恋女房は、おさな妻 前編 総つく
「うぅーーん」
なにやら唸り声を上げながら、姿見の前でポーズをとってる俺の恋女房。
どうした?
何があった?
誰かにイジメられたか?
慌てて部屋に入ろうとした瞬間
「うぅーーん 総ちゃん…めぇー」
えっ? 俺?
何? 俺?
思い当たる節……ウゥーム
ねぇぞ ねぇぞ
俺、清廉潔白だ。
成人男性、こんな清くっていいのか!ってぐらい清いぞ!
自慢じゃないが、つくしにだって手出してねぇぞ!
いや、正確に言うと手出せてねぇ。
理由か?
理由なら山ほどあんぞ
先ずは、あいつら……
司に 類に あきら
この頃じゃ、それに三条に大河原まで加わりやがった。
暇さえありゃ遊びに来やがって、下手すりゃ夕飯まで食っていく。
まぁ、先祖代々の許嫁だって言ったところで、つくしは市井の生まれだ。ご贔屓さんは多ければ多いほど有難い。
あぁ?
その前に初夜ってもんがあっただろうって?
ハハッ……
高校卒業するまではって約束を守った!なんてかっこいいもんじゃなく
管巻く、つくしの親父さんを寝かしつけて、寝室に戻れば……つくしは、可愛い顔してクゥークゥー寝ちまってた。起こすのが勿体無いような何とも幸せそうな顔なもんだから、眺めてた俺も幸せな気分で眠りについちまったんだ。
ハネムーン?
これは、俺の我儘で結婚を早めちまったんで、仕事が一段落するまではお預けだ。
その前に……もっと決定的なことがある。あいつ、本当にネンネなんだわ。ちょっとハード目のキスしたら息つぎ出来ねぇで失神しそうになったりすんだ。
まぁ、そんなんも可愛くてタマンねぇんだけどな。
惚気るなだって?
いやいや、ここで惚気なきゃどこで惚気る!
トントントントン
誰かが不粋に俺の肩を叩きやがる。眉を顰めて振り向けば
「……総ちゃん…そのブツブツ言ってるのって、独り言?
かなりキモいよ」
っん?
今、何て言った?
キモいっ言ったか?
なぁ、おいっ
好き好き光線はどこいった?
「好き好きじゃ……ないから」
「あっ?」
「……だから、そんなに好き好きじゃないもん」
ヒュー
暑い日だって言うのに、足裏から冷たさが這い上がってくる。
「つ、つ、つくし?」
「総ちゃんなんて、もう知らないっ」
さくらんぼうみたいにピンクに色づく唇を尖らせて、俺の横を駆け抜けていった。
**
総ちゃんなんて、総ちゃんなんて……
「……ヒック ヒック …追いかけても来ない」
本当は好き、好き、大好き。
総ちゃんのお嫁さんになれて、毎日が幸せで幸せで堪らない……
でも、でも、総ちゃんは、あたしのこと……本当に好きなの?
可愛いよ。好きだよって言葉はくれる。いっぱいのキスもくれる。
でも、でも……そこまでしかしてくれない。
ううん。キスだって、大人のキスはあの一回だけ。
ううん。この頃は、仕事が忙しいとかなんとかで一緒のお部屋で寝てもくれない
あたし、そんなに魅力ないのかな……
た、たしかに、総ちゃんが今まで連れてた女の人に比べれば、胸はないかもしれない……お尻もないかもしれない……いや、寸胴でお子様体型だけど……色気なんてこれっぽちもないけど
総ちゃんを好きな気持ちは誰にも負けないよ。
それに
あたし総ちゃんの奥さんだよね?
「ハァッー」
色気も可愛げもない女なんて、もう大嫌いになっちゃったかな?
