No.071 雪・月・花 by河杜花さま
人を愛することは
何よりも強い想いなのかもしれない
「つくし・・・、また今度な・・・。」
散々苛め抜かれた私の躰は、
貴方につけられた赤い花が咲き乱れる。
さっきまで隣にいた白いシーツは、
まだ貴方のぬくもりが消えていない。
窓の外を見やると雨が雪へと変わり、
日付が変わろうとしていた。
ベッドから降りて、熱いシャワーを浴びる。
強めに出したお湯が頭から足の指先へと
流れ落ちていくのをひとつひとつ確かめながら、
私の全身を撫で廻した大きな手を思い出し、
そっと自らの手で肌を滑らせていく。
さっきまで激しく愛し合っていたからか、
ちょっとの刺激で身悶えてしまうくらいに甘美だ。
柔らかい唇で私の肌を這い、
低い声で私の耳に愛を囁いて、
あの目で私を虜にしてしまう男。
この躰を洗った瞬間、今夜の逢瀬は無かった事になってしまう
危うい関係を、なんで私は望んでしまったのだろうか。
シャワーを顔から浴びて、涙の痕跡を一緒に流した。
嘘と罪と私一人をこの部屋に残して、
貴方は暖かくて幸せな空間を守る為に
必ず自宅へと戻って行っていく。
会いたいよと貴方に伝えたい。
愛しいよと貴方にこの激情を放ちたい。
もし私が自由を求めて外の世界に出たなら、
貴方は私を探してくれるの?
残酷なのは貴方自身だと言えたなら、
私が美しい花であるうちに離してくれるの?
だけど私は知っている。
月が照らす夜にやって来ては「愛している」と私の心を縛り、
シーツに縫い付けてしまうだろうから。
ひたすら募る私の恋は、溜め息となって風に舞う。
今夜、積もる雪が貴方の足跡を消していく。
冷たい雪があたかかな春をいつの日かつれて来る


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