明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

巡り逢い 06 類つく


男があんなにも避けていた東京の筈なのに___ぽっかりと空に浮かぶ青白い月を見た瞬間、まるで導かれる様に普段なら決してしないようなことを口にする。

「少し遠回りしてくれ」

馴染みの運転手に声をかければ、隣りに座る秘書の若槻が珍しい事があるものだというように目を丸くしながら男を盗み見る。
若槻の見せる驚きの表情に気付きもせず、男は車窓から青白く輝く月を見る。

刹那
男の目の端に黒髪の女が飛び込んで来る。モノクロの世界の中に、鮮やかな色がついたかのようにあたりに色が溢れ出す。
男は目を瞬かせながら通り過ぎた道を振り返る。

「……あいつ…だ」
一瞬通り過ぎただけなのに男には髪の長い女が誰だか解った。唯一、己の心をざわつかせる存在。
頭がキリキリと痛み、快適な温度に保たれた車内な筈なのに、額に汗が伝ってくる。

「社長__如何されましたか?」
顔色を無くした司に若槻が声をかける。

その声を無視する様に司は首を一振りしたあと

「……若槻、早急に花沢の専務が付き合ってる女の事を、いいや、牧野つくしの事を調べろ」
命を出す。

「花沢専務ので、いらっしゃいます…か?」

ジロリと司が若槻をひと睨みすれば慌てて

「出過ぎた事を大変申し訳ございません。早急にお調べさせて頂きます」

司は、フンッと鼻を鳴らしながら視線を車窓に向け、青白く光る月を見上げながら今通り過ぎた女のことを思えば、頭を襲う肉体的な痛みとは裏腹に、飢えて堪らない筈の己の心が何故か凪いで行く。


会食を終え自宅代わりに使っているメープルに戻った時には、類の恋人である〝牧野つくし〟に対しての報告書が届いていた。

ソファーに腰掛け長い脚を組みながら、事細かにつくしの事が綴られている報告書を一枚一枚捲っていく。
どこから手に入れたのか、報告書の中には、類とのツーショットだけではなく、自慢げにつくしを見せびらかす花沢社長夫妻の写真が含まれている。
司は気づかない。つくしを取り囲む様に、自分が欲していた仲睦まじい関係がその報告書には綴られていたことに。

ただ、胸に去来するのは面白くない思いだけ。

「フンッ、随分と花沢の者に気に入られてるってワケか……」

司が忌々し気に口にしながら報告書をグシャリッと握り潰しゴミ箱の中に投げ捨てた。

司の心が叫ぶ。幸せになりたいのなら、心の充足を求めるのなら、お前にとっての唯一の光である女の存在を、愛して止まなかった女の存在を思い出せと。

思い出した男が、再び愛する女を手に入れたいと願う事は、至極まっとうな事だ。

高い所から低い所に水が流れるように。東の空に太陽が昇り西の空に太陽が沈んで行く様に。

だけど……二人の男に一人の女。
愛を勝ち得るのは、二人の男の内一人だけなのだ。

愛には、勝者と敗者が存在するのだから。




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♡ありがとうございます。とっても嬉しいです♡
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4 Comments

asu  

ノエちゃん

毎日暑いですね
日焼け止め。今年は飲む日焼け止めにしちゃってます。
効果のほどは?


って、絡み合う展開が好きなノエちゃん
ポッ♥

2017/05/23 (Tue) 23:54 | EDIT | REPLY |   

asu  

yukikoさま

お返事遅くなりました♪
お疲れ? いまは少しは大丈夫かな?

ねっ、ねっ、本能の男とでももうしましょうか。
さてさてどうなる?

2017/05/23 (Tue) 23:52 | EDIT | REPLY |   

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2017/05/21 (Sun) 07:10 | EDIT | REPLY |   

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2017/05/21 (Sun) 02:08 | EDIT | REPLY |   

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