愛を込めて花束を 前編 by 凪子さま

special thanks ビー玉の瞳 凪子さま
violet, indigo, black and blue
flame, yellow, purple, sky blue,
pink, yellow green, ash, brown...
あなたに贈る色は...?
*
『寒っ…//』
寒いのが苦手なあなたは
やっぱり冷たい海風に肩を竦める
それでも
あたしが此処に来たいって言ったら
いつも二つ返事で
―『いいよ?あんたが行きたいとこなら…』
そう言って必ず笑って頷いてくれる
世界一あたしだけに優しい人
もう流石に
かなり甘やかされてるっていう自覚あるけどね...
それでも
今まで肩肘張って生きてきたあたしが
素直にただの一人の女の子で居られるのは
あなたの前でだけなんだから...
だから今日改めて、
きちんと言葉で伝えたいって、
そう思ったんだ///...
*
「ね!?写真撮ろうよ//!」
『……写真?』
「そ//二人でっ//!」
何故かこの時期に
冬の海に行きたいと言った彼女は...
いつも以上に元気でノリノリで
着くなり俺の腕を引っ張って、波打ち際へ...
しかも
彼女から「二人で写真を撮りたい」なんて
いつも照れ屋のあんたにしては、かなりのレア物で…
「ねっ?…いいでしょ//ダメっ??」
『…ん、いいよ』
クスリと余裕ぶって
笑って誤魔化してみたけど
どうしたの//?
急に可愛くねだられたら
流石の俺でもドキドキするし...
だってなんだか、今日のあんた…
妙に素直で、可愛くて...//
そんな風に
いつも以上に牧野に参ってた俺は
彼女がこっそり立ててた計画なんて
ちっとも気付かなかった
*
彼がボーッとしてる間に、
あたしは素早く通行人のお姉さんを掴まえて
写真を頼む
スマホで自撮りも良いけどさ?
たまにはカメラで
だって今日の1枚は、
ちょっとだけ特別なモノにしたいから...
『…あんた、随分用意良いね』
うっ//…
流石に怪しんでるけど
ま、気にしない気にしないっ//♪
―「…じゃ、撮りますよー//?」
「はいっ!お願いしまーす//!」
ハイ、チーズ!…の瞬間に
ほんのちょっとの勇気を持って...//
あたしから、ギュッと
『彼女』らしく//あなたの腕に絡み付く
フフッ//…どうだっ//♪
あたしだって、やる時はやるんだからっ//!
チラリとその長い腕の主を見れば
その綺麗な顔が、ちょっと吃驚したように...
あれ?少し耳まで…赤いかも…
うわっ///♪レアですなぁ///♪
うんうん//♪これはレア物っ///♪
って、嬉しくなってつい調子に乗ってたら…
『…牧野、顔赤い...ククッ//』
なっ///!…しまった///...
これはミイラ取りが...
ミイラになりそうな予感///??
いやっ//今日は負けないからね!?
いつもはあなたに
ドキドキさせられっぱなしのあたしだけど
今日はとっておきの切り札、あるんだから...///!
ってふと我に返ると
お互いくっつき合って、見つめあってる状態で///…
…ハッ//!
これじゃ完璧なバカップルじゃん…///
あたしは慌てて
彼の笑顔に惚けているお姉さんからカメラを貰い
お礼を言って、さよならをした///…
*
吃驚した
いつもは照れて、外で自分から腕を絡めるなんてあり得ないのに...
今日のあんた、なんか積極的だよね//
いつも俺の想像の斜め上で
突飛な事をたくさん考えつく彼女だけど
今日はどうやら、かなり機嫌が良いみたい...//
そのまま二人
穏やかな波打ち際を歩いて
ふと周りの景色を見渡せば...
いつか見たことのある、その景色に...
「…なんだか… 懐かしいね//…」
振り向いた彼女の漆黒の瞳
冬の太陽が映り込んで、キラキラ光を反射する...
不意に訪れる
デジャブみたいな浮遊感...
ねぇ
今のあんたにはこの景色...
一体どんな風に映ってるの?
やっぱりまだ
アイツの事、思い出すのかな...
遠くの海を見ながら
海風に乱れた髪を片手で押さえる彼女は
ドキリとする程
妙に大人っぽく見えた
*
今日ここに、二人で来たかったのは
あの頃の自分に、サヨナラするため...
あの日
アイツとの別れに
どうしようもなく涙が止まらなくて
もう立ってられないって思って...
そんな時、いつも側にいてくれたのは...
『…何?』
「ううん//…何でもないっ//…」
振り向けばやっぱり、あの時と同じように
優しく見守ってくれる、ビー玉の瞳...
でもね?…もう大丈夫、心配しないで...///
あたしはもう、昔のあたしとは違うんだ...//
だって、ここに来て思い出すのは
ほら…もう、あなたとの事ばかり...
「…あの時さ、類があたしに//言ってくれたよね…」
覚えてるかな…
あたしにとって、あなたの言葉は
今もこの胸にしっかりと残ってるから...
その約束を果たしに...ここに来たんだよ///…?
*
…?
俺、なんて言ったっけ...
彼女の言わんとする所、咄嗟に浮かばなくて
首を捻って考えてみる
と、目の前には不満げな彼女の顔...
「もうっ!忘れちゃったの!?…
あたしが凹んでて…「この海まで悲しく見える」って言ったら、あんたが言ってくれたんじゃない…///」
急にプイッと膨れてしまった彼女の横顔に
慌てて頭をフル回転させる
そう言えば...
鮮やかに甦るのは、涙目に濡れた
あの日の漆黒の瞳...
あぁ...
そうか
―『牧野に誰か本当に好きな人が出来たら、また海を見に来たらいいんじゃない?』
あの頃の俺
兎に角あんたには絶対に、
幸せで笑ってて欲しかったから...
たとえその相手が、俺じゃなくても...って...
その想いだけで
実はかなり必死だった自分...//
一瞬だけ
そんな切ない過去に捕らわれた俺だけど...
「…ほらっ//この時だよ…///」
突然
彼女から向けられたスマホの画面...
その中には
泣いた後のとびきりの笑顔の牧野と
その後ろで
控えめに笑って、あんたの幸せを願う俺がいて...
―『まきの、ほら?…笑って?』
彼女のスマホを奪い取って、
泣き顔のあんたを強引に少し抱き寄せ
シャッターを切った事...
たとえ"友達"同士のじゃれあいでも、
真っ赤に照れて、ムキになって怒らせてでも...
ほんの少しだけでも、笑ってて欲しくて...
―「…ちょっ//!酷っ//!目、腫れてんのに~//!?」
慌てて俺の手からスマホを奪い取ったあんたから
やっと笑顔が出たことに、少しばかりホッとして
それだけで、幸せで...
撮った写真なんて、確かめもしなかったけど...
「これね…
ずっとあたしの『宝物』だったんだ///…」
『…え...?』
こんな...
片想い全開の頃の自分の顔、突き付けられて…///
なんでこんな写真が、宝物…///?
思わずぶっきらぼうに
『プッ//...だって、まだ付き合ってもなかったし…
あんたまだ、俺の事好きじゃなかったじゃん…』
言ってから、ちょっと拗ねたみたいな自分の言葉を
格好悪いって思ったけど...
「…それは///...そうかも知れないけどさ…
でもこの写真と、この時のあんたの言葉が…
いつもあたしの背中を押してくれたから…
...だからやっぱりあたしの『宝物』なんだよ…///」
はにかんで笑う彼女の笑顔がとても綺麗で
思わずまた
ドキリとさせられる
ドキリとさせられたあとは?どうなる?続きは12時更新です。

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