柳緑花紅 第一話
「こんにちは」
鈴のような可愛らしい声で挨拶をしながらお屋敷の中に入っていった女の子の名前は花ちゃん。河杜財閥のお嬢様だ。
将来の夢は、いま目の前で優雅に微笑んでいる総ちゃん先生のお嫁さんになること。
花菖蒲のお茶会で〝運命〟の出会いをした瞬間、花ちゃんは決めたんだ。
『花、この人のお嫁さんになるの』って。
ポワワァ~ン
花ちゃんは、うっとりと未来の旦那さまの顔をみる。
あらっ、総ちゃん先生がラブラブな目で私を見てる。なんてことを思いながら___空想の世界に入り浸る。
〝花ちゃん、今日も可愛いよ〟
〝総ちゃん先生も素敵です〟
ポッ
総ちゃん先生ったら…そんな熱い眼差しで花を見ちゃいやぁ~ん
なんて夢を花ちゃんが描いた瞬間___
「…ちゃん、花ちゃん、花ちゃんだよ」
とっても良い所なのに___タッちゃんが声を掛けてくる。
もうタッちゃんたらっ! キッと睨もうとした瞬間__
あっ
お稽古中だってことを思い出した花ちゃん。
総二郎が穏やかに微笑みながら、お茶碗を差し出している。
折角かっこ良いところを見せようと思ったのに…..焦った花ちゃんは、慌てて盛大に前につんのめった。
いつも完璧な花ちゃんの失敗に、クスクスと他の子が笑い出す。
花ちゃんは、恥ずかしくって、悔しくって……泣きたくなんかないのに__ポロリッと涙が出ちゃった。
一回出始めた涙は、止めようと思うのに止まらない。
つくしが、そっとハンカチを差し伸べながら
「お姉ちゃんも足が痺れちゃったとこ」
テへヘッと笑いながら、小ちゃな声で優しく笑って言った。
つくしのおどけた笑顔に__他の子達も
「私もーーー」
「僕もーーー」
たっちゃんまでが
「タッちゃんも!」
なんて言い出した。
総二郎は、クスクスと笑いながら
「花ちゃん大丈夫だよ。そこのお姉ちゃんなんて__勢い余って茶筅折って__何を思ったか、慌てて立上がってカエルみたいにペシャンと転んだから。あっ、ついでに棗も引っくり返して部屋中抹茶だらけだったんだぞ」
その言葉につくしは、プクゥ~ッと頬を膨らませながら総二郎に向き直りアッカンベーをした。
「えぇ、お陰さまで何にも怖いものなんてありません。お化けだってなんだって、どーんと来いよっ」
その言葉に稽古場の中に温かい笑いが広がった。
それが最大のライバルであるつくしとの出会いだった。
最大のライバル?
うん。
最大のライバル。
花ちゃんは、総二郎とつくしがお互いに気が付かない事に気が付いている。
……多分、きっと……総ちゃん先生は、つくしちゃんの事が……
……そして、きっと……つくしちゃんも、総ちゃん先生の事が……
好きだってことに。
だから、花ちゃんは、つくしのことはキライじゃないしどっちかっていうと、いいやどっちかって言わなくても大好きだけど、タッちゃんと一緒に意地悪をする事に決めている。
「花ちゃん、本当にコレ使うの?」
タッちゃんが困った顔で水鉄砲を見せながら花ちゃんの顔を覗く。
「そうだけど?なにか?」
「お水当たったら、つくしちゃんのお着物濡れちゃうよ」
花ちゃんの切れ長の美しい瞳がジロリとタッちゃんを睨めば、タッちゃんの声が尻すぼんでいく。
「で、で、でもさぁ、つくしちゃん別に気にしてないみたいだよ」
先週は、待ち合い席にブーブークッションを敷いた。そこにつくしを座らせた。
盛大にブーーーッと音がして皆が笑った。
なのに……つくしまで可笑しそうに笑ってた。
毎週、毎週、手を替え品を替え色々やってるのだけど…
つくしは気にするどころか、さも楽し気に鼻唄なんて歌ってる。
その笑い顔を見てると花ちゃんは、なんだかとっても幸せで愉快な気分にさえなってくるんだ。
花ちゃんは慌て首を振り
「ウゥッ いいの!! タッちゃんはやるの?やらないの? タッちゃんがやらないなら、花、一人でやるから別にいいから」
「......や、や、やるよ。やるよ」
花ちゃんの言葉にタッちゃんは慌て後をついて行った。
祝一周年☆柳緑花紅さま
花さん、一周年おめでとうございます。
うふふっ、お祝いリレー始まります。
ビックリして貰えました?
テへヘッ
ビックリして、
と願いを込めて
花さん

駄文置き場のブログ 2nd season 星香さま 05:00 より 第二話スタート
♪このお話のコメントはアップ後に全て花さまにプレゼント致します。