紅蓮 92 つかつく
美繭の腹に手を当てながら__
♪おろろん おろろん おろろん
おろろん おろろんよ
おろろん おろろん おろろん
おろろん おろろん おろろんよ♪
玲久がよく口ずさんでいた子守唄を歌う。
これから生まれる玲久の血をひく子供に思いを馳せながら。
玲久と最も近い遺伝子をもつ宗谷の精子がどうしても欲しかった。
生まれなかった我が子の代わりに?
玲久の代わりに?
自分でも解らない。
解っているのは、死を許されないのならば、この世の中に希望が欲しい。
ただそれだけだった。
ただそれだけの為に色々な人間を巻き込んでしまった。
己の罪深さに押し潰されそうになりながらも___欲望が勝る。
つくしさんと道明寺君には申しわけないことをしたと心から思う。
だけど___引き金を引いたのは、道明寺君のつくしさんへの愛だ。
美繭があの日、君達二人のキラキラと輝くような恋を見て、宗谷との恋を不純なものと思わなければ、美繭は己の命を絶とうなどしなかった筈だ。
*-*-*-*-*
「雄ちゃん、日本に連れて行って」
玲久がそう切り出したのは、自分のルーツをしってからだ。
「日本に?」
「うん。お母さんに……そして私のもう一人の分身に会いたいの」
玲久の言うお母さんは、養母とそして生母の墓参り___分身は、宗谷凌。宗谷グループの次期総帥だった。
「会ってどうするの?」
「うーーん。どうするのかは会ってみないとまだ解らないけれど、会ってみたいの。ううん会わなきゃイケナイの」
そう言いながら自分の腹に手を当て
「この子を産む前に、色々な思いをクリアーにしたいのか…な。ほらっ、私の出生ってなんだか複雑でしょ?」
俺の大好きな透明感に満ち溢れた笑顔で ねっ と笑った。
でも、幾ら安定期に入ったからと言って、長時間のフライトなど嫌だった。そう言えば何かを思案する顔をしてから
「雄ちゃん、私この子を目一杯愛してあげたいの……そのためには、モヤモヤを抱えてちゃダメなの。それに……コレ、読んでみて」
そう言いながら玲久は数枚の写真と報告書を俺の前に差し出した。
目を通した後___玲久が日本に行きたいと言った意味を理解した。
「自分の目で確かめ__たいってこと?」
玲久がコクンと頷いて
「二人の関係が私の思ってる関係じゃなかったら、態々名乗る事はないと思ってるし名乗ってはイケナイのだけど__もしも、私の思ってる通りならと思うと居ても立ってもいられなくなっちゃったの」
報告書の中には、宗谷凌のことと共に近しい人間である二階堂と姉の美繭のことが書かれていた
「ねぇ、雄ちゃん___私が凌の立場なら__間違いなく美繭さんを愛すると思うの。イケナイって解ってても__愛すると思うの」
真っ直ぐに俺の目を見て
「だから…ね。私は、確かめなきゃイケナイの。確かめて教えて上げなきゃイケナイの。それに、良い機会だから、雄ちゃんの本当のご両親のお墓参りにも行きたいし。それにそれに、そのまま日本でこの子を生めばいいと思わない?ねっ、私と雄ちゃんの故郷をこの子に見せてあげよう」
頷くしか__なかった。
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