No.090 シェア あきつく
待ち合わせの場所につけば
大きく大きく手を振りながらつくしが近づいて来る。
「あきらー」嬉しそうに俺の名前を呼びながら。
なぁつくし、知らないだろう?
この瞬間、俺が途方もない幸せに包まれることを。
ポスンッと助手席に座り込み
「今日は車なんだね。なんだかブルジョワ気分」
思わず苦笑いが漏れる……
「だよなっ」
「うん。だよね」
下を向いてクスクス笑いながら
「美作部長は不思議ですね〜。一流企業の御曹司なのに贅沢が似合いません」
「そうか?」
「うん。学生時代が嘘みたいに今の生活が板についてる」
バックミラー越しに隣りのつくしと目が合い微笑み合う。
「ねぇねぇお昼、お刺身定食が食べたいなぁ」
「森戸のか?」
「折角車だしね。うんっ、あぁお海老フライも捨て難いなぁー うーーん」
耳元のピアスを揺らしながら視線を上に向け考えている。
クククッ、そんなに考え込まなくてもってぐらい真剣に考え込んでいる。
「うーーーん。ねぇねぇ、あきらは何にする?」
そう来たか。じゃぁこれでどうだ?
「うんっ、俺は刺身定食」
「うわぁっーー お刺身かぁー」
ちょっぴり残念そうな顔をする。笑いを噛み締めながら
「で、海老フライを別個に注文する。一人じゃ食べ切れないからつくし手伝ってよ」
俺の言葉に首振り人形のようにコクコクッと頷きながら
「喜んでお手伝いします」
「では、任命しよう」
二人揃って笑い合う。なんでもない会話が楽しくて幸せで……
なぁつくし、俺すごく幸せだよ。
心の中で呟けば車窓から海を見ていたつくしが
「あきら__幸せだね」ハニカミながらポツリ言う。
平静さを装いながら心の中は万歳三唱してる俺。
って、形無しだよな。なのに
「あぁ、すげぇ幸せ」
バックミラーで隣りに座るつくしを見つめそんな事いってるんだもんな。
でもって、そんな自分が好きだったりする。
昼飯を食べたあと、森戸の海岸を二人並んで散歩する。
若布がユラユラ揺れていて
「ねぇあきら、アレって持って帰ったら食べれるかな?」
真顔で聞いてくるつくしが面白くてたまらない。
「食べれると思うけど__密猟になるかもしれないぞ」
「それ、まずいよね。ぷっ 美作商事美作あきら部長 若布密猟で逮捕とか」
「って、俺?」
俺の問いにつくしが舌を出してニカッと笑う。
「こいつめっ!」
後ろから抱き締める。
「なぁ一人で飯食べると色んなメニュー食べれないけど、二人で食べたら色んな種類食べれる思わない?」
「うん。さっきみたいにでしょ?」
「そっ。凄いいいと思わない?」
つくしが、コクンコクンと頷く。
「だろ?じゃぁさ、俺と家族にならないか?」
つくしがコクンと頷いた。
一世一代のプロポーズ決まった。
その筈だった。
つくしとシェアする度に
「まさかのプロポーズだったよねぇーー」
そんな枕詞と共に
「あきらのことだからどんだけロマンティックなプロポーズかと思ったら。ププッ」
クスクスクスクス笑い出す。
って......間違いなく一生言われるんだよな。
なぁつくし、俺 凄い幸せだ。
色々食べれるって魅力的だよね?


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