baroque 73
あなたの人生は
choix
あなた自身が
choix
選んだものだ
下唇を噛みながらつくしは、総二郎の後ろ姿を見つめる。
哀しみが寂しさが……溢れ出していく。
「……なんでは…あたし…だよ」
ポツリ呟く。
つくしは気づかない。自分が男達を翻弄し傷つけていることを。
全て自分で選んできた。薫に恋い焦がれ愛したこと。幼かったとは言え、薫の側に居たいと願ったのはつくし自身だ。それなのに、立場が、愛が、窮屈で総二郎の元に逃げ出した。自由を得るためにつくしは、総二郎の愛を利用したのだ。
羽根を捥がれ籠の中に閉じ込められたあたしは可哀想。そんな思いに捕われて、悲劇のヒロインになっているのだ。
羽根を捥がれたのなら、自分の足で地面に立って歩いて扉を開けて出て行けばよかったのだ。
つくしは窓辺に近寄り眼下を覗く。
外には紺碧の海が広がってキラキラと水面が光り輝いている。
凪いだ海を見て心が落ち着いた頃
カチャリッ
バスルームのドアが開き総二郎が部屋に戻って来る。
総二郎の拳が赤く傷ついている。
「手、どうしたの?……包帯はどこ」
「つくし、ごめん。俺、俺……ごめん」
そう言葉を繰り返しつくしを後ろから抱き締める。
コクン、コクンとつくしが頷いた。
総二郎の舌がつくしの首筋這い
クチュリッ
項に紅い花を咲かせる。
*-*-*-*-
「薫様」
片倉の呼ぶ声に目頭を抑えながら顔を上げ、手にしていたものをチラリと見る。
「あぁ、そこに置いておいてくれ」
ここ最近のつくしと総二郎の行動の全てが記された報告書が机の上に置かれた。
「失礼致します」
主を気遣うかのように執務室から片倉が退出する。
クルリと椅子を回し報告書の中を見る。
中には、つくしと総二郎の行動の全てが記されている。
仲睦まじ気に寄り添う二人の写真に苦虫を噛み潰したかのような顔になりながら頁を捲っていた薫の手がピタリと止まる。半月ほど前4人で会った夜からのつくしへの執着を増す総二郎の行動が書かれていたのだ。
「フフッ」
整った口許から真っ白に輝く歯を覗かせ頬を緩ませる。
「やっと、やっとだ…もう少し…もう少しでつくし、君は僕の元に戻って来る」
自分に言い聞かせるように薫は言葉をこぼし目を瞑る。
愛は最上級に幸せをもたらす。
そして同時に
愛は人をいびつに歪ませる。
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