明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

君へと続く物語  第6話  written by きぃ

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「…ざけんな!」

それはどす黒い怒りを帯びた、低く唸るような声だった。

ガッシャーン!!

司は彼が到着するまでつくしが座っていたベンチを蹴り上げた。
激しい音を立ててベンチが倒れると、野次馬たちも息を飲んだ。

久々に見る司の凶行につくしは驚き目を見開いた。
しかし、すぐに窘めようと声を荒げ司を非難した。

「ちょっと何すんのよ!?」



ククク…クク
司の自嘲的な笑いが静まり返った中不気味さを増す。

「何すんのだぁ?
それはこっちのセリフだろ?」

「え!?あんた何言って…」

つくしは途中まで言いかけて言葉に詰まってしまった。
なぜなら司の目が怒りに満ちていたから…。

「おまえこそ俺をこんな所に呼び出しといて、一体何がしてぇんだよ?
いきなり殴りつけるは、回し蹴りしてくるは、明後日だの一昨日だのわけわかんねぇ事言いやがって意味わかんねえよ。

おまえはこんな事するためにわざわざ俺を呼び出したのか?

だいたい逝ってくれってなんだ?おまえ俺に死んでほしいのか?」


え…ちがっ…何…言ってるのよ?

否定したくても次々と浴びせられる道明寺からの言葉は、それまでカーッと血が上っていた私の頭を一気に冷水を浴びせたように冷ましていく。

冷静になった頭に、先程道明寺にした事がフラッシュバックのように蘇り、愚かさで顔を覆いたくなってくる。

こんな事したかったんじゃない…。

その一言が言い出せないまま、道明寺の言葉は止まらない。



怒りと悲しみの入り混じった声は、私の心をギュッと締め付けてくる。

「おまえは俺が連絡しなかった事、今日家から出ないようSPに見張りをつけた事を怒ってんだろうけどな、メール1件する時間があったら、その分仕事を片づけて1分でも1秒でも早くおまえに会いたかっただけだ。」


ここまで話すと、司はフーっと深い溜息をした。
そして、次に発せらえた彼の声はそれまでと打って変わり、弱弱しく泣いているかのように聞こえた。

「なぁ…俺が今日をどんだけ楽しみにしてたかおまえわかるか?」

「………………」

「間に合わせるため必死で仕事片づけて、おまえに会いにきてみれば…これかよ…。」

「………………」



「おめぇはいつだってそうだよな、俺が大事な話がある時はわけわかんねえ事ばっかして。
プロポーズだってそうだ。
俺はいつだって真摯におめえを求めてきた。でもなんだかんだ理由を挙げて先延ばしにしてきたよな…。」

つくしは司に縋りつこうと腕を伸ばした。
ところがその腕は、司によってパシッと払いのけられた。

「アッ!」

拒まれた…?

悲痛に歪む顔には、うっすらと涙が浮かんでいた。
こんな顔…

その思った瞬間、過去の傷ついた道明寺の顔が私の脳裏に浮かんだ。

あぁ、そうだった…昔もさせたっけ。
あの時も私は、彼を酷く傷つけた。



「いい加減…

俺…もう…疲れたわ…。」

最後は力なく、心底嫌気がさしたのだろう。

そう言うと、司は両手をスラックスの中に入れ踵を返し、今来た道を戻り始めた。


『行かないで!』そう叫びたいのに声にならない。

先ほど司に払いのけられた手をさする。

痛いよ…

でも痛いのはここじゃない。

こんな時でもあんたは手加減してくれたんだよね…。

なのに私は…。


ただ、あんたとこんなにも連絡が取れなくて不安だっただけ…

怒りに任せてあんたの気持ち考えられなかった…

喧嘩したかったんじゃない

なのに私は全然成長してなかった。



つくしは去り行く司の後姿を見つめていた。
いつもなら自信に満ち溢れ、堂々と正面を向いて歩く男の背中は、今は俯いて寂しげである。


あんたも楽しみにしてくれてたなんて…



*******

既にこの英徳学園を卒業して随分経つ。

つくしにとって司が居なければ、ここに居る理由などないし、留まる理由もないというのに、この場を動けずに呆然と立ち尽くしていた。

人生最低最悪な一日を挙げるとしたら、今日かもしれない。

今朝出勤しようとして軟禁され、我慢して家に籠った数時間。その間それに比例するようにドンドンと司への怒りだけが増大していった。
もしも司が、何度もプロポーズしてくれたこの場所に来てくれさえすれば、それだけでよかったはずなのに…。
これまで何度も断ってしまってる分、自分から言おうかとも思って、待ってる間一人色々な妄想を膨らませていた。

なのに…。

司の顔を見たら、願い通り来てくれたというのに、再び昼間の怒りが一気に再燃して、私はあいつに殴りかかってしまっていた。

それだけじゃない、来てほしかったのに、来てくれて嬉しいというのに、罵って、心とは裏腹な事を叫んでた。


私の一日は無駄だったの?

そう物思いに耽っていると、突然『ボン!』と頭に何かが命中した。

「イッタァー」

突然の衝撃に、現実に連れ戻されて辺りを見回すと、制服を着た男女数十人に取り囲まれていた。

全員から痛いくらい睨まれている。


この人たち誰?

なんでこんな事されるの?


「あんた、何様よ!」




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