紅蓮 85 つかつく
性別も容姿も違う二人が双子だと知るものは、極々限られた人物だけだった。影は、玲久と名付けられ、双子を取り上げた医師と双子の母と乳兄弟であった絢子の実子として渡米した。
宗谷家を継ぐものは、一人で構わないのだから。
いざと言う時のスペアは、普段は必要のない影なのだ。
宗谷凌は、宗谷家の跡取りとして育てられた。
親の愛を殆ど知らずに成長したが、美繭がいた。そして__もう一人。彼の側には、幼少の頃から三つ年上の二階堂が居た。
代々、宗谷の家の懐刀を努める二階堂家の長男として生まれ、主の手となり、足となり従事することが生まれながらに運命づけられていた二階堂朔也。
二階堂は、全てを投げ打ってでもいいと思えるほどに、美繭を愛していた。
龍之介が美繭を慰みものにしてきたと気が付いた時__二階堂は、龍太郎を亡き者にする計画を企てた。いざ実行に移そうと思ったあの夜、龍之介は病に倒れ帰らぬ人となった。
葬儀を終えたあと、
「俺と一緒にこの邸を出よう」
二階堂は美繭に懇願した。
その言葉に、美繭は美しい微笑みを称えながら拒絶した。
「私、出て行けない。お婆様をお一人に出来ないわ__」
彼女は嘘を吐いた__大奥様のためにこの邸に残ると。
愛していたからこそ、美繭が誰を思い、誰を支えに生きているのかは気が付いていた。 だが、二人は異母姉弟だ。許されない恋だ。彼女はこの邸に居るべきではない。宗谷という柵から放たれ、自由を得るべきだと__
二階堂の言葉に美繭は、
「心配しなくても、凌が弟だと言う事は百も承知よ__」
そう言い、もう一度、美しく微笑んだ。
刹那__気が付いた
彼女を自由にしたいなんていう事は、大義名分で、ただ、欲しかったのだと__自分の手にしたかっただけなのだと。
その思いに気が付いた瞬間__それ以上の言葉を発せられなくなった。美繭を自由にするためと口にしながら、いざ外の世界に連れ出せば、自分も同じ様に美繭に狂い籠の中に閉じ込めてしまことが容易に想像出来たためだ。
宗谷の裏仕事を行う事を口実に、二階堂は宗谷の邸を離れた。
再びこの邸に戻ってきたのは、美繭が命を絶ったと連絡を受けた時だった。
連絡を受けた瞬間、二人の間に何があったのかの大方の察しはついた。
二階堂は、美繭を、主を、二人の心を思い__涙した。
そして___一つの決心をした。
宗谷は、幾晩も嘆き苦しみ__鎮静剤を打たれ眠るのを繰り返していた。
ある日、嘆き哀しんでいた宗谷が、狂気の焔を浮かべながら
「この子のことを調べて欲しい」
そう言って、一葉の写真を二階堂に手渡した。
牧野つくし___
二階堂が彼女を初めて知った夜だった。
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