baroque 67
jouer un tour
僕は
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君を
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もう一度手に入れる
沙百合が小さな欠伸を噛み殺しながら総二郎の向って行った先をしばし見つめていた。
薫の方に、クルリと身体の向きを変え
「総二郎さんに火を点けたみたいだけど……薫さん、本当にコレで良かったの?」
「あぁ、ありがとう」
「薫さんがいいなら別に良いんだけど__取り戻したいのよね__つくしさんのこと」
「取り戻すか___うーーん、取り戻すと言うよりも気づかせるのが当初の目的__か…な…… あっ、鷹取の件は任せておいてくれて構わないから」
薫の言葉に沙百合はコクンと頷きながら
「ありがとう。助かります」
にっこりと笑って礼を言う。
「助かるのは僕の方だよ」
グラスを傾けながら薫は薄く微笑む。
「ところで___気づかせるって?」
意味が解らないというように沙百合が薫を見上げる。
「どちらに転んでも籠の中の鳥だってことを……かな___」
「籠の鳥だってことを気づ…かせ…る?」
「あぁ、そうさ。僕の所に居ても総二郎君の所に居ても、つくしは籠の鳥だって言う事には、変わりがないってことさ。___だって、総二郎君がつくしにもっともっとのめり込めば、いまある自由がなくなるからね」
カランッ
グラスの氷が音を立てる。
「そんなことより、鷹取との結婚式は、いつになりそうなの?」
「薫さんのお陰で、当初の予定通り事が進みそうだから……来年の秋に決まりそうよ」
「そうか。それなら良かったよ。でも、未来の義妹の旦那様がつくしにのめり込んでても気にならない?」
「全く気にならないかと言えば微妙なところだけど……つくしさんのお陰で他のオイタは鳴りを潜めているようだし、何より茶道の腕前が上がったと評判がいいようなのよ。それに……私の事じゃないしね」
沙百合は含み笑いを浮かべる
「それもそうか」
「雛子ちゃんは何も知らないで総二郎さんに恋心を抱いているみたいだしね。あの二人が別れてくれれば全て上手くいくわ。__知らなければ無いのと一緒の事だから」
「無いのと一緒か__そうかもしれないね」
カランッ カランッ
氷の音色が鳴る。
「えぇ、無いのと一緒よ」
「沙百合ちゃんの良心は痛まない?」
沙百合は、クスリッと微笑み
「雛子ちゃんと総二郎さんの縁組が決まれば___鷹取に足りない格を得る事が出来るから、四ノ宮のうるさ方も鷹取との縁談に文句を言わなくなるわ。健ちゃんの奥さんになれるなら__うふふっ、良心なんて取るに足りないものよ。薫さんも一緒よね。だから私に話しを持って来たんでしょ?」
「あぁ、取るに足らないものだ」
「うふっ、健ちゃんが私に愛されて幸せなのか、そうじゃないのかってところだけど、つくしさんも薫さんに愛されて、幸せなのか、そうじゃないのか?ってところね」
沙百合の言葉に、薫は頬杖をつきながら人差し指でコメカミをクルクルと回し薄く微笑み
「鷹取は、幸せだってよく僕に惚気てるよ」
沙百合が嬉しそうに頬を染め上げながら薫の肩にしなだれかかる。
丁度、席に戻って来たつくしがその姿を見た。
つくしの視線に、沙百合は振り向き優美に笑いながら
「総二郎さんがつくしさんのこと心配なさって迎えに行かれたのだけど、お会いにならなかった?」
そう聞いた。
キライ キライ キライ キライ キライ キライ
この人がキライ。
総二郎の香りを身に纏いながら___つくしは、激しい嫉妬の炎に包まれ沙百合を見た。
ありがとうございます♪
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