No.094 満を持して 総つく
「だ、だ、ダメーー」
「何でダメだ?」
「ダメだから」
「夫婦は隠し事しちゃいけないって言ったのつくしだぞ?」
「そ、そ、そうだけど__ダメはダメ」
そう言いながら必死に俺から何かを隠そうとしている
「あっ、横田」
「えっ」
つくしは、慌てて佇まいを正してペコリとお辞儀を一つした。
シュッ
その隙につくしの手から小さな袋を奪い取る。
「あぁーーーーーーーーーーっ」
つくしの大きな声に横田が片眉をピクリとあげて
「つくし様__」
静かな声で嗜めてから
「若宗匠も意地の悪い事はお辞め下さいませ」
俺が奪った小さな袋を奪い取り
「こちらは、私が預からせて頂きますので、つくし様はお稽古の方へ。若宗匠は打ち合わせでございます」
「はい。横田さんお願い致します」
つくしはお辞儀をしながら小走りで___
「つくし様、廊下はお静かにですよ」
「あっ、はーい」
「はい。は語尾を」
「の、の、伸ばさないです。はい」
つくしの後ろ姿をみながら横田の肩が愉し気に揺れている。
「ぅふふふっふふっぅふふふっ」
横目で見れば
「ぅんっ、コホンッ……若宗匠もお早くなさって下さいませ」
ツーンと澄ましながら部屋から出て行った。
クククッ 俺の口から笑いが零れる。
普段は口煩い横田も__あれだもんな。他の奴らに至ってはつくしに甘甘だもんな。
嫁に来て3ヶ月、その前から西門に住んでるから特に変化があるワケじゃない。そう___変化があるワケじゃないのだ。あははっ、
おさな妻 名前ばかりの 清き仲
って奴を邁進中だ。
あっ、だがな……流石にまぁそのなんだキスっつぅーのだけは毎日してる。クククッ 唇と唇を合わせるだけの可愛いキスだけどな。
高校を卒業するまでは手を出さない。これがつくしの両親との約束。あと3ヶ月ちょい。ガンバレ……俺だ。
「若宗匠、何を笑ってるんですか?」
「あっ、いやっ__」
「どうせつくし様のことでいらっしゃいますでしょう?」
あははっ、全くもってやってられないよな。右手で頭を掻けば___クスクスと皆が笑い出す。
「そう言えば__横田、さっきの袋はなんだった?」
そう聞いても袋ごと預かってるだけなのでと無視された。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
「横田、つくしはどうした?まだ帰って来てないのか?」
「はぁっ」
いつもの時間に帰って来ないのに誰も何も心配をしない。
イライラしながら俺は待つ。
車の音がする。こんな時間まで何やってるんだと出てみれば
「つくし様ならもうお部屋にお入りですよ」
なことが暫く続いて__
「総ちゃん、明日は早く帰って来るからゴメンね」
なんて可愛くいってくる。
なのに。なのにだ。今日もすげぇ遅い。
玄関の前で仁王立ちして待つ。
そろりそろりと帰って来る。
「つくしっ!!」
「ごめん__総ちゃん」
「今日は、ダメダ許さん! 門限破ったら 廊下雑巾掛け、百往復な」
「えぇぇーーー 総ちゃんの意地悪」
プンスカ怒ってたが___朝早く起きて雑巾掛けを頑張ってる。
「今日は早く帰って来いよ。帰って来なかったら雑巾掛けだからな」
「はぁーーい」
なんて言ってたが、そこから一週間続けて遅くて毎朝毎朝雑巾掛けしてやがる。
流石にもう一度怒ろうと待っていれば
ニカッと笑って
「総ちゃん コレ」
前にみた袋を手渡して来る
「これなんだ?」
「開けてみて」
小さなチョコとシルバーの根付けのプレゼント
「これ?」
「総ちゃんなんでも持ってるから__手作りと思って。それにハジメテのバレンタインディーだったから__でもあたし不器用だから時間掛かっちゃって__心配させてゴメンね」
なんて可愛い事を言いながら俺とお揃いの根付けを見せてくれる俺の可愛いおさな妻。
すげぇ幸せなバレンタインディーだ。
相変わらずのバードキスだがな。
少し触れただけで電流が走るくらい幸せ感じてるんだからな、しゃあねぇよな
ハハハッ
満を持して時を待つ。
それもまたおつなもんだな。
一日千秋で待ちわびる
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