ずっとずっと 60
「あら。 うふっ」
「しぃちゃんったら クスッ」
2人が嬉しそうに、楽しそうに笑っている。
あたしの不安な気持ちが、薫の声を聞き2人の笑顔を見て薄れて行く。
薫が帰ってくる。今日もあたしは一人じゃない。
亜矢さんが優しく、微笑みながら
「ねぇしぃちゃん、しぃちゃんは薫とはどうなっているのかしら?」
突然の問いに、答えに詰まってしまうあたし。
あたしと薫?
アタシタチハナニ?
「しぃちゃんと薫が一緒に暮らし始めて、そろそろ5ヶ月よね?薫はしぃちゃんが大好きよ。」
スキ?
ダレガ?
ダレヲ?
「しぃちゃん、一度真剣に薫の事を考えてあげて欲しいの。」
カンガエル?
カオルノキモチ?
「突然でごめんなさい。しぃちゃんにとってまだ早いのは充分に承知はしているの、でもね私はあなたにも薫にも幸せになって貰いたいの。薫ならあなたを決して裏切らないし、一人にはしない。」
ウラギラナイ?
ヒトリニシナイ?
嫌ぁー 突然思い出してしまった一月前の出来事‥
裏切られたくない。一人は嫌。
捨てられたくない。一人は嫌。
薫を失ったら‥…あたしは一人になるの?
このひと月、いいや道明寺から連絡が途絶えてから‥…ずっと一緒に居てくれたのは薫だと、あたしはこの時初めて思い知る。
薫が居なければあたしは一人なんだ。
誰もあたしを必要としない‥… 嫌、嫌、ソンナノハイヤ
コトワレバ‥…カオルガイナクナル?
アタシハヒトリニナル‥…?
「しぃちゃん、しぃちゃん?」
遠くであたしを呼ぶ声がする。
あぁ、亜矢さんがあたしを呼んでいるだと気が付く。
「あっ、はい。」
「突然にごめんなさい‥…でもね、主人達が動き出す前に、しぃちゃんに一度真剣に考えて欲しいと思って‥…」
大好きな亜矢さんに優しく言われあたしは‥…
「あたし、もう一人は嫌なんです‥…ヒッヒック ヒック」
子供のように泣き出してしまった。
亜矢さんと雪乃さんはあたしを抱きしめてくれた。
優しく優しく抱きしめてくれた。
「しぃちゃん、私達の家族になりなさい。宝珠は、筒井はあなたを決して一人にはさせない。あなたを守る。」
あたしは、コクリと頷いてしまった。
この時‥…あいつへの思いを あたしは手放してしまったんだ。
「ホント?本当にいいの?私達の元に来て下さるの?無理はしていない?」
亜矢さんと雪乃さんが喜んでくれている。
2人の笑顔を見て、あたしは安堵する。もう一人じゃないんだと。
アタシヒトリハイヤ
「あたしを、薫の、宝珠の筒井の家族にして下さい‥…お願いします」
あたしは、もう戻れない
ダケド、ヒトリハイヤナノ
ヨルガコワイノ
泣きつかれたあたしは、亜矢さんの胸に抱かれ、いつしか眠ってしまっていた。
薫が帰ってきたのも気付かずに眠ってしまっていた。
あたしの寝ている間に、するすると話しは進んでいたなんて‥
夢の中のあたしは知らない。
***
待っている筈のつくしが現れない事を不審に思い部屋に入ると、
お婆様の横でスヤスヤ眠るつくしを見つける。
「ただ今戻りました。‥…つくしは眠ってしまったのですか?」
「お帰りなさい。」
「ええ‥…泣きつかれて、今しがた眠ってしまったの」
僕の不在時に何が起きたのかと不安になる‥…
「あのね薫、しぃちゃんがあなたとの婚約を了承してくれたわ。」
突然の言葉に、何を言っているのが理解出来ずに、2人の顔を見上げた。
「お爺様達には先ほど、雪乃ちゃんから報告をして頂いたわ。明日の朝には、全てが決まっている筈よ」
「お婆様‥…それはどういう?」
「私達はしぃちゃんを家族として迎えたいと思った。ただ、それだけよ。薫、あなたにとっては不本意かもしれない、でもこれは私達からの命令だと思って頂戴。逆らう事は許しません。」
「‥…お婆様。」
「薫、返事は?」
「お婆様‥僕の為に‥ありがとうございます。」
「薫、しぃちゃんを必ず幸せにしてあげて頂戴。」
「‥…はい。」
「受けて頂けて良かったわ。しぃちゃんを寝室に連れて行ってあげて頂戴。私達2人は、明日NYに行く事になったから、もう休ませて頂くわ。」
「‥…はい。」
お婆様は、つくしにどんな魔法を使ったのだろうか?
こんなに早くに、つくしを手に入れられるなんて思いもしなかった。
本当につくしが僕の元に来てくれるの?
僕は天にも昇る気持ちになり、同時に恐れ戦く‥…
つくしの存在を確かめるように、優しく優しくキスをする。唇に首筋にキスをする。
「‥う‥うぅん‥」
君は微睡みの中、僕に抱かれる。
「か、か、かおる‥…い‥あ‥あぁ」
君は徐々に、夢から目覚め始め、そして大きな花を咲かせ始める
僕は君の唇にもう一度口づけを落とし、動きを止めた。
「つくし僕と結婚してくれるって本当かい?」
彼女の躯は僕を欲する。彼女の躯は僕を強く求め
「お‥…ね‥がい‥やめ‥あ‥ないで あ‥あ‥あぁー」
「つくし、僕と結婚するのは本当?返事をして」
「か、かおる。お願い」
「違うよ,つくし」
「あぁ‥あ」
「つくし、僕が欲しければ はい って言って」
「は、はい。‥あ‥うっ‥お‥ねがい」
僕は、つくしの花を咲かせる。
何度も何度も、彼女が再び眠ってしまうまで‥…
僕は彼女を手に入れた。
ずるいやり方かもしれない。
だけど僕は何度立ち戻ったとしても、彼女を手に入れる。
世界中の人間に、卑怯者だと罵られようとも‥…僕は彼女を手に入れる。
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