No.072 ダイタンのたがも 司つく
「おーたん、ちってましゅか?」
小っこいのが小鼻をひくつかせ顎先をクイッとしゃくりあげながら言ってくる。
「っん?なにがだ?」
「ダイたんたがも でしゅ」
ダイたん? ダイたんとは? しかも たがも……
ココは下手に返事をしてはイケナイ。小っこいのと付き合う鉄則だ。
うーーん、新しい年になって、俺もまた一つ賢くなったな。シミジミとシミジミと頷く。
「おーたん ちらないんでしゅか?」横目で俺をみながら含み笑いを浮かべてる。「おーたん じょうちきでしゅよ」そんな言葉を添えてくる。
なぁ、じょうちきって言うのは、もしや常識ってやつか? いやっ、知らないも何も__その前にその難解な言葉何とかならねぇか? チラッと様子を窺えば、何ですかとばかりにフンッフンッと鼻息荒くしてやがる。いつも思うんだが、この態度はどこからのDNAだ? 俺? いやいやいや、いや。うん。間違いなくつくしだな。うん。間違いない。
「おーたん しゃっきからブツブツしゅごいでしゅね」眉根を寄せながら言ってくる。
「ワリィっ」
何故か俺が謝っている……ったくなぁ。なんて思うけど__
「ゆるちてあげましゅ」
ニッコリと微笑む。一体、俺の何が悪くて、でもって何を許してもらったのか良くわからないが……ニッコリ微笑んだ顔が可愛くって
「サンキューな」礼を言っていた。
はぁっーー とことん親ばかだよなって__そう思う。でも、まぁなんだ親バカって言うのも捨てたもんじゃないよな。あぁ、最高に幸せなもんだ。
「で、ダイたんたがも__おーたん ちってましゅか?」
「ダイちゃんたがもか?」
「はぁっーー ダイたんたがもでしゅ」
ははっ、やっぱりそのまんまじゃないんだよな。
うーーーん ダイたん、大根か?うーーーんわかんねぇなぁ。こう言う時は先に解る事から対処だ。コレ、ビジネスの鉄則だな。たがもだたがも__この言葉は一度聞いた事がある。うーーん何だったけな? たがも、たがも、たがも
あぁっーー
「卵か?」
「さっきらかそう言ってましゅよ。ダイたんだがもでしゅ」
「あぁ、そうだったな。で、その卵がどうした?」
「ふぅっーーー」大きな溜め息をついたあと、半ギレ状態になりながら「だ、か、らぁー ダ、イ、た、ん!」
小っこいのの声に反応する様につくしがピョコンと顔を出して
「ほら、ほらっ、焼けたよ。早くテーブルについてねぇ〜」
「あちーやき たがもです」
勢い良く駆け出していく。その姿を見つめながらつくしがクスリと笑って
「うん。厚焼き卵ね。大寒の卵で作った厚焼き卵。ツイテル一年になるよぉー」
小っこいのの頭を撫でながら席につかせてる。
「あぁーー大寒ね。はぁっーー」
幾度か口の中で繰り返した。ダイたんが大寒とはね。わっかんえよなぁー。
ところで大寒の卵ってなんだ?つくしの顔を見る。
「昨日ね、桐人君が鈴ちゃんと朱里さんと一緒に持って来てくれたのよ。大寒の日に生まれた卵は金運や健康運を呼び込む縁起物だから是非どうぞって。本当に気が利くわよね」
縁起物?
桐人が持ってきたのがか?
ったくなぁー アイツ、何だかんだ言ってちょいちょいココに来んだよな。面白くねぇよな__なんて事を一瞬思ったが
小っこいのが俺を見上げ
「ダイたんのたがも おいちいでしゅよね」
ニンマリと幸せそうに笑って卵焼きを頬張ったのをみたらどうでも良くなった。
いや、幸せな気分に包まれた。
小っこいのの笑顔は、大寒の卵よりもなによりも俺にツキをつれて来る。
だけど__お願いだ。
もう少しだけでいいから......今年は滑舌良くなろうなっ。
大寒の卵……探してみる?


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