修羅 7 総つく
「っん?桜子なぁに?」
「なぁにじゃなくてさぁー」
滋さんが焦れ焦れしているのが良く解る
あたし達は3人で、チェックとは名ばかりのディナーを楽しんでいる。
チェック目的を忘れられたら、そこの店舗は合格なので、仕事と言えば仕事なのだけど‥…
Sunny Spotで、新しく出したビューティーフード&オーガニックワインを扱った Beauty Spot 三条桜子セレクトとあってか、女性に話題のお店だ。
「だからさぁー 司とはどうだったの?」
「うーん どうって?どうも何もないよ。類を迎えに行きました。たまたま会いました。仕事もらいました。ただそれだけ」
「で? そんなのは解ってるの。その先が私達2人は聞きたいのよっ」
目をランランとさせて聞いてこられても、なんの説明のしようもなく‥ 困ったと桜子を見やる
「滋さん、私が聞きたいのは、道明寺さんの事ではなくて、西門さんの方なんですけど?」
「えぇぇーー まさかのニッシー? なんでニッシー?」
恐るべき桜子の情報網‥… 総との事は、この3年間ひた隠しに隠して来た筈だ。会うのはいつものホテルか、総の部屋。誰にも見られないように深夜に訪れ、朝を待たずに帰って来ていた筈だ。
世の男性を魅了し、世の女性の絶賛を浴びる、桜子の妖艶な微笑で
「先輩、この3年男遊びが落ち着きましたでしょ? 特に、柊さんと別れてからの一年半程、ばったりと殿方の噂を聞かなくなりましたしね。」
あぁ、バレてる
愛すべきこの女友達は、かなりの情報網を持っているのだ。ホテルの出入りを誰かに見られたのだろうか? 総が常宿にしているホテル、勘のいい桜子ならすぐにピンと来る筈なのを失念していた。
思わずおでこを押さえてしまったあたしに追い打ちをかけるように
「で、西門さんとは、どうなさるおつもりですの?」
形の良い唇に、ワイングラスを傾けながらあたしに問うてくる。隣で、滋さんがワクワクした表情であたしの答えを待っている。
「道明寺さんにお会いになっても、心が揺れなかったのは西門さんのお陰でいらっしゃいますよね?」
核心をついてくる桜子に、あたしはどうしようかと逡巡する。
「先輩、聞こえていらっしゃいます?」
射るような桜子の視線と、頬を緩ませ私楽しいもの見つけましたーとでも言いたげな滋さんに挟まれたあたし‥‥
「はい。聞こえてます。」
「でしたら、お答え頂けます?」
ヒュゥーーー 怖っ と、思いつつ滋さんを見ると、早くー早くーの視線と共に、おつまみを頼む為にメニューを片目で追っている。
はぁっーー 仕方ないと腹を括る
「総とは、日曜日に会う関係。それ以上でも以下でもない。以上。質問は受け付けません。」
「ええ、もう結構です。西門さんとは、ここ3年身体の関係がお有りで、今は西門さんだけで落ち着いていらっしゃる。そういう事だと理解出来ましたから。」
敵ながら(いやいや敵じゃないが)天晴れ、桜子と感心する。
横でおつまみを頬張りながら
「そっか、そっか〜 ニッシねぇー で、ニッシーは、H上手なの?」
これまた天晴れ、滋さん
「まぁ、先輩の男遊びが収まったのが、女遊びの激しかった西門さんで、と言うのもまた酔狂な話しですけどね。」
辛辣な事を言い放つ桜子
「じゃぁーまっ、乾杯しよっ乾杯」
滋さんの音頭で、3人で何故か乾杯をして、ちょっぴり眠くなってきた頃、ふいに肩を抱かれ
「先輩、辛い時は辛いってちゃんと言って下さいね。私達はいつでも先輩の味方ですから」
「だぉーーーなんの為の友達だと思ってんの。もっと私達を頼るんだよ。骨は拾ってあげるから、ドーンと行ってこい」
暑苦しい友情が心地好くて、心地好くて、忘れていた筈の涙がポトポト零れていた。そっかーあたし一人じゃないんだって。
安心したあたしは、久しぶりに本当に久しぶりに、コテンと寝てしまった。気が付いたら滋さんのマンションで、朝を迎えていた。
「まぁさぁー ニッシーってのがねー 滋ちゃんとしてはどうかと思うけどねぇー」
「西門は、魑魅魍魎渦巻いてますからね‥… 」
「「 でも 」」
2人同時に‥… 言葉が合って。クスリと笑い合いながら
「大切な私達のつくしの恋、今度こそ成就させよう」
そう2人で誓いあったのだ。
持っていたスマホをタップして、嬉しそうに楽しそうにどこかに電話をする2人。
「‥…えぇ、そう、そうです。えぇ取材協力をお願いして下さい。えぇ借りはきちんとお返ししますから、お願い致しますね。」
「あっ、パパ? うん、そう滋ちゃん。うん元気元気。あのねパパにお願いがあってね‥…」
「桜子、コレって隠密行動って奴だよね〜」
「逆に目立つので、コスプレはしないで下さいね」
「‥‥」
大切な友の為、2人は動き出す事を決意する。
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