明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

君へと続く物語  第7話  written by きぃ

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あれからどれくらい歩いただろう。
振り返ってもつくしの姿は視界に入らない。

フッ……あたりめぇか……。

そんな事を思い、再び歩みを進めようと踵を返した瞬間

後方から罵声やら怒声やら、はっきりとは聞き取れないが、かつて自分達F4が暇潰しとしてやっていた赤札によるイジメを思い出した。

途端に、妙な胸騒ぎをおぼえた……

まさか……

まさか、そんなわけないだろうと思うのに、司の足は元来た道を全速力で駆け出していた。


つくしぃー!


その姿はあまりにも速く、遠巻きに隠し撮りしていたカメラマンは、見失わないよう必死にレンズでその姿を追った。



*******

ポーン!コロコロ…

え!?

自分の足元に何かが降ってきた。
足元を見ると、それは先程同様空のペットボトルだった。
なんでこんなものが?
と怪訝に思っていると、

ポーン!ポーン!

何個も何個も同じようにつくし目がけて空ペットボトルが投げつけられてきた。

「道明寺様を殴るなんて許せない!」

「あのお方を蹴るだなんて許せない!」

「あんた鏡見た事あるの?」

「身の程をわきまえろ!」

道明寺を傷つけてしまった事で意気消沈している最中に、追い打ちをかけるように、かつてこの英徳で味わったいじめと同じような事をよもや又されるとは…。

飛んでくるのは全て空のペットボトルで、何個かは命中したが、それほどの痛みは感じなかった。

しかし、それは次第にエスカレートして行き誰かが液体の入ったままのカンを投げつけた。
直撃は免れたものの、地面に直撃した瞬間、周囲に液体が飛散し、当然つくしにも飛び散った。

「ちょっとこれ以上はまずいですよ!いい加減止めましょう!!」

エスカレートしたのは暇を持て余していたエキストラ達だけじゃなかった。

「うるせぇ!こんな画なかなかとれねえぞ!邪魔だから暫く黙ってろ!」

興奮した監督とカメラマンには助監督の進言は聞き入れては貰えず、同じくマズイんじゃないかと心配する他のスタッフ達と只黙ってその光景を見ているしか出来なかった。


そこから何個かの液体入りのカンやらペットボトルが投げつけられ、水もあれば、コーヒー、炭酸ジュースもあった。
吐きそうな臭いがあたりにしだした時、誰かがビンを投げつけた。
空中で独特のこを描いて飛んでくるそれに、さすがに誰もが悲鳴を上げた。

「「キャー!!!!!」」

当たる…

誰もが思った

もちろんつくしも

反射的に目をギュッと閉じて衝撃に備えた。が、突如現れた司が、瞬時にその長い脚を駆使してオーバーキックでそのビンを蹴り返した。

ガッシャーン!!

無残にも地面に落下した衝撃で粉々に砕け散ったビン。

普通の人間だったら確実に脚を怪我していた。
そもそもあの状況で蹴り返すなど出来なかっただろう。

突然の司の登場と、ミラクルとも言えるファインプレーに、その場を目撃した誰もが驚いた。

静寂。


司は恐怖のあまり動けずにいたつくしを抱きしめた。

「もう、大丈夫だ。」

つくしはその声を聞いた瞬間、頬を涙がつたった。

決して弱気にならないと気持ちを奮い立たせて立ち続けていた脚は、司の抱擁に力を失い、途端に立っていられないほどに脱力してしまった。


色々な飲み物の液体まみれで臭気をまとったつくしを、司はその長い腕と広い胸でもう離さないと言わんばかりに大切に抱き上げた。


司の腕に抱き上げられ、恥ずかしいのに抵抗する気にはなれなかった。
だってここに戻ってこれたから。
いつだってここは安らぎと愛を与えてくれる。


「ねぇ?どうして…助けてくれたの?」

「んあ!?
そんなん愛する女守るなんて当たり前だろ?

けどよ、こんなんなっちまって…
おまえを置いて帰ったりしてごめんな。」

司は申し訳なさそうに、悲しそうな目をしていた。

「ズルイ…。
それ、私のセリフ。
あんたの事傷つけてごめんね。」

「もういい。もう気にすんな。」

司は両手が塞がっているので、つくしのおでこにチュッとキスをした。


「わたしも…」

「ん?」

「わたしもね、今日が来るのが待ち遠しかった。すごく楽しみだった。

私、1週間前まで幸せだった。

27年間で1番ね。

だから決意してたの。あんたから言われた時の返事…

…バカみたいでしょ…

私が今日をどれだけ楽しみにしてたかあんたにわかる?」

言われた時の返事って、まさか…

「それなのにあんたとは音信不通。
何かあったのかって心配してたんだよ!毎日、毎日いつ連絡が来てもいいようにスマホが手放せなくって、夜もおちおち眠れなかった…なのに、私には連絡一本寄越さないくせして軟禁するなんて!軟禁する指示は出せるのに、どうして私には連絡くれないのよ!って怒ってた。」

「だからそれは…」

「うん。冷静に考えればわかるよね。
何年恋人やってきたってのよね。

でも…うっうっ…私、自分の気持ちが先行しちゃってあんたの気持ち考えてなかった。」

「……」

「心にもない事言ってあんたを傷つけてごめんなさい。
殴ったり蹴ったりしてごめんなさい。
痛かったでしょ?」

「ああ。痛かったな…。
でもよ、おまえも痛かっただろ?
…俺はつくしの為なんて思いながら、結局つくしの気持ちなんて考えないで自分のしたいように押し付けてきてたんだよな。
すれ違っちまったけどよ、俺とおまえの気持ちは変わらず1つだろ? 」


俺はつくしの瞳を見つめた。
つくしは予想外だったのだろう。驚いたような表情をしたかと思ったら、眉間に皺を寄せて叫んだ。

「訴えてやる!」

ハア!?

