……」
つくしは、下唇を噛みながら首を振ったあと
「絶対、連絡するから_」
総二郎は、声に出せない言葉の代わりにもう一度つくしの事を強く強く抱き締めてキスをした。
「じゃぁ、またな」
態と明るく振る舞いながら手を振って見送った。
バタンとドアが閉まりつくしが自分の家に戻っていく。真っ暗な部屋には、ツリーのライトだけが瞬いている。
「つくし……」
愛しい女の名を声に乗せた。声に乗せた途端堪え切れなくなって、彼女の残り香が残るシャツを抱き締めた。
総二郎は、初めて知った。
本気の恋が身を引き裂かれそうな程に辛いと言う事を。つくしの残り香を求めただただシャツを抱き締める。
バタンとドアを閉めると同時につくしの目からは、また一粒涙が零れた。
両手で顔を覆いながらエレベーターに乗り込んだ。
部屋に戻ったつくしは、着けていた衣服を全て洗濯機に入れてからシャワーを浴び涙と一緒に総二郎の痕跡を全て洗い流す。
*-*-*-*-*-*-*
翌日薫と共に出席した東雲会長のパーティーは、とても盛況だった。
パーティー会場の中で優紀の顔を見つけたつくしは、取引先と話す薫に声をかけてから優紀の元に駆け寄っていった。
「優紀〜」
「あぁ、つくし」
「あれっ?宗像さん達は?」
「康祐さんとパパは向こうでご挨拶してはるわ。つくしこそ薫さんは?」
「薫も挨拶に忙しいみたい」
二人で顔を見合わせ笑い合いながら
「ケーキ新作みたいよ」
「じゃぁ、早速いっちゃう?」
仲良く二人ケーキを頬張った瞬間
「つくしちゃん、優紀ちゃん」
東雲夫人に声を掛けられた。
二人の大きく頬張る姿に東雲夫人はクスクスと笑いながら
「お味はいかが?」
「「美味しいです」」
二人同時に答えて東雲夫人を喜ばせた
「うふふっ 本当にあなた方は可愛いわ。家にあなた方とお似合いの年の子が居たら良かったのにと思うわ。。そう言えば、優紀ちゃんも正式に康祐君とご婚約が整ったんですってね? おめでとう。正式なお披露目はいつかしら?」
「ありがとうございます。春先にでもと話しは進んでいるのですが__日にちが決まりましたら改めてご挨拶に伺わさせていただきますので」
つくしは、何の躊躇いもなく嬉しそうに話す優紀を微笑ましくそして羨ましく見つめた。
「そう。うふふ 楽しみがまた一つ増えたわ。つくしちゃんももう直ぐね。うふふっ先月の朱雀会でもその話で持ち切りだったのよ」
もう直ぐねの言葉に驚きつくしが聞き返そうとした瞬間……宗像と共に薫がやって来るのが見えた。東雲夫人は嬉しそうに
「あらっ、噂の殿方が二人揃ってお目見えよ。それにしても二人とも本当に好青年ね。あなた方は幸せね」
優紀が嬉しそうに頬を赤らめ微笑みを浮かべる。
一拍遅れてつくしも笑みを浮かべた。


ありがとうございます♪
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