紅蓮 105
「わたし、とわちゃん 」
巻き毛を風に揺らしながら玲の前に手を出した。
黒真珠のような玲の瞳が永遠を見つめたあと、白い歯を見せながらニッコリと笑う。
同じ年頃の子故にか?
それとも……
数奇な運命を持ち生まれた二人だからなのか? 二人は瞬く間に仲良くなった。
目を見合わせて、クスクスと笑い合う姿は小さな恋人同士のようで、あまりの可愛さに永遠のガヴァネスの佐久間も宗谷家の使用人達も微笑みを浮かべた。
玲の瞳に蝶々が舞う姿が目に入る。玲は立ち上がり
「とわちゃん チョウ」
玲のその言葉を合図にしたかのように二人揃って庭に飛び出す。佐久間達が後を追う。
ヒラヒラ ヒラヒラとまるでダンスを踊るかのように無数の蝶が空を舞う。
幼子二人は魅入られたかのように空を見上げた。
「永久様、玲様」
慌てた声がしたのと同時に、散水のためのスプリンクラーが一斉に水を撒き、水飛沫が陽の光にあたりキラキラ輝く。
「わぁっーー」
永久と玲は歓声を上げながら、水飛沫目掛けて駆け回る。キャッキャッとはしゃぎながら水と戯れる。ガヴァネスの佐久間が慌てて止めに入ろうとしたその時……
設楽とのカウンセリングを終え、部屋につくしが戻ってきた。
ビショビショになりながら嬉しそうに水と遊ぶ二人のあまりの可愛らしさに、つくしは目を細め
「これだけ濡れてしまったら、思う存分楽しませたいけど、ビニールプールなんてここには無いわよね……」
つくしは、うーんと唸りながら、何か思案した後、ポンと手を叩きホースを手にして水を撒きながら、ホースの水で虹を作る。
「玲くん、永久 、見て見て」
青い空に虹が出る。その虹を掴もうと永久と玲が虹に向けて手を伸ばす。軽やかな笑い声が響き渡った。
よほど嬉しかったのか永久は、宗谷の帰宅を待ち構えていたかのように纏わり付き、つくしが着替えを手伝う横で拙い言葉ながらも今日あったことを嬉しそうに話す。
「あっ、かぁしゃま とぉしゃまのレイくんと おんなじ しゅごーい」
「あらっ、本当」
宗谷はゆっくりと後ろを振り返る。
「……設楽先生のお子さんにもあるのかい?」
「えぇ。ありましたよ
腰のえくぼって、日本人には珍しいのでしょ?」
「あぁ」
その時は、それで終わった会話だったのだが……
夕食の時
「レイくんの おめめ とっても きれいなの」
「綺麗?
永久のお目目も綺麗だよ」
宗谷の答えに永久は首を振りながら、唇を尖らせ
「レイくん キラキラなのよ」
そう口にした。その言葉を補うかのように
「真っ黒な瞳なんですけどね、光に当たる角度によってグレーに輝くのよ
それがキラキラして見えてね」
つくしの言葉を聞きながら、幾度か会ったことのある母だと言う美しい人形の様な姿形をした人物の瞳を思い出していた。
その人の瞳は、精神が壊れたのがよくわかる焦点の合わない瞳をしていたが、光の角度によって宝石みたいにキラキラ輝いていたのだ。
そこまで考えた時、宗谷の胸の奥になんとも言えないモヤモヤとした気持ちが湧いてくる。
「凌さん、難しい顔して……どうなさったの?」
つくしの心配げな表情に、言葉に、思考が邪魔をされる。
「あっ、いや……
永久がこんなに嬉しそうにしているのをみたら、つくしの言う通りだったと思って自分の考えを反省していたんだよ」
宗谷の言葉を受けて、つくしが嬉しそうに微笑みを浮かべる。
表面だけ掬い取って見てみれば、幸せそうな家族の姿がそこにはあった。
巻き毛を風に揺らしながら玲の前に手を出した。
黒真珠のような玲の瞳が永遠を見つめたあと、白い歯を見せながらニッコリと笑う。
同じ年頃の子故にか?