「何で訴えるってんだ?」

俺がつくしの顔10cmに近づけて聞くと、

「ハート泥棒」

途端に涙で濡れた頬を赤らめて、恥ずかしそうに何やら呟いた。

「ハト泥棒??そんなん盗んねえよ。」

………。

「やっぱバカッ」

「このっ…」

言いかけた俺のネクタイをギュッと引っ張ると、つくしの唇が重なり蓋をした。

しょっぺぇけど、甘い甘いキス。

俺はつくしを抱き上げたままギュッときつく抱き寄せた。




その瞬間、それまで固唾を飲んで見守っていたのにキャー!!とかオオー!とか二人を囲むように盗み見ているギャラリーから歓声やら悲鳴が一気に飛び交った。


バリバリバリバリバリバリ

それらを掻き消すように上空からけたたましくヘリコプターが近づいてきた。

機体の横に見えるのはDomyoji

俺とつくし、周りのギャラリーがヘリコプターに気を取られている間に、すっかり暗くなった闇夜に紛れてドドドォーっと雪崩のように屈強な男たちが押し寄せてきた。その数30名!
彼らは世界中から集めた傭兵上がりの屈強なSP軍団で、瞬く間に司とつくしを取り囲んだ。
もちろんその中には、つくしの逃亡を止められなかった村名と馬路の姿も。

「え!?え!?どういうこと?」

つくしは俺の腕から逃げるように離れると、突然現れた黒服の屈強な男たちを前に、この数年でSPの事は見慣れたであろうつくしも呆けた顔して驚いている。
それ以上に驚いているのはギャラリーたちだ。
SP軍団の登場によって、視界を阻まれ、折角のスクープを取り損ねたドラマスタッフ。
撮影を切り上げてまで撮ってたってのに…



慌てているつくしを他所に、俺はキスを邪魔されてめちゃめちゃ不機嫌だ。

1週間ぶりのキス…しかも珍しくつくしから…♡
この後唇をこじ開けて貪る様に堪能するはずだったってのにぃー

俺はギリギリと拳を握りしめ、旋回しながら下降してくる機体を睨みつけていた。

中から出てきたのは予想通り西田だった。

俺と牧野の姿を交互に見ると、手に持っているタオルを差し出した。

何でタオルが必要ってわかったんだ?

俺が不思議に思いながら汚れたスーツを拭いていると、

「それにしても想像以上の有り様ですね。」

「フンッ」

「ハハッお恥ずかしいです。」

牧野が自嘲ぎみ恥ずかしそうに笑った。

「お怪我が無さそうで一安心でございます。
あなたは司様の大切な御方です。
もしあなたに何かあったら道明寺の一大事なのですよ。」

「また大袈裟な(笑)」

「決して大袈裟などではございません。
どうか御自分をもっと御自愛下さい。」


西田のつくしへの思い遣りが嬉しくて、さっきキスを阻まれて怒ってた気持ちも失せちまった。


「司様、支度が整いました。こちらをお使い下さい。」

そう言うと西田はヘリコプターから離れた


「え!ヘリに?いいです、いいです!」

そう言いながら首をぶんぶん横に振って拒否するつくしに西田は、ある事実を伝えた。

「現在テレビカメラがお二人の様子をずっと撮影してらっしゃいます。」

「……うそッ!?」

周りはSP軍団で身長160cmのつくしからは何も見えないが、よく見渡すとあちらこちらでフラッシュが焚かれているのかパッパッと光っている。

一気に顔面蒼白となった。

「い…いつから」

「俺が来た時からだろ?」

すると西田が俺とつくしの前に立ち、タブレットを見せてきた。

「司様、牧野様、こちらを御覧下さい。」

俺は西田からそのタブレットを受け取りつくしと画面に目を落とすと…

「「なんだこれ!?」」

「まさかあんたが撮らせてるの!?」

そう言いながらつくしは再び俺に掴みかかってきた。が、お門違いなんだよ!

「んなわけあるかよ!ここで撮影やってたみたいだからそいつらが勝手にやってんだろ?」

「私、なにしたっけ…」

「俺を殴った」

「…」

「俺に回し蹴りした」

「…」

「俺にキスした」

「…」

「もしかして、色々投げつけられたのも……?」

「勿論でございます。」

「どおりでな。タオル持ってやって来るなんて準備よすぎだっつうの。」

俺の横で茫然自失のつくし。

「うわぁぁ~」


耳を塞ぎたくなるような奇声を突然あげて、つくしは再び腰を抜かした。


俺は倒れかけたつくしを抱きかかえると、有無を言わさずヘリコプターに颯爽と乗り込んだ。



「あとは任せたぞ!」



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