No.085 胸をはる あきつく
雨上がりの匂いが嗅ぎたくてベランダに出て月を眺める
ふわりっ あきらの両手があたしの身体を包み込む。あきらの左手に右手を添える。
なんでもないのに幸せで暖かな温もりが身体に心に伝わってくる。
「月、綺麗だね」
「月、綺麗だな」
言葉が重なり二人でクスリと笑う。
「幸せだな」
「幸せだね」
気持ちが重なり愛に包まれる。
「寒くない?」
「うーーーん、ちょっと寒くなってきた…かなっ」
「じゃぁ、そろそろ部屋、入ろう」
あたしは首を振る。
「あきらがギュッとしてくれてれば暖かい」
あきらの手がギュッと、だけど優しくあたしを抱き締めてくれる。あたしは、腕の中に凭れ掛かる。
涙が出そうな程に幸せだ。
「つくし__どうしよう」
「っうん?どうしたの?」
「なんか__涙が出そうだ」
あきらの放つ可愛い言葉にクスクスと笑えば
「はずいよなっ」そう言いながら指先で鼻の頭を擦っている。あたしは大きく大きく頭を左右に振りながらあきらの方を向く。
「あのね__何から何までお揃いでビックリしたの」
「ップッ、マジ?」
「うん。マジ」返事と共にコクンと頷けば__嬉しそうに微笑んでくれる。あきらと居るとなんでもない事が幸せに変わっていく。
二人で月を眺める。幸せが溢れて満天の星になる。あはっ、あたしちょっとした詩人になってる。
「あのね__あたし詩人になってる」
あきらに包まれながらそう呟けば
「俺なんてずっと詩人になってるよ」
二人でもう一度くすりと笑い合う。
「……あのね…」
「っうん?」
「あのね、あのね」
恥ずかしくって中々次の言葉が出て来ないで。あきらの腕に〝の〟の字を書けば
「くすぐったい」そう言いながら抱き締めてくれる。あたしは意を決して
「あのね、この前の返事なんだけど___あたしをあたしをあきらのお嫁さんにして下さい」
一気に言えば__
「本当にいいの?決心ついたの?」
コクンと頷いた次の瞬間___あきらの眦にクシャリと皺が寄る。
「あはっ、つくし__ダメだ__俺、ホントに涙が出そうだ」
今迄に輪をかけて至れり尽くせりで激甘のあきらの出来上がりだった。
*-*-*-*-*-*-*-*-*
雨上がりの月を眺める……あの日のように二人で寄り添いながら月を眺める。
「うんっ?どうした?」
「うふふっ 思い出してたの」
あたしのそんな言葉だけで…
「あの日もこんな風に月が出てたね」
うん。とあたしは頷く。
「幸せだな」
「幸せだね」
言葉が重なりクスリと笑い合う。
「……あのね…」
「っうん?」
「あのね、あきらとあたし…パパとママになります」
早口で言えば__あんぐりと口を開けたあきらが
「俺がパパ?」小ちゃく洩らす。
あきらは、あたしのお腹に跪きキスをして
「寒いから部屋入るよ」
心配性なパパの出来上がりだ。
いやっ、こんなのは序の口で__あははっ激激甘甘のあきらの出来上がりだ。
あたしとあきらの幸せを、
ううん
あたし達家族の幸せをいつでもお月様が見ている。
あたしは胸を張る。あきらを愛してると胸を張る。
あたしは胸を張る。幸せだと胸を張る。
あたしは胸を張る


Reverse count15 Colorful Story 応援してね♪
- 関連記事