それとも……
数奇な運命を持ち生まれた二人だからなのか? 二人は瞬く間に仲良くなった。
目を見合わせて、クスクスと笑い合う姿は小さな恋人同士のようで、あまりの可愛さに永遠のガヴァネスの佐久間も宗谷家の使用人達も微笑みを浮かべた。
玲の瞳に蝶々が舞う姿が目に入る。玲は立ち上がり
「とわちゃん チョウ」
玲のその言葉を合図にしたかのように二人揃って庭に飛び出す。佐久間達が後を追う。
ヒラヒラ ヒラヒラとまるでダンスを踊るかのように無数の蝶が空を舞う。
幼子二人は魅入られたかのように空を見上げた。
「永久様、玲様」
慌てた声がしたのと同時に、散水のためのスプリンクラーが一斉に水を撒き、水飛沫が陽の光にあたりキラキラ輝く。
「わぁっーー」
永久と玲は歓声を上げながら、水飛沫目掛けて駆け回る。キャッキャッとはしゃぎながら水と戯れる。ガヴァネスの佐久間が慌てて止めに入ろうとしたその時……
設楽とのカウンセリングを終え、部屋につくしが戻ってきた。
ビショビショになりながら嬉しそうに水と遊ぶ二人のあまりの可愛らしさに、つくしは目を細め
「これだけ濡れてしまったら、思う存分楽しませたいけど、ビニールプールなんてここには無いわよね……」
つくしは、うーんと唸りながら、何か思案した後、ポンと手を叩きホースを手にして水を撒きながら、ホースの水で虹を作る。
「玲くん、永久 、見て見て」
青い空に虹が出る。その虹を掴もうと永久と玲が虹に向けて手を伸ばす。軽やかな笑い声が響き渡った。
よほど嬉しかったのか永久は、宗谷の帰宅を待ち構えていたかのように纏わり付き、つくしが着替えを手伝う横で拙い言葉ながらも今日あったことを嬉しそうに話す。
「あっ、かぁしゃま とぉしゃまのレイくんと おんなじ しゅごーい」
「あらっ、本当」
宗谷はゆっくりと後ろを振り返る。
「……設楽先生のお子さんにもあるのかい?」
「えぇ。ありましたよ
腰のえくぼって、日本人には珍しいのでしょ?」
「あぁ」
その時は、それで終わった会話だったのだが……
夕食の時
「レイくんの おめめ とっても きれいなの」
「綺麗?
永久のお目目も綺麗だよ」
宗谷の答えに永久は首を振りながら、唇を尖らせ
「レイくん キラキラなのよ」
そう口にした。その言葉を補うかのように
「真っ黒な瞳なんですけどね、光に当たる角度によってグレーに輝くのよ
それがキラキラして見えてね」
つくしの言葉を聞きながら、幾度か会ったことのある母だと言う美しい人形の様な姿形をした人物の瞳を思い出していた。
その人の瞳は、精神が壊れたのがよくわかる焦点の合わない瞳をしていたが、光の角度によって宝石みたいにキラキラ輝いていたのだ。
そこまで考えた時、宗谷の胸の奥になんとも言えないモヤモヤとした気持ちが湧いてくる。
「凌さん、難しい顔して……どうなさったの?」
つくしの心配げな表情に、言葉に、思考が邪魔をされる。
「あっ、いや……
永久がこんなに嬉しそうにしているのをみたら、つくしの言う通りだったと思って自分の考えを反省していたんだよ」
宗谷の言葉を受けて、つくしが嬉しそうに微笑みを浮かべる。
表面だけ掬い取って見てみれば、幸せそうな家族の姿がそこにはあった。
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