ずっとずっと 68
いつもと変わらないかおるちゃんの笑顔に、あたしはホッとする。
校門を出て、少し離れた所から薫の用意した車に乗り込む。
「あのさぁかおるちゃん、かおるちゃんも悠斗もSPって付けてるの?」
「っん?あぁー 付いてるよ。」
事も無げにかおるちゃんが答える。
「親と散々揉めたんだけど、公立に入学する時の条件がSPをつけるだったよ。悠斗もことこの事に関しては、家の両親の味方だったんだよぉー もうね、どんだけ過保護?なのって感じだったけど、仕方ないのかなぁーと思ってるよ。」
「そうなんだ。」
「って、しぃちゃんもつぅ爺のSP達が付いてるでしょ?」
「えっ」
「えって‥…多分付いてると思うけど‥…気が付かない?」
「う、う、うん‥…」
「多分なんだけど、セミナー始まる頃から付けてる筈だよ。あのセミナーに参加するって言う事は、そう言う事だから。」
***
かおるちゃんが始めたイタリアンおばんざいのお店 〜PIENEZZA〜に、到着する。広く明るい店内は女性客で溢れかえっている。
「素敵なお店だね」
「うふっ、ありがとう。祥子社長に色々教えて貰って始めたお店なんだ。」
一歩、一歩着実に前に進み、夢を叶えてるかおるちゃんの笑顔がとても輝いていて、ついつい見惚れてしまった。
お店の奥に用意された個室に入る。ここのお店の個室は格式張った個室ではなく、子供連れでも気軽に食事を楽しんでもらうをコンセプトに作られた個室になっていて、それぞれが明るく可愛らしいお部屋になっている。
「素敵なお部屋〜」
「うふふっ、ここのお部屋は、ユト君とルゥさんのアイデアなんだよ〜 なんとなんと、私としぃちゃんが将来ママになった時を考えてだって。ぷっ笑っちゃうよね。」
PIENEZZA の開店までの経緯を聞きながら、食事を楽しむ。
「で、しぃちゃんの話しって?」
あたしは、 桜色のカードにパール箔押し印刷された、INVITATIONカードを差し出し
薫の就任パーティー、その際に私達の婚約発表も予定されている予定になっている事を話した。
「しぃちゃんは、もう吹っ切れたの?」
目の前の友は、唐突にあたしに聞いてきた。その瞬間、そうか彼女は全てを知っていて見守っていてくれたんだと理解する。
あたしは、目の前の友達に誠実でありたいと願い、あたしの思いを話す決心をした。
「吹っ切れたかどうか問われたら、まだ吹っ切れてはいないと思う。もしかしたら一生吹っ切る事なんてないかもしれない‥…」
あたしは、あたしの思いを全て目の前の友にさらけ出す。自分自身が気が付いていなかった思いもすべて‥
司と、ううん道明寺との出逢い、恋をした日々の事。愛を育んだNYでの事。幸せだったあの頃の事の全てを、かおるちゃんに話す。
連絡が取れなくなった日々、そして誕生日の日の別れの電話‥…あたしの心が散り散りになって壊れそうになった時、寄り添ってくれた薫の事。ぽっかり穴が空いた心を少しずつ薫が埋めてくれた事。司に感じた激しい愛はないけど、あたしにとってなくてならない大切な人になっている事、全てをかおるちゃんに話した。
話し終えると同時にかおるちゃんが微笑み
「しぃちゃん、幸せになろう。」
そう言いながら、かおるちゃんはオイオイ泣き出した。
「か、かおるちゃん?」
「っすん。ヒック‥…辛いね。しぃちゃん辛かったね。でも幸せになろう。しぃちゃん‥…ルゥさんはいい男(ヒト)だよ。しぃちゃんの事一生愛するし、裏切らない。一緒に幸せになろう。うぇぇん ヒック ヒック」
「それに‥… ゴメン私,うれじいぃのーーー。ルゥさんと一緒になるって事は、私達ずっとずっと一緒に居られるって事でしょ?うぇーーん ヒック しぃちゃんが辛いのにうれしいなんてゴメンね でも ヒックヒック私、しぃちゃんが好き。しぃちゃん、一緒に幸せになろう。」
かおるちゃんが、あたしの大好きな友達が、「幸せになろう」と、泣いてくれる。
いつの間にか、そういつの間にかあたしも泣いて‥…少しずつ涙で心が軽くなっていった。
バカみたいに沢山泣いて、かおるちゃんと顔を見合わせて笑いあった。
あたしは、幸せになる。あたしと一緒に泣いてくれた大切な友達のためにも‥…
「しぃちゃん、ここねドルチェも美味しいんだよ〜♪」
そう言いながら頼んでくれたのが、少しずつ盛り合わせられたドルチェのセット。
ワクワクしながら待っていると、ドルチェと共に、薫と悠斗がやってくる。
「よっ、お二人さん目がウサギになってんぞ」
「えへへっ、ユトくーーーん、私ね私ね嬉しくっていっぱい泣いちゃったの」
そう言いながらまたまた泣き出すかおるちゃん。「そりゃ良かった」と言いながら、微笑む悠斗。
薫が、真っ赤な目のあたしを見ながら、少しだけ不安気な表情で微笑む。
「無事に報告終わったよ。薫は悠斗に伝えてくれた?」
「うん。喜んでくれた」そう言いいながら、あたしの頭を薫の胸に抱き寄せた。
***
悠斗に僕の決心を告げた。
つくしと婚約する事。
宝珠と筒井を統合して僕が代表として就任する事。
悠斗は黙って話を聞いた後に
「おめでとう、薫。俺はたまらなく嬉しいよ。」
顔中をクシャクシャにしながら笑い、祝福してくれた。
何よりも嬉しい友からの祝福の言葉に、僕は大きく笑い返していた。
薫が嬉しそうに、しぃとの事を報告してくる。
こいつのこんなに嬉しそうな顔を見たのは初めてだ。天使の微笑みを浮かべながらも、その実笑っていなかった男が、腹ん中から喜んで笑ってやがる。
俺は嬉しくなって、幸せな気持ちになる。
「薫、幸せになんだぞ。薫の幸せの為なら、俺、なんでもしてやっからな。」
俺は、祈る‥…
幸せから自分を遠ざけていた薫の幸せを
***
セミナー終了後のTSUTSUIで、薫と2人 INVITATIONカードを皆に渡す。
皆が口々に祝福の言葉を口にしてくれる。
ノアとジョンがやって来て,
「初お披露目は、KAGURAの婚約パーティーになるんだよね? うちの母も楽しみにしてたよ。」
聞けば、2人のお母様は、亜矢さんが会長を務める会のメンバーらしく、亜矢さんがNYに出かけた日にあたし達の事を聞いたらしく、薫さんの彼女はどんな素敵なお嬢さんなのか教えろと五月蝿かったらしく‥…「もう勘弁してくれって感じだったよ」2人は戯けて話す。
ナダーに呼ばれ、薫が席を外す。
ノアとジョンが
「しぃちゃん、本当におめでとう。そう言えば、ドウミョウジとボズウェルの婚約パーティーの時もニューヘイブンには来てたんでしょ? しぃちゃんにも会いたかったって話してたんだよ。」
「えっ?」
「ドウミョウジの婚約パーティー、俺等も出席したんだよ。」
あたしは、司の婚約パーティーの事を知る。
そのパーティーに薫とお爺様達が出席していた事、そして同時に合同プロジェクトに道明寺と薫が参加する事を知る。
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