baroque 49
unique
たった一つだけ
unique
望んだもの
unique
それが全てを変える
全ての人を見送ったあと___
雪乃の瞳が薫を忌々し気に見ながら口を開く
「薫は一体どういうつもりでいるのかしら?」
「それはどういったことでしょうか?」
「昨日、筒井を通じて宝珠の方にお話は通させて頂いてるわよね?」
「お婆様が仰ってるのは、つくしとの事でしょうか?__それなら伺いましたよ」
「でしたら、今日の装いはなんなのかしら?」
婉然と微笑みながら
「あぁ、こちらですか?」
カフスを見ながら
「奇遇でしたので、僕も驚きましたよ。ただきちんとした格好をと宝珠の祖父母に言われましたので。そうそう。当初の予定通り大学卒業の年には、僕の元に来て欲しいと思っていますよ」
つくしに振り向き
「とりあえずペンディング状態いいんだよね?」
つくしはいやいやするように首を振り
「__出来れば……婚約は一旦白紙にして欲しい。だから__あたし……筒井の養女になったんだよ」
「つくし、それは君の都合だろ?僕の都合じゃないからね」
優しく優しく微笑んでから
「それに、どんな約束がお婆様とされたかわからないけど、筒井の養女になったら余計に柵は生まれるんだよ。今度は家と家との結びつだね。筒井から宝珠に断ったとなったら一大事になるよ。勿論僕がってワケじゃなくてね。それは得策じゃないだろう?」
「だけど……あたし…」
「つくし…君は、だけどが通用しない世界に自分から飛び込んできたんだよ」
ピシャリと言葉を言い放ったあと、くるりと向きを変え雪乃を見る。
「雪乃お婆様のご尽力に感謝致しますよ。お礼にお婆様のご実家を宝珠の傘下とさせて頂く手筈は整えましたので」
驚愕が雪乃の瞳に浮かぶ。
「……薫…あ、あなた、何を言っているの?」
「お婆様のご実家は喜んでいらっしゃいましたよ。まぁもともと僕は大株主ですしね」
「なぜ、あたなたが?」
「お婆様、僕は宝珠伊織、由那の一粒種ですよ。あの二人が受け継いだものは全て僕が引き継いでますからね。今まで金にも権力にも興味なんてなかったんですけどね__」
雪乃の目には見知らぬ薫が映っている。いや、かつて栄や棗、そして伊織から発せられていた野心が見えている。
「そんなことして、あなたに何のメリットがあるの?」
「メリット? ぁははっ 面白い事を仰る。メリットはお婆様の逃げ道を潰すためですよ__あっ、それは違うかな? 逃げ道など、最初から存在してないっていうことをきちんと理解して貰う為にですよ」
「__どういうことなの?」
雪乃の問いには答えずに
「欲しいものを邪魔する人間は許さないってことですよ」
「邪魔って__薫、私は仮にもあなたの祖母なのよ」
「えぇ、お婆様、よく存じておりますよ」
愉し気に笑ったあと、ピタッと笑いを止めて
「僕にも、宝珠と筒井の血がしっかりと流れているんでしょうね」
外には、魔風が吹き出した。
ありがとうございます♪
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