baroque 46
背筋を伸ばし
sourire
前を向いて
sourire
笑うんだ
薫が近づき、つくしの腰に添えられたインディゴちゃんの手を撥ね付けるように伸びて来る。
「おぉ、怖っ」
インディゴちゃんは、笑いを隠し切れないかのように下を向いて呟いた。
薫がつくしの隣りに立ち小声で
「髪、切ったんだね。良く似合ってるよ」
優しい声音で囁きながら髪をそぉっと撫でる。
「そうそう、婚約破棄の話しが筒井から来てたみたいだけど、どう言う事かな?」
美しい声で、美しい瞳で、美しい笑顔で聞いて来る。
ゴクリッ つくしの喉がなる。
「くくっ、そんなに強張らないで__お客様が沢山いらっしゃってるんだから……ちゃんと笑わなくっちゃダメだよ」
薫の掌がつくしの頭をポンッポンッと2回優しく叩いてから
「そろそろ、筒井つくしとしてのご挨拶のようだから言っておいで」
まるで何事もなかったように、ニコリと笑う。
つくしの世界がグニャリと歪む。……薫の微笑みが怖くてたまらない。
つくしはドレスをギュッと掴んで、喉の奥から擦れた声を出す。
「……インディゴちゃん__お養母さまの所まで付き合って」
インディゴちゃんは、婉然と薫に微笑んで
「お姫様の所望ですので、変わらせてもらいますね」
薫に変わってつくしをエスコートする。
「あらっ、藍田さんがつくしちゃんのお相手?今日は何か趣向をこらしてるのかしら?」
あちらこちらで囁かれる。
「……つくし、どげんしよう」
インディゴちゃんがボソボソとつくしの耳元で囁く。
つくしがインディゴちゃんの顔を見上げれば、クスクスと愉し気に笑いながら
「アタシ……随分性ワルとよ」
「えっ?」
「いつも澄まし顔の薫の余裕のない顔をみたら。もう面白くて面白くて堪らんとよ」
「インディゴちゃ…ん……?」
口許を長い指で包み込みクスクスと一頻り笑ったあと
「怖がらなくてよかと。あんたは薫に戦いを仕掛けたんだから……ここで怖がってたら、あんたはナーンも変わらんでただの浮気女で終わると。そげんこつアタシが許さんと。シャンと前を向いて笑うんよ」
「浮気おん…な?」
「そーちゃ。浮気女以外の呼び名以外何があると?」
つくしがウルウルとした瞳でインディゴちゃんを見れば
「アタシが、あんたを嫌いになる事はなかけど、辛気くさいのは好かんと」
つくしは、コクンと頷いて少しだけ頬を引き攣らせて笑顔を作った。
「うーん。ギリギリ合格点ってとこね」
インディゴちゃんはそう言うとニッコリと笑ってつくしの背中をトンッと叩いた。
つくしは、顎をあげ前を向き雪乃と栄が待つ中央へと向った。
沢山の視線がつくしを見つめる。


ありがとうございます♪
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