baroque 30
attaque
攻撃は時に
attaque
最大の防御になることを
attaque
女は知っている
リムジンに乗り込んだ薫は、つくしの髪を優しく撫でながら
「つくし、嫌な思いをさせてごめんね」
心からの謝罪を繰り返す。
薫の謝罪につくしは、熱に浮かされいたかの様なここ数週間の自分の振る舞いを思い出していた。
極力接点は持たない様にしていたのに一体どこで見られていたのだろう?
もしも総二郎との事がバレたらと思うと、会えなくなるかもしれない恐怖で痛いほどに胸が締め付けられる。つくしは罪の全てを覆い隠す様に、薫の胸に頭を預け目を瞑った。
薫はつくしの身体を抱き締めながら、先程の女の言葉を思い出していた。つくしが他の男に色目? 理性は、女の言葉を否定する。悠斗がつくしを見張らせた時何も出て来なかったじゃないかと。それ以前につくしがそんなことをする筈がないと。
だが……時おり感じる違和感から目を逸らすなと薫の本能が告げている。
つくしは、目を瞑り寝入った振りをしながら様々なことを考えていた。
薫が本気で調べる気になれば大学構内の事とて容易にわかってしまうだろう。
毎晩通っていたプールでのこともそうだ。
一つ一つ見れば些細な事であっても……いくつもに打たれた点は、線になり疑惑を生む筈だ。何よりも疑惑は何れ確信へと変わる。
つくしはどうすればいいのかを必死に考えている。
女の言っていたことが本当でつくしに男がいるとしたら?自分の腕の中にいるつくしを見つめながら連々とそんな事を考える。狂おしいほどの嫉妬の炎が薫の心を支配する。握りしめた拳をガリリと噛んでいた。
いつしか本当に眠っていたつくしが、薫の声で起こされた時には、宝珠が有する逗子にある披露山庭園の別邸に着いていた。
庭も邸の中も美しく飾り付けが施されている。煌めくイルミネーションを目にしながらつくしは、ブルブルと身体を揺らしていた。
「食事を用意させるから、お風呂に入って着替えておいで」
薫は、優しくつくしに声を掛ける。
書斎に入り、片倉に調べさせた二川の事を目を通した。
接点は、二つ。贔屓にしているサロンと、つくしの住むマンションだった。
女と付き合いのある男の住まいが、つくしの住むマンションと同じだったのだ。
マンション内の住居の持ち主の名前及び家族構成の書かれた書類に目を通す。目を通した限りでは格段怪しいところは見られない。
トンッ トンッ...... トンッ
指先で机を叩く。苛々している時の薫の癖だ。
「やっぱりメイドを付けないで暮らすなんて許しちゃいけなかったんだ。いやっその前に東京に出るのを許しちゃいけななかったんだ」
思わず吐いて出る薫の本音。
その考えを振り払う様にシャワーを浴びて着替えをした。
揃いのフレグランスを付けてからつくしの部屋をノックする。
つくしは、濡れ髪のままバスローブ姿でベッドにぺたんと座っていた。
「濡れた髪のままじゃ風邪をひくよ」
薫は、バスルームから慌ててドライヤーを持ってきつくしの髪を丁寧に乾かし始める。つくしは何も喋らず無言のまま髪を乾かして貰っている。触れているのにもどかしい程につくしを遠く感じながら薫は、髪を乾かし続ける。
ドライヤーの音だけが部屋の中に響き渡っている。
カチッ
「はい。もう大丈夫だよ」
薫の言葉に答えるようにつくしが、黒髪サラサラと揺らしてから口を開く
「ねぇ、薫」
「うんっ?なに」
「あたし......髪、切ってもいいかな?」
つくしの唐突な申し出に言葉をつまらせた薫の口から、やっと出た言葉は
「っん?.....なんで切るの?」
そんな間の抜けた一言だった。
「短ければ一人で楽に乾かせるでしょ」
何が可笑しいのかクスクスとつくしが笑う。
どう答えを返していいのか解らずに、笑っているつくしを見つめた。


ありがとうございます♪
攻撃は時に
attaque
最大の防御になることを
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女は知っている
リムジンに乗り込んだ薫は、つくしの髪を優しく撫でながら
「つくし、嫌な思いをさせてごめんね」
心からの謝罪を繰り返す。
薫の謝罪につくしは、熱に浮かされいたかの様なここ数週間の自分の振る舞いを思い出していた。
極力接点は持たない様にしていたのに一体どこで見られていたのだろう?
