イノセント 61 司つく
サンスクリットの提携話が上手くまとまり司は、珍しくにこやかに笑みを浮かべる。サンスクリットの女社長ホンファはアジア圏で大規模のゼネコン会社を統括しているWongグループの孫娘だ。この提携が決まれば、Wongグループに近づくための足がかりになる。
Wongグループとの事は、勿論道明寺HDにとっても有益なものには間違いないのだが、それよりも何よりもWongグループとの仕事が決まれば、つくしが魅力を感じる仕事を与える事が出来る。
サンスクリットの提携話を急いたのは、生涯、つくしを自分の側に置くための楔だ。自分のもとから消えてしまわぬように、つくしの望むものを与えたい。そんな真の心から出たものだった。
慌てふためいた大迫が司の名を呼ぶ
「社長、牧野さんが牧野さんが……」
「牧野がどうした?」
大迫の話しに、司の顔色が見る見る間に青ざめていく。擦れた声で
「どう言う事だ__誰かに連れ去られのか?」
「いえ、それが……防犯カメラを確認しました所、牧野さんが一人でタクシーに乗る姿が確認されておりまして」
ドンッ 司の拳が壁を叩く。
「SP達は何をやっていたんだ。早く、迎えに行け」
「それが___いま居る筈の場所を確認したんですが……牧野さんの行方は解らず終いでして___」
「GPSはどうした?」
「スマホは部屋に置かれておりまして__身に付けていた装飾品の類いは盗品を主に扱う店から発見されております」
後ろで2人の話しを聞いていたホンファが
「盗品売り場の店主は誰が売りに来たかは話したの?」
そう聞けば、大迫が首を振り
「それが__ギャングの息がかかっている盗品売り場のようでして」
「グダグダ言ってないで、何とか吐かせろ」
司が言えば
「あまり大々的にやりますと__ホンファ社長との密会が世間にばれてしまいます。それに……色々と問題がございまして」
困った様に述べて来る。
「御託をならべるな。先ずは、牧野の居場所だ。他のものは俺が全部カタをつける」
ホンファは目を白黒させながら、目の前の男の慌てぶりを眺めてから
「どこの盗品売り場?」
大迫に向って聞いてから一本の電話を掛けた。
メモしたものを司に渡し
「何か困ったことがあったら先ずは、ホンファの名前を出して頂戴。この界隈なら力になれるから。それと、いなくなった子の写真と背格好を教えて頂戴。すぐに部下に探させるわ」
礼を述べる大迫に美しい笑顔で微笑み
「ドウミョウジにそんな慌てた姿をさせる子に私もあってみたいから全然かまわないわ」
ホンファの名を出す事によって、途絶えてしまった手掛かりを探す事が出来たのは、それから30分後だった。その間につくしの一日の行動が追われた。
つくしがいない。自らの意思なのか、そうでないのか__そんなことは関係ない。ココにつくしがいない。その事が司の心を乱している。
怒り?
驚き?
哀しみ?
いや___
恐怖が司の心を襲うのだ。
つくしが己の意思で逃げたなら掴まえるだけだ。
誰かに奪われたのなら取り返すだけだ。
でも___
もしも、もしも、
つくしを永遠に失う事になってしまったら?
あるのは、暗闇だけだ……
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