baroque 55
silence
恋には
silence
沈黙が必要だと
silence
知っている
堕ちていく。
堕ちていく。
つくしは自分のよがる声を意識のどこか遠いところで聞きながら、快楽に包まれ意識を手放す。
耳朶をペロリッと舐め上げられた。
戦きと快楽と__交互に襲い、快楽が勝って意識を手放した。
どれくらいの時間、意識を手放していたのか……目覚めれば淫らに乱れた寝姿の自分がいた。
ベッドに腰掛け襟を正してから、疲れきった身体で起き上がりリビングに戻った。
「ふぅっーーー」
大きな大きな溜め息を一つ吐いてから、頭を振り髪を手櫛で整える。
テーブルの上に置かれたスマホが点滅している。タップをすれば総二郎からのLINEで
おーい どうした?
用事でも出来たか?
それとも具合でも悪いか?大丈夫か?
つくしは、LINEの文字を眺めながら何て返信していいのかと思案にくれる。
書いては消し、書いては消しを何度も繰り返してから、最終的にはスマホの電源を切ってから、緩くなった帯を解き、着物をスルスルと脱ぎ襦袢姿になった。その瞬間__太腿に冷たいものが流れ出す。
「ははっ……」
白い歯を零しながら……泣き笑いの表情になって笑いを零した。
「薫に、全部ばれてるってことだよね?」
つくしの口から、おかしくもないのに笑いが零れる。
襦袢を脱ぎゴミ袋に和装用の下着と共に打ち捨てて、バスルームに向った。
つくしは自分の膣内を指で掻き出しながら洗った。全てを無かったことにするかのように__執拗に執拗に。
シャワーを浴び終えたつくしは、素肌にバスローブを羽織り総二郎に電話した。
R……ワンコールで総二郎が電話に出た。
『どうした?なにかあったのか?』
慌てた声が電話の向こうから聞こえる。
『ごめんね__なんだか頭が痛くて』
『大丈夫か?』
総二郎の優しい声に……
『あっ、うん。薬飲んだから……大丈夫だよ』
『……じゃぁ、今日は無理だよな…』
『……うんっ。ごめん…ね。待たせてダメなんて』
『あっ、いやっ、つくしの顔見れたし__満足だよ』
『総……ごめんね』
『バーカ、こんなことぐらいでそんな謝んなくていいよ』
こんなことぐらい__総二郎に言われつくしの心が痛む。
『なぁ、具合が良くなったらどっか行こうぜ。なっ。だから無理しないで寝てな』
『うん。ありがとう』
今にも泣き出しそうなつくしの声に総二郎は不安を感じながら態と明るい声を出す。
総二郎からしたらつくしは謎に包まれ過ぎて、聞きたい事も問いつめたい事も山ほどある。
でも、でも、でも……つくしを本気で愛し始めた総二郎は言葉を噤む。
沈黙は金だと言う様に。
言葉を噤み、優しく愛を語る。


ありがとうございます♪
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