baroque 51
Dieu
僕は君の
Dieu
恋を司る
Dieu
神になろう
インディゴちゃんの手が薫の手首にそっと添えられる。
「ゴメン……恥ずかしいところ見せちゃったね」
インディゴちゃんは緩やかに首を振りながら
「アタシにとっては、こげん薫見れるんも役得やけどね」
「ワタルさんは、僕の味方?」
捨てられた子犬のような目をしてインディゴちゃんを見てくる
「プッ」
「ワタルさんっ?」
インディゴちゃんは首を振り
「いやっ、ゴメン__あんた達って……ホントに…似なくていい所似るんだろうね」
「えっ?」
「つくしも同じように聞いて、同じ目をしてた」
「そっか……じゃぁ、ワタルさんは、つくしの味方になってあげてよ」
薫がゆっくりと視線を落す。
「そげんことは、聞けんと。アタシはあんた達どっちの味方もせんと。まぁコウモリみたいなもの?」
「コウモリって? イソップ寓話の?」
薫の問いかけに、インディゴちゃんは眦を下げながら
「そう、どっちにもいい顔するコウモリ。最後はどっち付かずになるコウモリとよ」
「フッ__ワタルさんらしい答えだね……ねぇ、ワタルさん」
「っん?」
「つくし__僕の元に帰ってきてくれるかな?」
「ははっ、薫はつくしのことになると本当にからっきしになるとね__そんなに、好きぃ?」
「うん。バカみたいに好きだ」
「どこがぁ、好きぃ?もっと美人も、生まれも育ちも薫に近くて、薫のこと一筋に思ってくれる子なんて掃いて捨てるほどいるとよねー」
「ワタルさんもご存知の通り、僕はモテルから__掃いて捨てるほどかどうかは解らないけど__そういう女性はいるだろうね」
「おぉっ、流石の答えとね」
笑みを浮かべながら
「ははっ、だって僕__世間一般で言ったらハイスペックっていうのだよね?」
インディゴちゃんがうんうんと頷けば
「僕ね、自分の顔が好きになったのは__つくしが僕の顔が好きだからなんだ。声も髪もこの身体も全てそうさ」
「薫……」
「変かな?でも、容姿なんてその程度のものだよ。力だってそうさ。つくしを手に入れる為に必要だから初めて欲したんだ。お婆様達はつくしの気持ちを尊重するっていう方針みたいだけど__お爺様方は何が何でもつくしを僕の伴侶にすると思うよ」
薫は、肘を付き神に祈る様に、合わせた両手の指を組み合わせて俯きながら
「……つくしのどこが好きかの答えになってなかったね。あのね、どこが好きだとかじゃないんだ。つくしが僕の全てなんだ」
顔を上げ、インディゴちゃんを真っ直ぐに見つめる。
「つくししか欲しくないんだ……」
悲痛な叫びにも似た声を出した後一拍置いて
「愚かで滑稽だよね?………否定しなくていいよ。僕もそう思ってるから」
言葉を切り、すっかり冷めたコーヒーを一気に喉に流し込む
「だから__もっと愚かになろうと思ってるんだ」
陽光を浴びた薫が神々しい程の美しさを称えて微笑んだ。


ありがとうございます♪
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