No.082 幸せ 司つく
恋の色は何色だろう?
引き出しからベビーピンクのグロスを取り出して唇に塗る。
幼かった自分を思い出して笑いが零れる。
デートの時、あたしの唇にはこの色のグロスをよく付けていた筈だ。少しでも可愛く、綺麗に見られたくって。
うふふっ 可愛かったなぁー あたし。
アレッ?それなのに……なんで付けなくなったんだっけ?
あっ!! そうだ___
「なぁ、前から一度言おうと思ったんだけど、お前天麩羅食ったあとはちゃんと口拭いたほうがいいぞ」
そう言いながら綺麗なハンカチ出したんだ。綺麗な笑顔と共にね。って、天麩羅はナイよね。天麩羅は
「はぁっーーーったく」 片付けを続ける。
真っ赤なVネックのセーターが目に飛び込んでくる。上げて寄せて谷間作って__大人なあたしを見せつけるって息巻いてお揃いの真っ赤のルージュで極めたんだっけ。
「……牧野、人食ったみたいな口になってんぞ。ホラッ」
そう言いながら高級そうなハンカチを出しながら
「それにそのセーター、胸開き過ぎ。風邪引くからちゃんと上羽織っとけ」
あははっ 今思い返しても飛んだ赤恥だ。
って、赤?__って、赤札?
グッ 何だか突然思い出して怒りが思い出す。ベッドで眠りこけてる道明寺の鼻を思いっきり豚ッ鼻にする。
「…….うぐっ….ぅぅっぐっ」
プッ、豚さん ブー ブーだ。
へへんっ、ザマーミロだ!
ったく、あたしがあんたのせいでどんだけ大変な思いをしたかだってぇーの。
豚ッ鼻を堪能する筈だったのに
「綺麗な顔___」思わず見惚れて指先で鼻梁を撫でてた。
ハッ、別にこの顔に惚れたワケじゃない。決して見惚れたわけじゃない。
でも……造形美として綺麗だよね。
うん。造形美としてね。
それにしても__よく寝てるなぁ。お疲れなんだね。
帰って来てバタンキューだもんね。
唇を指先でなぞり上げる。
「お疲れさま」
ってか、こんな狭いベッドで眠るよりお屋敷のふかふかベッドで眠ればいいのに。
「無理して来なくてもいいよ」
小ちゃく呟いて狭いベッドに潜り込む。狭いからくっ付くしかない。
うん。狭いからね。
***-***-***-***
ブツブツと話す声が聞こえる。その声が妙に心地良い
薄目を開けて覗けば、ピンクの口紅つけてなんだかブツブツ言っている。そういやぁ、アレよくつけてたよあ。妙に艶かしくって__見る度に襲いそうになって__思わずジィッーーと見つめてて、目と目が合っちまって照れて
「なぁ、前から一度言おうと思ったんだけど、お前天麩羅食ったあとはちゃんと口拭いたほうがいいぞ」
なんて事を口走ってたんだよな。何だか微妙な顔してたんだよな。
うんっ? 次は、真っ赤なセーター
あれは、だめだ。あれは。
っつぅか、あのセーター他の所で着てない…よな?
あんな胸元開いたのは絶対に駄目だ。そんじゃなくても牧野は可愛いんだから。あんな胸の開いたのは着る必要はない。
牧野が突如近づいて来たと思ったら、鼻を持ち上げる。
「…….うぐっ….ぅぅっぐっ」
って、何やろうとしてるんだ。ったぁーー 怒ろうとした瞬間
牧野の指が俺の鼻梁に触れる。
唇がなぞり上げられて
「お疲れさま」と声がかかった後、「無理して来なくてもいいよ」なんて小さな声で呟く。
バカっ、来るに決まってるんだろう……手首を掴もうとした瞬間、するりとベッドに潜り込んで来る。
ギュゥッーと抱き締めれば
「起こしちゃった?」
「あぁ」
「ゴメンね」
「ゴメンじゃなくて__だろっ?」
唇を差し出せば___真っ赤な顔で唇を掠めとるようなキスをして
「お誕生日おめでとう」
世界で一番幸せなプレゼントが降ってくる。
ココが、俺の帰る場所


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