修羅 8 総つく
目覚めたあたしは、滋さんのマンションで、ニンマリ顔の2人に囲まれながら...
何故かウサギ耳を付けて、朝ご飯を食べている。
「あのさぁ、滋さん。このウサギ耳は何?」
「可愛いウサちゃん」
うーん。相変わらずの返答に困ってしまって桜子を見ると‥…
何事もない顔をして、ホットスムージを優雅に飲んでいる。
「先輩、ホットスムージスープも商品化したんでしたっけ?」
「先週から店頭には出してる筈。」
気が付けば、ウサギ耳を付けたまま、仕事の話を真面目な顔でしているあたし。あたしもあたしだけど、滋さんなんて狼ルックで‥…うーん、うちの会社大丈夫だろうか?
「そうそう、雑誌の新連載が決まりましたから、先輩もお手伝い下さいね」
何だかわからないけど、取りあえず了解の返答をする。
この2人の悪巧みを知るのはまだまだ先の事。
***
「SunnySupotの牧野と申します。」
滋さんと桜子あたしの3人で来ているのは、道明寺HD
8年ぶりの道明寺財閥‥… 流石大企業の受付嬢、一寸の隙もない立ち居振る舞いであたし達3人を出迎える。
エレベーターの前には、迎えの秘書が待機していて支社長室直通のエレベーターに案内される。
コンコン
「SunnySpotの皆様がお見えです。」
奥から道明寺の声がする。
「司、やっほ~ 久しぶりぃ 元気だった?」
「道明寺支社長大変ご無沙汰しております。この度はご就任おめでとうございます。」
「本日は、お時間作って頂き大変ありがとうございます。」
3者3様のSunnySpotの挨拶に
「フッ おめぇらぁ 変わんねぇーなー」
口の端をあげ道明寺が笑っている‥…
あたし達は、早速商談に移る。
経営者として興味をもったようで、真剣な眼差しに変わる。
相変わらず彫刻の様に整った美しい顔を持つ道明寺。8年の歳月は、男に大人の色気と自信を与えている。
美しいしなやかな指を見て、総を思い出す。同じ美しさでも総の美しさは、柔靭な美しさだ。しなやかなのに強い美しさ。恋心を意識したあたしは、昔の男をみて総を思い出す。
慌てて小さく首を振る。今は仕事に集中しろ。あたしはあたしに命令をくだす。
「では改めて、サンプルお届けさせていただきます。」
無事に商談は済み、どうやらメープルに置いて貰えそうだ。
メープル各店に置いて貰えれば、イメージ売り上げ共に、効果は絶大だ。
あたしは、ついついほくそ笑む。
「あぁ、担当は牧野もな。打ち合わせ俺も出んからよぉ」
道明寺が片頬で笑う。
「三人ともこの後に予定はあんのかよ?ねぇなら、メープルに飯食いに行くぞ」
車に乗り込みメープルに向かう。
メープルのロビーを滋さんと桜子が前を歩く。
「牧野……なぁ、おまえ男いんの?」
唐突に聞いてくる道明寺に
「ハアッ?なに、急に言ってんの?あんたバカじゃないの?」
クックックと、肩を震わせ可笑しそうに笑いだした道明寺
「外見はスゲェいい女になったのに、オメェ相変わらず、変わんねぇな。俺に面と向かってバカなんて言うのオメェぐらいだぞ。」
「なぁ、オメェ男いんのかよ?」
答えようとした瞬間、視線を感じ、振り向くと着物姿の総がいた。
「よっ、司」
片手をあげて、総が近づいてくる……
「おぉ、総二郎……仕事か何かか?」
「雑誌の取材だ。今終わった所だ。」
いつの間にか、滋さんと桜子も隣に居て
「これから司と四人で、食事するからニッシーも付き合いなよ。」
総がチラッとこちらを見た後
「丁度腹もすいたし、そうさせて貰うよ。」
道明寺と総が、何やら話ながら前を歩く。
「ハァッー」
「先輩、溜め息一つ吐かれると幸せがお逃げになりますわよ。」
「ぐふっ、つくしがいつも言ってるもんね〜」
滋さんと桜子は何やらとても楽しそうで‥…
「ハァッー」
もう一度、溜め息を吐く
***
「くぅうぅー美味しぃーー」
目の前の女は、普段俺には見せねぇような顔で飯を食ってる。
そういやぁー、こいつと飯を食うなんて、この3年一度たりともした事ねぇもんな。
会うのは、俺のマンションかホテルの部屋だけ。
俺の知ってるのは、女の躯だけ。
俺の耳に残るのは、女のよがり声と嬌声。
俺の目に映るのは、俺の胸の中で絶頂に達する時の表情だけだ。
なのに、俺はこの女の全てが欲しいと思っちまってる。
女の普段の顔を見て、女に狂おしい程に惹かれちまってる自分を再確認する。
「ククッ オメェ相変わらず美味そうに飯食うな。」
司が目を細めながら愛おしそうに女を見てる。
俺の女をそんな目で見るな そう言えたら、スッキリすんだろうなぁー自嘲気味に考えていた。
「西門さん、西門さん‥…聞いてらっしゃいます?」
アルカイックスマイルって奴で、三条が俺に話しかけてくる。
「あっ、ワリィなんだ?」
「私の新連載 “日本の美と私” に西門流を取り上げさせて頂きたいというお話ですわ。編集者の方から西門流の方にはオファーが既に行ってるとは思いますけど、私からも改めてお願い致しますわ。」
「あぁ、お前のコラムすげぇ人気があるんだろう?こっちこそワリィな」
「では、担当は西門さんで宜しいかしら? 私のアシスタントして牧野について貰いますから。」
渡りに船の三条の言葉、俺は三条が天使に見えた。
桜子の突然の発言に、あたしは抗議する。
「桜子、あたしそんなの聞いてないよ。」
「あらぁー、新連載が始まるから宜しくお願いしますと、お伝えして社長からは了解のお返事を頂きましたけど?」
したり顔で、美しく優雅に食後酒の貴腐ワインを傾ける桜子。
桜子のお尻に悪魔の尻尾が見えた気がした‥…
帰り際、俺は女の耳許に唇を寄せ
「日曜日、俺の部屋で待ってる」
そう囁いていた。
刹那
司と目が合った‥…
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