君へと続く物語 第1話 written by asuhana

クルリと椅子を回しながら真っ青な空を眺め
「なぁー、西田。こうなんだビシッと決まるホワイトディーのお返しなんてもの知らねぇか?」
上司の言葉に西田は待ってましたとばかりに
「それならコチラはいかがでしょうか?」
資料を司に手渡す。
「ほぉーー悪くねぇな」
司の言葉に西田は眉根を寄せながら
「えぇ、ただ….一つ問題がございまして」
司がゆっくりと西田に振り向きながら問題とはなんだと聞けば
「先日、司様が行くのは嫌だとおっしゃられた例の案件が上手くいきません事には……ココ、ココの部分がどうも上手くいかないかと」
残念そうに眉を顰めながらそっと、もう一つの資料を手元に差し出した。
司の目が真剣に資料の上の文字を追う。
「……いついけばいい?」
西田の片頬が満足げに上がり
「はい。直ぐにご用意は出来ておりますので」
愛するつくしに充分な連絡もとれぬまま…….司は異国の地に旅立っていった。
*-*-*-*-*-*-
チッ、チッ、チッ、何度も何度も舌打ちをしてガタガタと脚を揺らしている男が一人。
「ったぁっ、なんだこの飛行機。ちゃんと空飛んでんのか?」
「司様、少し落ち着いて下さいませ」
ドンッ
激しい勢いで壁ドンならぬ床をドンッと踏みならす。
「落ち着けって、チッ 元はと言えばお前のせいだろうが」
「……そのお陰でこの後は三日程のんびりして頂けますし、お目当てのものも手に入られたかと」
「まぁそれはそうだが……だがよ、こんなに遅くなって間に合うのか?」
「大丈夫でございますよ」
「つぅか、牧野の居場所はちゃんと把握してあるんだろうな?」
「朝から同じ台詞が18回目でございますよ……しつこい男は大概嫌われるかと」
「うんっ?しつこい男は嫌われる?」
司の瞳が一瞬、思案実に揺れたあと、窓の外を見る。
白い白い雲が眼下に見える。
「ったくなぁーー あいつ、何が不満なんだろうなぁ」
俺様男がポツリと呟く。
そうそう、俺様男の司君___
今度こそは、今度こそはプロポーズを成功させたいと思っているのだ。
Love Tsukoshi 空に描いて早10年
4年で結婚する筈だったのに……プラス6年だ6年。
最初の数年は、納得した。
大学をきちんと卒業したい。弁護士になりたい。
そりゃぁ、あいつの夢だったからな。俺も応援したさ。
「受かったらね。うん。考える。また今度!」
すげぇ大きな笑顔で返されて__それ以上言えなくなった。
あいつ、ズルイんだよなぁーー すげぇ可愛い顔で笑うんだよな。
普通よ、断る時って少しぐらい悪いとか何とか思うもんじゃないのか?
目出たく弁護士になったらなったらで
「先ずは、きちんとお勤めしなくっちゃ迷惑かけちゃうでしょ?」
真面目な顔で返された後、ニッコリ笑って
「好きなのは、道明寺だけだからね」
チュッとキスされて躱された。
その時のあいつもメッチャ可愛かったんだよな〜
ってか、あいつ断る時いつもめちゃ可愛いんだよな。
「ハァッーーーーー」
「コホンッコホンッ、僭越ながら溜め息を一つ吐くと幸せがお逃げになられるかと」
「そりゃ、牧野の口癖だろうよ」
「然様でございますね。では、辛気くさいですので溜め息はお辞め下さいませ」
「ハァッ?お前がそれを言うか?」
「今回の司様のご活躍は大変お見事なものでございました。しっかりと牧野様にもお伝えさせて頂きますので__きっと惚れ直されることでしょう」
「…った、当たり前だ……まぁ、なんだ。なるべく格好良く伝えろよな」
頬を薄らと赤く染めながら西田に指示を出した。
thank you♪

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