君へと続く物語 第3話 written by 四葉

「おい、西田。この飛行機、旋回ばっかで何で着陸しねーんだよ!」
眼下に空港が見えているにも関わらず、着陸許可がでないことに、司の苛立ちもマックスだ。
「申し訳ございません。某国の大◯領機から、奥様の愛犬、カトリーヌちゃんが逃亡したらしく」
滑走路を走り回るチワワと、空港職員の追いかけっこが既に二時間繰り広げられている。
「強引に網ででも捕まえりゃいーだろ」
「いえ。お犬様にお怪我をさせようものなら、外交問題にもなりかねません」
我が子以上に溺愛するカトリーヌちゃんは、何処へ行くのも一緒。
ファーストレディのご機嫌を損ねると、彼女の旦那も黙っていない。
「かーーっ!じゃあ、犬捕まえるの上手そうな奴呼べ!」
「上手そうと言われましても・・・」
坊っちゃまの無茶振りに、西田は考えた。
ポクッ、ポクッ、ポクッ、チーン!
「閃きました!」
西田は、パイロットを通じ管制塔と連絡を取った。
「今から言う方を空港へお呼びください。犬の捕縛のプロフェッショナルです。勿論、費用は、全額道明寺HD持ちで結構です。まず、一人目は、ムツゴ◽︎ウさん。え?苗字?そんなもの、そちらでお調べください!」
西田は、こうして精鋭を空港へ送り込み、一時間後に着陸することができた。
しかし、無駄な三時間が過ぎている。
一刻の猶予もない。
待たしていたリモに飛び乗ると、一路、つくしのボロアパートへ。
カチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッ
「ぎゃーーーーーーー!」
つくしは、秒針の音に追い込まれ、叫んだ。
「なんなのよ!連絡よこさないと思ったら、今度は軟禁?腹立つ、腹立つ、腹立つ!!!」
この一週間、つくしは、不安だった。
連絡の取れない司との距離が、何万光年も離れているように思えた。
もしかしたら、もう二度と会えなくなるのかも。
堂々巡りの最後の答えは、いつも最悪のシナリオばかり。
それが、突然現れたSPの村名&馬路コンビによって、アパートから一歩も出られなくなった。
今日は、ホワイトデー。
あんなに心待ちにしていたはずなのに、何で私ばっかり振り回されなきゃいけないの?
『ざけんな!』
『呪ってやる』
『一発殴らせろ!』
思いつく限りの罵詈雑言をメールするも、返信なし。
電話をかけても、
『この番号は、電波の届かないとこらか電源が切られているため繋がりません・・・・』
の繰り返し。
時計の針は、昼を過ぎ、お腹もギュルギュルと鳴り始める。
「ダメ・・・なんか、もう、ギャフンと言わせなきゃ、腹の虫が治んない」
つくしは、窓から外を見た。
黒塗りのベンツが、ドドーンとアパート前に止められている。
あそこを突破するには、どうすれば良い?
つくしは、弟に電話をした。
「もしもし?進?ちょっと協力して欲しいんだけど」
三十分後、バイト先のピザ屋の衣装を着た進がつくしの部屋を訪れた。
「ねーちゃん、マジでやんの?」
「煩いわね!さっさと、それ脱ぎな!」
ド派手な赤いユニホームとヘルメットを身に付けると、つくしは、階段を颯爽と降りていく。
「はぁー、言い出したら絶対だもんなぁ」
炎の女、牧野つくし。
その導火線は、司より短かった。
thank you♪

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