ずっとずっと 72
「3人で食事?迎えに行くつもりではいたけど‥…いいの?」
「うん。類には薫の事をきちんと紹介したいの。良いよね?」
明るく微笑んで君は言う。
ねぇつくし、君は時々酷く残酷だね。
僕にきちんと向き合ってくれるのは、とても嬉しい事だよ。
だけど‥類君の気持ちは考えた事ある?
もしもあの時自分が側にいたら‥…と思う男の気持ちを、君は少しでも考えたことがある?
類君は、君を愛する限り、大きな後悔と虚無感をもち続けなればいけないんだよ。
今回、たまたま、そうたまたま、僕は勝者になれた
偶然と策略で、僕は勝者になれた。
だけど‥… 僕は永遠に怯え続けなければいけない。
道明寺司の存在に‥…
そうか‥…類君が司君に君を託したのは、君を愛しているから、君の笑顔をみたいから、だけじゃなく‥…永遠に報われない君への、想いから逃げ出したんだね。
一歩退く事で、自分の気持ちに蓋をする事が出来る。苦しい恋から離れて見守る事で、君の一部になれる。
ねぇ、つくし君は慈悲深く、そして残酷だ‥…
だけど、僕は君を手放せない。
***
残酷な仕打ちだと理解は出来ても、君の命(めい)には逆らえず、君の指定した時間に合わせて、僕は多神楽に向かう。
多神楽の女将に、君と類君がいる部屋に通される。
込み入った話しは終わったのだろうか? 2人の間に穏やかで優しい時間が流れている。
2人並んでいる所を見て、僕の立場が、類君と入れ替わっていたとしても何ら不思議じゃない事を知る。
彼女の、つくしの心から愛している男は、彼ではないと解るから‥…
僕も類君も、寄り添う愛だから。彼女に与えられる愛は、彼女から受け取る事の出来る愛は、それしかないから。
僕と彼が違うもの‥…チャンスを掴む為に貪欲であったか、否かの差。それだけだ。
同時に、彼が、つくしを諦める事など、生涯無い事も僕は理解する。
きっと類君は、つくしへの想いも燻らせながら生きて行くのだろう。
薫さんが入ってくる‥…
牧野を間に置いた時、あぁーそうかと、俺は納得する。
彼が、牧野を欲する気持ちを‥…
俺と彼が違うもの‥…
司と牧野の間に流れる熱い想いを見ていない事。
彼が司とは関係なく生きて来た。ただぞれだけだの差だ。
司に突然別れを告げられ、傷ついた牧野をそのままにしては置けなかったんだろう。始めは彼女をただただ救う為に‥…救う筈が、牧野に心を囚われてしまったのだろう。
彼は、幸せと共にもがき続けるのだろう。牧野の愛を乞い。ただそれだけを求め。彼女といる幸せを噛み締めながらも、失う恐怖を抱き、もがき愛し続けるのだろう。
もがいてもあがいても‥一度手に入れてしまった幸せは、手放しはしないだろう。いや手放せないだろう。
牧野、どうかどうか‥‥幸せになって。
***
「薫、こちらが‥って、もう知ってるんだよね。あっ、でもあたしの友達として改めて紹介させてね。東の王子様の花沢類。寝坊助ぶりは一等賞だよ。クスッ」
「類、この男(ひと)が、西の王子様の宝珠薫。」
「「王子様って何?」」
ぷっ クスクスッ
俺達がハモって、牧野が笑う。
可笑しそうに、楽しげに牧野が笑う。
少しだけ、張りつめた空気の中‥…お姫様を真ん中に食事を頂く。
東西対決は、西に軍配が上がったのかぁーなんて事を考えて、俺もクスリッと笑う。
***
RRR
「あっ、ゴメン。桜子から電話みたい。ちょっと席外すね」
そう言いながら‥…つくしが部屋を出る。
類君と二人、部屋に残される‥…
「騙し討ちのような形になって申し訳ない‥…」
僕は、彼に誠実でありたいと真摯に謝る。
「いえ。どうかどうか‥牧野を幸せにしてやって下さい。そして、薫さんもどうかどうか幸せになって下さい。」
類君は、少し淋し気に微笑みながら僕に彼女を託してくれた。
「ありがとう。必ず幸せにするよ。」
僕は、彼に誓う。
スッと襖が開いて‥…
「薫〜、桜子と滋さんが、家に来たいと言っているのだけど?」
「つくしが大丈夫ならお呼びして。類君も、もし宜しければいかかですか?」
「今夜は友人達と会う約束をしておりますので、また次回にでもお誘い下されば嬉しいです。」
僕等は多神楽を後にする。
明日催される、KAGURAの婚約パーティーで会う約束をして‥…
迎えの車に乗り込んだ瞬間、つくしの目にキラリと涙が光る。僕はつくしを抱き寄せる‥… 彼女は僕にもたれ掛かり瞳を閉じる。
僕等を乗せた車は、音も無く家路に向う。
更新予定、拍手コメント返信は こちら♥をご覧下さい。
↓ランキングのご協力よろしくお願い致します♥

にほんブログ村
♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