baroque 62
今までと違う風が吹き
Je suis soulagé
取り巻く景色が
Je suis soulagé
変わり出す
『京都、京都です。ご乗車有り難うございました......』
アナウンスと共に持っていたバックを抱え
インディゴちゃんと二人プラットホームに降り立った。
降り立った瞬間___
久方ぶりだからなのだろうか?
京都の町は、驚くほどにつくしの心を落ち着けた。
「つくし、どげんした?」
「あっ、うん__なんだか久しぶりだなって。
春休み、雪乃さんと亜矢さんと旅行に行って京都には、帰らなかったから__」
インディゴちゃんの瞳が上下しながら、指を折り数を数えながら
「一月以来ってことは、
ひぃ、
ふぅ、みぃ、よぉ
だから、四ヶ月ぶりってことよね」
「あっ、う、ん」
インディゴちゃんの問いに、つくしは上の空で返事をしながら何かを探す様に首を左右に動かし、小さく小さく呟いた。
「__る、__ない_だ__」
小さな呟きは、雑踏の音に掻き消される。
「うんっ、なんか言ったと?」
「えっ?あっ、ううん、何にも」
「あらっ、そう?幻聴かしら__ねぇ」
つくしは立ち止まり、少し慌てた素振りでコクンコクンと頷きながら、大きな瞳を見開かせて
「インディゴちゃん、お疲れだもんねっ」
笑いながら言ったあと、真っ直ぐに前を向き歩き出した。
*-*-*-*-*
迎えの車に乗り込み筒井の邸に着けば、雪乃が嬉しそうに微笑みながらつくしを出迎えているのが見える。
何かを探し、つくしは微かに首を左右に動かす。
インディゴちゃんの瞳が柔らかく弧を描き、
「つくし、あたし帰るとね」
「えっ?もう?」
「うん。つくしを送ったら宝珠会長達と打ち合わせの予定だから」
「えっ? あぁ、そうなんだ」
「あらっ、つくしも行きたかった?」
「えっ?…な、な、なんで」
「あらっ、いやだ。なに、焦ってるの? ジュエルの仕事としてに決まってるじゃない。 まぁ、でも、ここまで送って来て連れて行ったら雪乃さんに大目玉よね〜〜と言うわけで、つくしだけ降りて頂戴ね。また、夜にでも寄らせてもらうから。じゃぁね」
つくしを車から押し出し、イタズラ気に口角を上げ、ひらひらと手を振り去っていく。
インディゴちゃんを見送りながら__つくしは、小さく息を吐いた。
ニコニコと笑いながら雪乃がつくしの手を引き、邸の中に連れて行く。
「つくしちゃん、お帰りなさい。岩国寿司を作って貰ってるのよ」
正式な養女になったからなのか、雪乃が見せていたつくしへの執着に似た愛が落ち着き柔らかな愛を放っている。
久しぶりに帰って来た嵐山の邸は、今までと違い、どこか温かくて懐かしくて
「ただいま帰りました」
初めて嵐山に遊びに来た時と同じ笑顔で微笑んだ。
チクリッ
同時に__薫がココにいない淋しさが胸に襲って来た。
ギュッと目を瞑り、
薫の影を追い払う様に頭を振った。


ありがとうございます♪
- 関連記事
-
- baroque 65
- baroque 64
- baroque 63
- baroque 62
- baroque 61
- baroque 60
- baroque 59