No.076 何度でも・・・恋をする。 by Happyending さま
恋を愛を奏でた分だけ
俺はお前に惹かれ続ける
桜の咲く4月。
道明寺ホールディングス日本支社も入社式を迎えた。
俺は檀上に立ち、新入社員たちを見渡した。
真っ先に俺の目に飛び込んできたのは、初恋の女性の姿。
髪を綺麗に纏め上げ、すっきりとした首筋が全開だ。
色白の肌に、ほんのり赤い頬。
何より、その生命力あふれる瞳。
その姿は、俺を一瞬で魅了した。
うちの花形部署の一つは秘書課だ。
俺の秘書はお飾りじゃない。
その秘書課の新入社員は、今年は一名。
挨拶のため、俺の執務室がノックされた。
期待に胸が膨らむ俺。
扉が静かに開かれて、入って来たのは初恋の女。
「任された仕事は責任をもって全うしますので、どうぞよろしくお願い致します。」
高校生の頃とは、全く違う話し方。
服装だって、安物じゃない。
うちの秘書課に見合うだけのスキルと器量を備えた女性になった。
「あぁ、よろしく。」
そう言った俺に、わずかに微笑んだ彼女。
たったそれだけで、俺は心は一気に奪われた。
今日の昼の会食は、新人秘書と一緒に向かう。
料亭へと向かうリムジンの中、俺の向かい側に彼女が座る。
隣に座ってもいいんだぜ?
そう思いつつも、彼女が正面に座るだけで、胸が高鳴るのは何故なんだ?
スカートから覗く足は、きちんと揃え横へ流す。
資料を見ながら時々瞬きをする、その一瞬までもが俺を虜にして離さない。
料亭では俺の半歩後ろをついてくる。
こいつは俺の後ろを歩くような奴じゃないはずなのに、その姿に苦笑する。
男っつーもんは亭主関白に憧れるというが、俺に関してはそうじゃない。
俺はもうずっと、彼女を追いかけている。
追いかけて、追いかけて、彼女の横顔を覗き見て、その幸せそうな表情に満足する。
彼女は俺の全て。
彼女以外に欲しいものなど何もない。
それぐらいに、俺は彼女に惚れ抜いている。
一緒に出席したレセプションパーティ。
彼女の手が、俺の腕にかかる。
俺が特別に用意させたドレスが、彼女の魅力を引き立たせる。
最高に綺麗だ。
今日は長身の俺に合わせて、10㎝のヒールを履いた彼女。
いつもより、彼女の顔が近くにある。
もっと近くに寄り添いたい。
いつでも彼女の瞳に映っていたい。
彼女の横顔を眺める俺。
その次の瞬間、
彼女の瞳に映った自分自身に、
_____俺の心臓は撃ち抜かれた。
彼女と出会ってからの毎日。
俺は彼女に、何度でも・・・恋をする。
例え17歳で出会わなかったとしても、
俺は必ず彼女に出会い、きっと恋に落ちたはずだ。
一年も経つと、彼女は一人前の秘書に成長した。
彼女は本当に優秀だ。
このまま仕事を続ければ、きっと西田のようなスーパー秘書になるのは間違いない。
優秀な社員は、会社の宝だ。
そんなことは分かってる。
だから、どんなに彼女を独り占めしたくても、それは叶わない。
彼女の幸せが俺の幸せ。
彼女が仕事に生きがいを感じているのであれば、彼女がそれを望むのなら、それを続けさせてやることが、それが俺の生きがいなんだ。
けれど・・
俺の視線はいつも、彼女を捉えて離れない。
いつだって彼女を追って、ずっと片思いだ。
だから、心のどこかで願ってしまうんだ。
なぁ、いつになったら俺だけを見てくれる?
俺だけのもんになってくれる?
***
仕事が終わると、俺はいつも脇目も振らずに邸に帰る。
「ただいま。」
「お帰り。」
出迎えてくれるのは俺の妻。
俺の最愛の妻。
チュッとお決まりのただいまのキス。
そして、お決まりの言葉を告げる。
「なぁ。今日も、お前に惚れ直した。」
17歳の頃から、俺の心を捉えたまま離さない彼女。
仕事も家事も全てをこなす。
俺だけのものであってほしいけど、俺だけの中には納まらない。
結局、そんな彼女をこれ以上ない程に愛している俺。
一緒にベッドルームへ歩きながら、突然彼女が上目遣いで話し出した。
「ねぇ。司。あたし・・仕事辞めようかな。」
急にどうしたって言うんだ?
仕事で何かあったのか?
お前を傷つける奴は、この俺が許さない。
「この1年、頑張ったから。もういい?」
いいって・・何がいいんだ?
「あとは、もう、司の傍にいるだけでいい?」
何言ってんだよ、この女は。
俺はいつだって、俺の隣にお前がいてくれるだけで、それだけでいいのに。
「仕事を辞めて、後悔しないのか?」
俺の傍にいるだけで、お前は本当にそれでいいのか?
それで満足できるのか?
俺はお前に見合うだけの男になっているか?
つくしが俺の手のひらを、自分の腹に当てた。
「赤ちゃんが来てくれた。」
そう言って、俺に微笑んだ。
「これからは、司と赤ちゃんと、三人の時間を大切にしたいな。」
あぁ、やっぱり彼女は最高の女だ。
そしてまた、俺は彼女に惚れ直す。
仕事をしていようが、家庭に入ろうが、
彼女はいつでも輝いている。
そんな彼女に、何度でも恋をして、
結局、俺は、一生彼女に恋い焦がれたままなんだ。
何度でも何度でも恋を繰りかえす。


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