baroque 57
君とともに
avec_toi
時を過ごしたいと
avec_toi
望んだ夜だった
総二郎は、ベッドに微睡むつくしを見つめ、項に指を這わせる
「ったくなぁっ……やってられないよな」
初心だと思っていたつくしに、心のみならず身体さえも翻弄され溺れている。相手の全てを知りたいなど思ったことなど無かったのに__つくしの全てを知りたくて堪らない。
「筒井つくしって……なんなんだよ」
筒井財閥……世界的大企業ジュエルHD。筒井の会長は表舞台に己があまり出ない事で有名な人物だ。総二郎とて幾度か耳にしたことがある財閥だ。
「はぁっーーー、それにコレ」
もう一度、赤い花びらにそっと触れながら
「やっぱ、男が居るってことだろう?」
小さく呟く。
「コイツ、俺にバレてるってことに、気が付いてないんだよな……でも、コイツの男は気が付いてるってワケ…だよな?」
女など日替わりでよりどりみどりの筈だった自分が、ややもすれば、あたふたともがき愛に溺れている。
「はぁっーー」溜め息を吐く。
つくしの事はゼミで何度か見かけて知っていたが自分とは縁のない女だと思っていた。
京での出会いは偶然だった。
でも、零れる笑顔をまるで暖かな春の陽射しのように感じた瞬間__この女に惚れるかもしれないと予感めいたものを感じていたのかもしれない。
一緒に居れば居るほど暖かな気持ちに包まれ惹かれた。その度に心にブレーキーをかけた。
西門を継ぐと決めた時から自分の伴侶は家同士の繋がりで決まると覚悟していたから。本気の恋はしない。そう決めていた。
なのに、
「ぅぅうん……」
寝息さえ愛おしく感じる程に本気の恋に落ちている。
つくしの鼻先に唇にキスを落す。
「……うんっ?……総、どう…したの?」
寝ぼけ眼で起き上がりながらつくしが聞けば
「可愛いなぁ〜って見惚れてた」
「プッ、何それ」
「何それじゃねぇよ。マジ可愛いっちゃ」
「あぁーーもぉ真似っこ?」
つくしが唇を尖らせれば総二郎は、目を細めながらつくしを抱き寄せて
「つくし__マジ可愛い」
愛おし気に囁いて
ギュッと
ギュッと抱き締める。
「くすぐったいっちゃ」
クスクス笑いながら総二郎の胸に埋まる。
青白い月がつくしを総二郎を照らす。
二人はもう一度見つめ合い口づけを交わす。
後ろめたさと背徳感がつくしの身体に火を灯す。
「総……好き」
つくしの言葉を合図に二人はもう一度指を絡め合い愛を確かめる。
総二郎は、身も心もつくしに溺れていく。


ありがとうございます♪
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