baroque 59
愛してる愛してる
Je t'aime.
君を失うのを
Je t'aime.
恐怖するほど
優しい微笑みなのに関わらず、それは狂気を感じさせる微笑みで___インディゴちゃんの背中にゾクリとした何かが走り抜けて行く。
ゴクリッ
潤した筈の喉がカラカラに渇く感じがして、唾を呑み込んだ。
薫の顔を真っ直ぐに見据え
「もしよ、もし……同じ土俵に立って負けたらどげんすると?」
首をゆっくりと傾げながら
「つくしが僕以外を選ぶってこと?」
インディゴちゃんがコクンと頷けば、全てを包み込むような笑顔を浮かべたあとクスクスと笑って
「選ばせないよ」
当たり前だとばかりに、そう言葉を返してくる。
「でも、相手を__」
「だから、選ばせないって」
インディゴちゃんの言葉を遮り、もう一度ピシャリと返事をする。
「だって、コレは結末が決まってる戯れだから」
「結末が決ま__ってる?」
「つくしの未来は、僕と以外は存在しない」
「だったら何で?こんな馬鹿げた事をしとると?」
「何でだろう__ね……自分でも良く解らなくなるときがあるかな」
薫は自分の手をグッと握りしめながら
「でもね、つくしは凄く魅力的なんだ。離したくないって思うほどにね__それにね、ふっ」
さも可笑しそうに笑う。
「つくしはね、驚くほどに淫らなんだよ」
「み、だら__つくしが?」
薫の口から発せられた言葉に、インディゴちゃんは眉根を寄せて聞き返す。
「そう、僕が一から教え込んだ身体だからね。総二郎君だっけ?__彼は、つくしに間違いなく入れあげるよ。入れあげて入れあげて__嫉妬で身悶える筈だよ」
ゴクリッ インディゴちゃんの喉が鳴る。
「薫?」
「僕がいい例さ。つくしを抱けば抱くほど__手放せなくなってるんだからね」
固く握り締めていた手を口許にあてがい手の甲を噛みながら薄らと笑い
「嫉妬で身悶える彼に雁字搦めにされればいいと思ってるんだ。そしたら__どこに行っても同じなんだってわかるよね?___そしたら彼女は僕を選ぶ筈だ」
「やっぱり___そんな事は間違えとると」
「間違えてる? ハハッ、そんなことは百も承知だよ。でも、だったら……僕はどうすれば正解だった? 逃げ出そうともがくつくしを自由にせず監禁でもすれば良かったってこと?」
「それは違う。愛するってこととは違うと」
「ねぇ、ワタルさん、彼女を自由にしてあげるのが本当は愛だとでもいいたいの?
そんなの詭弁だ__愛は、本来、執着って言う意味だからね。
人を愛せないワタルさんには理解出来ない思いかな」
「薫___」
「…………ごめん、言い過ぎた」
柔らかな陽射しが高い鼻梁にあたり陰を作っている。
「だけど__つくしを失いたくないんだ。いや、失えないんだ」
今にも泣き出しそうな擦れた声を出す。


ありがとうございます♪
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