大嫌い!司ver byロキさま
「アンタなんて大っ嫌い!!!」
牧野はそう言って、走っていった。
俺は呆然とそれを見送っていた…。
***
二人とも社会人。お互いに仕事を抱え、忙しい。特に俺は世界中に散らばる道明寺の拠点を駆け回る毎日だ。牧野は中小企業の一般職。やっと仕事を覚え、新人を下に迎えて、自分の仕事をしつつ、先輩としてルーキーの面倒を見ている・・・らしい。
ゴールデンウイークなんて日本の休みは俺には関係ない。6月に入り、やっと一日休みが取れたから、牧野と会うべく、連絡を入れた。ほぼ1ヶ月ぶりに聞く声。思わず声が弾む。
「道明寺?」
「ああ、俺だ。あさって休みが取れる」
「そうなんだ・・・」
「会おうぜ」
「うーん、その日は予定が・・・」
「あ、そんなの俺が優先に決まってるだろ!」
いったい何日会ってないと思ってるんだよ!
俺より重要な用事って何なんだ!
「同じ部署の新入社員の子がね、相談があるっていってて、会社では相談しづらいっていうから、外で会おうか、って言ってて・・・」
そんなもん、会社のことなら、会社で相談すればいいだろうが!
「うん、そう思ったんだけど、他の社員には聞かれたくないからって、藤田くんが・・・」
は?!そいつ男か!なんでそんなんの相手するんだ!
ほかの男と外で会う?
何考えてるんだ!
この危機感のない鈍感ボケボケ女!
怒って電話を切りやがった!
その憤懣をそのまま、あきらにぶつけた。
実は、牧野が就職したのは、美作商事の関連会社で、牧野はそれを知らずにいたのだった。がんがん怒鳴る俺の声を聞いたあと、あきらは言った。
「お前なあ・・・俺にどうしろっていうんだよ」
それでもあきらは牧野に連絡してくれて、あさっての午後の時間は俺と会うことを約束してくれた。そして、ついでにその前に会う“藤田くん”というヤローのことも調べてくれた。
藤田安弘。藤田総合保障の当代社長の次男坊。いずれは会社に入るが、今は他に修行で出されている。気のいいスポーツマンタイプ。同期の中では抜きんでた存在。
「・・・で、親切で明るい先輩に一目惚れってわけ」とあきら。
やっぱり!!!
***
当日。牧野と会うのは午後1時。遅いランチを一緒にとる約束。藤田くんとやらには、11時にあって、話を聞いてから、メープルに向かうと言っていた。(あのあとちゃんと話をした)。男には気をつけろと言っても、ただの後輩だよ~という返事。くそっ。
そして俺は、顔をつきあわせて話をしている牧野たちを、少し離れたところからのぞき見ている。そばにはあきら。
「なんで、俺がこんなことしなきゃならないんだよ」とぼやいているが、半分面白がっているのが見え見え。
チェーン店のマズいコーヒーをすすりながら、やきもきと二人を見ていると、いきなり藤田のヤローが牧野の手を握った!びっくりしてのけぞる牧野。何か一生懸命かきくどいている藤田。牧野は、なんか言ってるけど・・・。
「あー、これは告られてるな」という、のんびりしたあきらの言葉。
見てられっか!
突如現れた美麗な男。カツカツと靴音も高く、カップルのテーブルの横に立った。
「ど、道明寺・・・」
「道明寺さん・・・?!」
そのまま店の外に牧野を引きずり出していく。
呆然としていたが、慌てて藤田もそれを追いかけていく。
「お前ってヤツは、キョトキョトしやがって!」と怒鳴りつけた。
そして・・・
「アンタなんて大っ嫌い!!!」
牧野はそう言って、走っていった。
俺は呆然とそれを見送っていた…。
***
「あの・・・」
と藤田とかいうやつが、おずおずと声をかけてきた。
ぎろっと見返すと、びくっとしたが、おじけずに話そうとする。
ふんっ、根性はあるってわけか。
「あなたが、牧野先輩の好きな方なんですね」
藤田は牧野に告ったが、あっさりとふられたらしい。
牧野は言ったんだそうだ。つきあっている人がいる、と
なかなか会えないし、我儘で強引なヤツだけどって。
そんな風に語る牧野先輩はとてもかわいらしくて。
今から久しぶりに会うんだって、おしゃれしてて。
「おーい、司。にやけてる場合じゃないぞー、牧野いっちまうぞ!」
はっとして、全速力でおいかけた。
牧野!
牧野!
牧野!
俺をいい気分にさせるのも
俺を落ち込ませるのも
みんなお前だ。
俺をおいていくな!
やっと捕まえた牧野は、怒っているより悲しそうで。
なあ、怒鳴りつけて悪かった。
お前はちゃんと断ってくれたんだよな。
俺のことを“付き合っている人がいる”って。
そうやっておしゃれしてきてくれたのは、俺のためなんだろ?
すっげぇ、かわいい。
俺のことあんなふうにおいていかないでくれ。
大嫌いなんて言わないでくれ。
なあ、牧野・・・。
必死でいいつのる俺にぎゅっと抱きついて。
「バカ」
「横暴、俺様、勘違い男」
「くるくるパー」
なんと言われようと、腕の中にいる牧野が愛しくてたまらない。
「あんただけが好きなんだからね、このバカ!」
お前の言うバカは好きって意味だよな。
・・・最高の殺し文句。
久しぶりのぬくもりを離すまいと、きつくきつく抱きしめた。
FIN
ロキさま
素敵なお中元を有り難うございました♪
めっちゃ嬉しいです♪
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