イノセント 67 司つく
司は、つくしの記憶を失ってから避け続けていた親友達に連絡を取った。
「牧野に、俺に……会いにきてくれないかな?」
司とつくしの元を訪れた類の第一声は
「へぇっーーー やっぱり記憶が無くても惹かれちゃうんだ。やっぱり司だね」
類に総二郎、あきらが語ってくれた17の道明寺司は、純粋で好きだけが詰め込まれいた。
「俺__すげぇ幸せだな」
力づくで手に入れてしまったつくしを思い司の瞳から涙が零れ後悔が押し寄せる。
「牧野もさぁー、やっぱり司なんだね」
「違うっ__俺は、俺は__」
「新堂が言ってたじゃん。司とホンファ社長が見合いだと思ってホテルから抜け出したって……もともと思い切りがいいけど、あの高さから降りるなんて、ククッ流石牧野だね」
類が微笑み言葉を続ける。
「それに、牧野が俺等の前から何で消えたか司は知ってる?」
司はゆっくりと首を振る。
「牧野はさ、俺等を憎みたくなかったんだって__」
「……憎…む?……なんでお前等を?」
「司さ、牧野の事だけすっかり忘れてるのに俺等の事はおぼえてただろ? それが憎かったんだって__蝉の話ししてた時にさぁ、ポロッと言葉が出ちゃったみたいでさ」
クスリと笑う。
「慌てて話し逸らしてたからさぁ、聞こえなかったふりしたけどね。その後__司、すげぇ勢いで牧野を探してたから記憶が戻ろうが戻るまいが関係ないのかなぁ~って思ったんだよね」
「…………」
「早く目が覚めるといいね__機能的に問題は無いんだよね?だからココに移ったんだもんね」
「あぁ、足以外はなんの問題もない」
「……じゃぁ、すぐだよ。すぐ」
類は、目を瞑り司の肩を叩く。
その夜は、つくしと司の恋物語を皆が笑って語ってくれた。
つくしの閉じた瞳がピクンピクンと動く。
司の指先が優しく優しくつくしに触れる。
指先が愛を奏でている。
愛してる。
愛してる。
愛してると。
皆が帰るの見送った後___司はいつものようにつくしの身体の清拭をする。
つくしの身体を抱きかかえ
「どうだ気持ちいいだろう? 今日はローズマリーの香りにしてみたぞ……アロマってぇのか?色々あるのな。お前のお陰で色々知れるな」
開け放たれた窓から爽やかな風が吹く。シフォンのカーテンが大きくふわりと揺れる。
「なぁ、いい加減目覚ませよ。俺をこっぴどく罵っていいからよぉ」
つくしの横で司は、毎晩自分とつくしの過去に寄り添いながら、時に笑い、時に切なく涙する。
「なぁ、お前俺に啖呵切ったんだろ?すげぇよな」
「お前の初恋__類だってホントかよ?ったく、俺のがいい男だったろうよ」
司は、毎晩つくしに愛を囁く。
その度に、無理矢理身体を奪った自分を悔やむ__何故執着したのかをもっとしっかりと考えれば良かったと。
「辛い思いさせて、本当にゴメンな___でも俺、お前を離せないんだけどな」
つくしを自分の腕の中に愛おしそうに抱き締めながら語りかける。
「散歩行くか?」
眠るつくしを車椅子に乗せ庭に出る。
立ち止まり空を見上げて
「星が綺麗だな……なんて言ったらお前笑うんだろうな」
目を開けて、もう一度笑顔を見せて欲しいと司は願いながらつくしに話しかける。
「そうだ、コレ」
土星のネックレスをつくしの首に付ける。
「よく似合う__まぁ、お前が付けてるとなんでも可愛いんだけどな」
司の記憶は戻ってはいないが、避けていた自分と向き合う事によって__枯渇した心は潤いを取り戻し、ポッカリ空いていた穴には、綺麗な花が咲いている。
「なぁ、目が覚めたら一緒に土星の輪っか見ような」
つくしの顔を覗き込んでから、もう一度空を見上げる。
星が綺麗に瞬いている。
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