No.088 アッチョンブリケ 類つく
ヨシッ
目を閉じて気合いを入れる。
トントンッ ドアをノックする。
「花沢専務、失礼致します」
カーテンを開けながら
「花沢専務、朝ですよ。朝ですよ。気持ちいい朝ですよ」
声をかける。
当然というか何と言うかそんな言葉で起きるワケがない。
「花沢専務————— 朝ですよぉー 朝ですよぉー」
もう一度優しくさっきより大きな声を掛けるけど、ピクリともしやしない。
仕方がないので次の一手に出る事にした。先ずは
「ジャァーーン」
コレコレ試してみたかったのよね。マジックハンドを取り出してベッドから離れた所から
カシャンッ
カシャンッ
掛け布団を摘みあげる。
うっ、中々もって重い。重い。重い。
「うーーーん……あっ、閃いた!!」
やってみたかったのよねぇー でも流石にどうかな?なんて思ってたんだけど、ホラッ何度も声かけても寝てるんだから仕方ないよね? うん。仕方ない…よ…ねっ。
「ププッ」想像して思わず笑いが零れて来る。失敗しないためにもう少し近づくことにした。
ソロリソロリ近づく。って、起こすのが目的なのに__もしやあたしこの状況楽しんでる?
いえいえ、そんなことはありません。はい。断じてございません。
な、筈なのに__あの美しい顔を〝 アッチョンブリケ ノ)゚ε゚(ヽ 〟に挟むのを想像すると……プププと笑いが止まらない。
ダメダ。あたしツボってる。ヤバッとは思うものの__お腹の底から笑いがこみ上げて来る。
胸に両手を当てて「スゥッーーー、ふぅっーーーー」深呼吸を一つする。
ヨシッ
準備、気合い共にOK!
なんとなく格好付ける為に、左で頷き右で頷き、最後に前を向いて頷いた。
カシャッ カシャッ カシャーンッ
いざ!出陣
「ふぅわぁっ〜 あんた、さっきからブツブツ五月蝿いよ」
気怠気王子が目を覚ました。
クゥッーーーーー なんて、絶妙なタイミングなのぉ。
「おひゃゆおうごじゃいますぅ」
「っん? おはようでしょ?」
小首を傾げながら、魅惑的な美しい瞳であたしを見つめる。
「はっ、はっ、はい。おはようございます」
「うん。おはよう。ねぇ、いま隠したのなに?」
気怠気王子はあたしに聞いて来る。
ヤバッ
タラリッと背中に汗が伝う。
「はいっ」
ニッコリと微笑んで手を差し出してくる。
「あははっ」笑いながらゆっくりとゆっくりと後退りをする。
なのに、なのに、一定の距離が保られたままだ。
なに、コレ怪奇現象? ひゃぁっーーーーちょっとしたホラー?
えっ、もしや〝妖怪ケダルケ?〟いやいやそれより〝妖怪3年寝太郎?〟
プッ
ようやっと後ろ手にドアの取っ手を掴んだ。そう思った瞬間
ドンッ
うわっ、噂の壁ドン!!
いやいやっ あたし、今そこに感心してる場合じゃない。
だって、だって逃げ場ないよね。
うんっ? あぁ、このままドア開けて走ればいいのか
「うふふっ チョロっ」なんて口に出して……た。
あたしの口。バカ、、、ホント、、、バカ、、、
クイッと顎を凭れて
「お仕置き決定ね」
気怠気王子が婉然と微笑んだ。
「あひゃぁ〜〜〜〜っ」
かっきり一時間後……
妙にツヤツヤとご機嫌な花沢専務と、ぐったり疲れきった秘書牧野が花沢邸を出て行った。
あぁーーー
アッチョンブリケ
ノ)゚ε゚(ヽ
何?何?何があった?


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