baroque 58
a lame d'air
君を得るために
a lame d'air
僕は
a lame d'air
肉を切らせて骨を断つ
パチリッ
朝焼けの中、つくしは目を覚ます。
初めて迎える2人の朝。
つくしは、漆黒の髪を指先で優しく撫でながら昨晩の出来事を思い出す。
薫と別れると決めたのに薫に抱かれ身悶えた自分。他の男の燻りを残したまま再び総二郎に抱かれ___幾度も身悶えた自分の姿を思い浮かべる。どれだけ自分は節操がないのだろうかと。
朝陽は燦々と輝きを増し始めているのと反比例するかのようにつくしの心は様々な疾しさで埋め尽くされる。
「ハァッ……」
小さく溜め息を吐く。
つくしの柔らかな指先を感じながら幸せに酔い痴れながら微睡んでいた総二郎は、つくしの小さく吐かれた溜め息を聞いた瞬間…..身が千切られそうな思いに駆られた。
「……つくし」
総二郎が名前を呼びながらつくしを抱き締める。
「あっ、ゴメン。起こしちゃった?」
少し慌てた様子のつくしにありありと男の陰を感じ、メラメラと嫉妬の炎が燃え上がる。
千の刃に心を切りつけられる。
痛くて
苦しくて、
哀しい
それなのに……それなのに
愛おしい。
その日の昼下がり___
薫から昨日の話しを聞いていたインディゴちゃんがお団子を食べながら食って掛かっている。
「薫はなんば考えとるん?全くもって意味がわからんと」
「ははっ、ワタルさん__食べるか怒るかどっちかにしてよ」
インディゴちゃんを見つめて美しく微笑む。
「はぁーーっ、あんたのその笑顔__なんば考えとるかホントにわからんと」
「そう?」
頬杖をつきながら
「案外、単純なんだけどね」
薫は、無造作に髪をかき上げながら外を見る。淡く柔らかな光が薫の髪を優しく照らしている。
見るもの全てのものがうっとりするような光景を映し出している。
「うーーん、あんたホントにいい男とねぇー なんでつくしにだけにそげん拘るとね」
「なんでだろうね__自分でも不思議だよ。でも理屈じゃないんだ。あっ、つくしの好きな所あげろって言うなら幾つでも上げれるんだけどね」
机の上の写真立てを手で弾きながらそう答える。
「解ってるのは__僕はつくし以外はいらないってことくらいかな……」
薫はゆっくりと微笑む。その微笑みは艶かしいほどに美しい。
インディゴちゃんが思わず見蕩れて惚けるほどに。
沈黙を破る様に
「ねぇ、ワタルさん__同じ土俵ならつくしはどっちを選ぶと思う?」
「同じ土俵?」
「うん。同じ土俵」
柔らかく柔らかく薫が笑う。


ありがとうございます♪
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