紅蓮 86 つかつく
人は、愛する者を失った時、どこかに憎しみの対象をおかなければ心が壊れてしまう。
宗谷にとって、己の心を守る為に憎む対象が、つくしと司の二人の愛だったのだ。
切っ掛けは、美繭が羨ましそうに洩らした言葉
「あんなキレイな恋……私もしてみたかったなぁ」
耳について離れなかった言葉。 美繭を失った後、その言葉が何度も蘇った。
その言葉を思い出す度に、自分の恋心がどれほどに邪で狂っていたかを、己の思いを遂げる事がどれだけ美繭を追い詰め傷つけたのかを突きつけられた気がした。
美繭を追い掛けて死のうと何度も考えた。だが、宗谷の次期当主として育てられた凌は自らの命を絶つ事が出来なかった。その中で見つけたのが__つくしと司を憎む楽しみだった。
唯一誤算があるとしたら、つくしの中に、美繭と同じキラキラ光るものを見つけてしまったのだ。
憎しみがいつしか執着に変わった。
美繭の身体と同じように、タトゥーとピアスを施し、同じように激しく責められイク身体に仕上げた。つくしは美しく美しく花咲いた。
つくしの中の光は、闇を浮かばせて、闇は、光を際立たせた。
宗谷は、つくしと時を共にすればするほど、己でも気づかない内に、つくしに執着をし始めたのだ。
宗谷は、つくしが見せる司へと向けた真っ直ぐな思いに激しく嫉妬した。
形だけではなく、心も己のものにしたいと激しく望んだ。
手に入らないのなら、壊してしまえと___悪魔が宗谷に囁いた。
*-*-*-*-*-*
恥辱の限りを尽くされ、陵辱の末に快楽に堕ちたつくしの心は、限界を超え正気を失った。
繭に包まれた蛹のように身体を丸く丸くして、つくしは、三日三晩昏々と眠った。
宗谷が優しくつくしに触れる。顔には微笑みが浮かんでいる。
目覚めたつくしは、キョトンとした顔をして宗谷を見つめ
「あなたは、だぁれ?」
そう聞いて来た。
「…つくし?」
「つ、くし…? それはだぁれ?」
つくしの問いに、宗谷の顔は嬉しそうに綻ばせて
「お前の名前だよ」
「あ、たし? あなた…は?」
「私…いや、俺は凌。つくしの夫だよ」
「あたしの夫?」
「あぁ、そうだよ」
ベッドに腰をかけ、つくしの肩を抱きながら耳元で囁く。
優しく、優しく髪を撫でながら
「つくしと俺は、小さな頃から一緒だったんだよ」
嘘の記憶を植え付けていく。
来る日も来る日も___嘘の記憶を植え付けていく。
嘘の記憶は、精巧に作られる。
アルバムの中には、小さな頃のつくしと凌、二階堂が居るのだ。
美繭の変わりに__つくしが居る。
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