ずっとずっと 64
遠くで僕を呼ぶ声がして、目を覚ます。
「薫、おはよう。」
聖女が僕に微笑む。
「薫、どうした?ぼぉっとしてるよ」
「‥つくしに見惚れてた。」
真っ赤になったかと思ったら‥…
閃いた顔をして、笑いながら僕のおでこを弾く。
「うふっ、見惚れたバツだよぉ〜」
ベットを整えながら、身支度をする僕を待つ君。
そぉーっと、近づいて行って、つくしを力一杯抱きしめる。
「ぎゃっ もぉービックリさせない」
ククッ 驚きが可笑しくて、笑ってしまった僕に怒る君。
僕の求めていた幸せな一日が始まる。
邸の庭を散歩する。
「うぅ~寒いっ」
鼻の頭を赤くして、手に息を吹きかけてる姿が愛おしい。
「ほらっ、貸して」
つくしの手をとり、僕のポッケに入れる。
「薫、あったかいね。」
僕の心に灯がともる。
「しぃちゃん、しぃちゃーん」
つくしを呼ぶ四つの声がする。
「お帰りなさーい。」
元気よく駆け出すつくし。
「薫、早く早く〜」
「さては、お土産目当てだな?」
「あはっ、バレた?」
クスクス笑い合いながら、邸の中に入る僕等。
僕等の笑顔をみて、嬉しそうに笑うお爺様達。邸の中の皆が微笑む。
***
「うわぁー美味しぃー うーん満足ぅ」
「あら本当、美味しい。ねぇ亜矢ちゃん」
「うーん、美味しいわぁ」
儂の買ってきた土産を嬉しそうに食べるしぃちゃんに、一瞬由那を見る。
儂の生き甲斐だった由那。あの子が生まれた日、儂は儂の人生全てを懸けて、由那を守って行こうと決めた。由那の為に、会社を大きくしてきた。TSUTSUIセミナーは、儂が死んだとしても、由那が安泰に暮らせるようにと立ち上げた。
ジュエルの繁栄は偏に由那の為にあり、由那と共にジュエルを大きくしてきた。
儂らには残念な事に由那以外の子供は持てんかった。 だが由那がいてくれれば、それだけで満足じゃった。由那は天性の明るさと利発さをもつ娘じゃった。あの子がいれば、場が和むのじゃ。誰しもが由那を好きになるそんな娘じゃった。
「つぅ爺も一緒に食べましょう~」
くすりと笑いながら、しぃちゃんが儂に言う。由那と同じ笑顔を儂に向けながら‥…
「そうじゃな。噂のカップケーキとやら食べてみんとな。」
「私からもしぃちゃんにプレゼントがあるんだけど貰ってくれるかい?」
棗がそう言いながら、手渡したのは、ブルーダイヤを真ん中に据えた、リボンロゼット型のネックレス。
薫にネックレスを手渡し、しぃちゃんの首元に付けさせる。
「うん。よく似合ってる。悠斗君の婚約パーティに、ぜひつけて行って欲しいのだがいいかな?」
宝珠家に伝わる、ブルーダイヤとレッドダイヤ。
初お披露目にブルーダイヤをつける。亜矢さんも、由那もそうじゃった。懐かしい思いが蘇る。未来を見据え夢を語り合った友の幸せを祈った若き日の思い出。 娘の胸に輝くダイヤに複雑な気持ちを抱いたあの日。懐かしい幸せの記憶‥‥
「まっこと、よぉ似合っておる。なぁ」
儂等の元に、あの幸せの日々がまたやってくる。
薫としぃちゃんが作る新しい未来‥…
「しぃちゃんや、ホンにありがとう‥…」
そう言いながら、つぅ爺が泣いている。大きな身体を丸くして泣いている。
棗さんが
「鬼の目にも涙。いや、鬼のかく乱か?」
そう言って、友の肩を叩き皆で笑い合う。
アタシハヒトリジャナイ。
宝珠も筒井もあたしを必要としてくれる。
あたしを欲しいと言ってくれる。
電話一本で理由も言わずに、捨てられたあたしを‥…
溝鼠と蔑まれたあたしを、この人達は必要としてくれる。
アタシハコノヒトタチカラ、モウハナレラレナイ
夜の帳(とばり)が下りてくる‥…
僕等は、いや僕は、つくしの壊れた心を利用した。
彼女の心が癒えるまで待てば良かったのか?
いや、何度舞戻ろうとも僕は彼女を手に入れる事を選ぶだろう。
だって、全ての幸せは彼女が持っているんだから。
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