無花果の花はうちに咲く ~過去04~ 類つく
彼女の身体を貪れば貪るほど心は飢えて、堪らなく渇いていった。
「いつも言ってるけどさ、そんなとこに突っ立ってると邪魔だから座んなよ」
彼女は俯きながらソファーの端に座る。
「そこだとテレビが見えない。こっち来て」
俺の隣を二つ叩いて彼女を呼ぶ。中々来ない彼女に苛ついてテレビのチャンネルを変えた。
「ねぇ、コレと同じようにしてよ」
彼女を射るように見つめれば、彼女は大きな瞳を更に大きくしながら画面に流れる画像を凝視した。
「早くしてよ」
頬を染め微動にしない彼女。俺の中の欲がムクムクと持ち上がる。
「へぇ、したことはないんだ」
俺は立ち上り彼女の腕を掴み、側に引き寄せたあと、ベルトのバックルをはずして、もう一度ソファーに腰かけた。俺の前に跪く彼女を見下ろせば、得も言われぬ陶酔感が持ち上がる。
「早くしてみなよ」
彼女の白い指がジッパーを下ろし下着の上から膨らんだオレのものにキスをする。彼女の白い手が熱くたぎるオレのものを下着から取り出して、ぎこちなく掴んだ。
「そんな風にじゃなくて、ちゃんと口で咥えてよ。あっ、歯はたてちゃダメだからね」
彼女の戸惑いが白い指先から伝わってくる。ぞくぞくするような感情が腹の底から湧いてくる。
彼女の舌がオレのものを絡めとる。拙い舌使いに身体が驚くほどに興奮する。今まで味わったことのないような恍惚感。
「もっと深く咥えてよ」
長い黒髪がサラサラと揺れている。彼女の口内はネットリとオレのものに絡み付く。俺はたまらず抽送を繰り返す。
黒真珠のような瞳から零れる涙を指で掬いながら
「ちゃんと溢さずのんでね
うっ、ぅっ、ゥグッ」
彼女の口の中に白い精を吐き出せば、ゴクンッと彼女の喉が上下する。得も言われぬ快楽が俺の身体を駆け巡った。
久しぶりに大学に立ち寄った帰り道、専門書を買うのに本屋に立ち寄った。
大きな書店の玄関口には、Photograph “ 御堂千暁 ”の名と【無花果】の写真集が置かれていた。そのうちの一冊を手にとった。白イチジクを美味しそうに頬張る少女の口元が最初の一頁に撮されていた。
幾冊もの写真集を手に取り、キャッシャーに向かっていた。
そこには俺の知らない沢山の彼女がいた。食い入るように一頁、一頁を見ていく。
固い蕾が少しずつ花になるように美しく様変わりしていく彼女が撮されている。
いや、口元や目元、後ろ姿、光や暗闇の中での撮影と、彼女の全貌がわかる訳じゃない。なのに、美しく変化を遂げていくのが良くわかるのだ。
国際的な賞を取った写真は薄っすらと微笑み浮かべる彼女が撮されていた。流石に賞を取るだけあって美しく官能的だった。
彼女の写真の輪郭をなぞりあげながら、もっと淫らで美しい彼女を知っているとほくそ笑んだ。唇から抑えきれない笑いが溢れ出る。愉快な気持ちで最後の頁を捲った。
刹那
激しい嫉妬に支配された。
- 関連記事