もしも総二郎との事がバレたらと思うと、会えなくなるかもしれない恐怖で痛いほどに胸が締め付けられる。つくしは罪の全てを覆い隠す様に、薫の胸に頭を預け目を瞑った。
薫はつくしの身体を抱き締めながら、先程の女の言葉を思い出していた。つくしが他の男に色目? 理性は、女の言葉を否定する。悠斗がつくしを見張らせた時何も出て来なかったじゃないかと。それ以前につくしがそんなことをする筈がないと。
だが……時おり感じる違和感から目を逸らすなと薫の本能が告げている。
つくしは、目を瞑り寝入った振りをしながら様々なことを考えていた。
薫が本気で調べる気になれば大学構内の事とて容易にわかってしまうだろう。
毎晩通っていたプールでのこともそうだ。
一つ一つ見れば些細な事であっても……いくつもに打たれた点は、線になり疑惑を生む筈だ。何よりも疑惑は何れ確信へと変わる。
つくしはどうすればいいのかを必死に考えている。
女の言っていたことが本当でつくしに男がいるとしたら?自分の腕の中にいるつくしを見つめながら連々とそんな事を考える。狂おしいほどの嫉妬の炎が薫の心を支配する。握りしめた拳をガリリと噛んでいた。
いつしか本当に眠っていたつくしが、薫の声で起こされた時には、宝珠が有する逗子にある披露山庭園の別邸に着いていた。
庭も邸の中も美しく飾り付けが施されている。煌めくイルミネーションを目にしながらつくしは、ブルブルと身体を揺らしていた。
「食事を用意させるから、お風呂に入って着替えておいで」
薫は、優しくつくしに声を掛ける。
書斎に入り、片倉に調べさせた二川の事を目を通した。
接点は、二つ。贔屓にしているサロンと、つくしの住むマンションだった。
女と付き合いのある男の住まいが、つくしの住むマンションと同じだったのだ。
マンション内の住居の持ち主の名前及び家族構成の書かれた書類に目を通す。目を通した限りでは格段怪しいところは見られない。
トンッ トンッ...... トンッ
指先で机を叩く。苛々している時の薫の癖だ。
「やっぱりメイドを付けないで暮らすなんて許しちゃいけなかったんだ。いやっその前に東京に出るのを許しちゃいけななかったんだ」
思わず吐いて出る薫の本音。
その考えを振り払う様にシャワーを浴びて着替えをした。
揃いのフレグランスを付けてからつくしの部屋をノックする。
つくしは、濡れ髪のままバスローブ姿でベッドにぺたんと座っていた。
「濡れた髪のままじゃ風邪をひくよ」
薫は、バスルームから慌ててドライヤーを持ってきつくしの髪を丁寧に乾かし始める。つくしは何も喋らず無言のまま髪を乾かして貰っている。触れているのにもどかしい程につくしを遠く感じながら薫は、髪を乾かし続ける。
ドライヤーの音だけが部屋の中に響き渡っている。
カチッ
「はい。もう大丈夫だよ」
薫の言葉に答えるようにつくしが、黒髪サラサラと揺らしてから口を開く
「ねぇ、薫」
「うんっ?なに」
「あたし......髪、切ってもいいかな?」
つくしの唐突な申し出に言葉をつまらせた薫の口から、やっと出た言葉は
「っん?.....なんで切るの?」
そんな間の抜けた一言だった。
「短ければ一人で楽に乾かせるでしょ」
何が可笑しいのかクスクスとつくしが笑う。
どう答えを返していいのか解らずに、笑っているつくしを見つめた。


ありがとうございます♪
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