ヒック ヒック ヒック ビェーン
涙が止めどなく溢れていく。
「……総ちゃん、嫌いになんないで」
**
好きじゃないの言葉の破壊力があまりにも大き過ぎて、微動だにも出来ずにいた。
いや、俺、ちょっと待て
つくしは、好き好きじゃないって言っただけ…だ…よな
そうだ
好きじゃないじゃない。
まぁ、それはそれでショックだけどな。
てか、俺、つくしを追っかけろ。
屋敷の中を探し回る。どこにもいなくて、半狂乱になりそうになった時、昔、つくしに話した事のある、とある場所を思い出す。
裏庭の奥にある蔵。小さな頃、自分の中で処理しきれない思いがあると、過ごした場所。
バァちゃんが、全部包み込む微笑みで迎えに来てくれた場所。
蔵の中をそっと覗けば、目尻に涙の跡を光らせて眠る俺の恋女房。
「ったく、どこでどんな時でも寝んのがお前の特技だな」
つくしの側に座って胡座をかいた。横で寝るつくしが愛おしくて愛おしくて、胡座をかいた自分の膝に抱え込む。
一人で泣くなと願いを込めて、涙の跡を指の腹で拭った。
つくしの温もりが心地良くて、いつの間にか壁に凭れかかり一緒に眠ってた。
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愛し〜うつくし〜
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居候
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何? 俺?
思い当たる節……ウゥーム
ねぇぞ ねぇぞ
俺、清廉潔白だ。
成人男性、こんな清くっていいのか!ってぐらい清いぞ!
自慢じゃないが、つくしにだって手出してねぇぞ!
いや、正確に言うと手出せてねぇ。
理由か?
理由なら山ほどあんぞ
先ずは、あいつら……
司に 類に あきら
この頃じゃ、それに三条に大河原まで加わりやがった。
暇さえありゃ遊びに来やがって、下手すりゃ夕飯まで食っていく。
まぁ、先祖代々の許嫁だって言ったところで、つくしは市井の生まれだ。ご贔屓さんは多ければ多いほど有難い。
あぁ?
その前に初夜ってもんがあっただろうって?
ハハッ……
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管巻く、つくしの親父さんを寝かしつけて、寝室に戻れば……つくしは、可愛い顔してクゥークゥー寝ちまってた。起こすのが勿体無いような何とも幸せそうな顔なもんだから、眺めてた俺も幸せな気分で眠りについちまったんだ。
ハネムーン?
これは、俺の我儘で結婚を早めちまったんで、仕事が一段落するまではお預けだ。
その前に……もっと決定的なことがある。あいつ、本当にネンネなんだわ。ちょっとハード目のキスしたら息つぎ出来ねぇで失神しそうになったりすんだ。
まぁ、そんなんも可愛くてタマンねぇんだけどな。
惚気るなだって?
いやいや、ここで惚気なきゃどこで惚気る!
トントントントン
誰かが不粋に俺の肩を叩きやがる。眉を顰めて振り向けば
「……総ちゃん…そのブツブツ言ってるのって、独り言?
かなりキモいよ」
っん?
今、何て言った?
キモいっ言ったか?
なぁ、おいっ
好き好き光線はどこいった?
「好き好きじゃ……ないから」
「あっ?」
「……だから、そんなに好き好きじゃないもん」
ヒュー
暑い日だって言うのに、足裏から冷たさが這い上がってくる。
「つ、つ、つくし?」
「総ちゃんなんて、もう知らないっ」
さくらんぼうみたいにピンクに色づく唇を尖らせて、俺の横を駆け抜けていった。
**
総ちゃんなんて、総ちゃんなんて……
「……ヒック ヒック …追いかけても来ない」
本当は好き、好き、大好き。
総ちゃんのお嫁さんになれて、毎日が幸せで幸せで堪らない……
でも、でも、総ちゃんは、あたしのこと……本当に好きなの?
可愛いよ。好きだよって言葉はくれる。いっぱいのキスもくれる。
でも、でも……そこまでしかしてくれない。
ううん。キスだって、大人のキスはあの一回だけ。
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総ちゃんを好きな気持ちは誰にも負けないよ。
それに
あたし総ちゃんの奥さんだよね?
「ハァッー」
色気も可愛げもない女なんて、もう大嫌いになっちゃったかな?
ヒック ヒック ヒック ビェーン
涙が止めどなく溢れていく。
「……総ちゃん、嫌いになんないで」
**
好きじゃないの言葉の破壊力があまりにも大き過ぎて、微動だにも出来ずにいた。
いや、俺、ちょっと待て
つくしは、好き好きじゃないって言っただけ…だ…よな
そうだ
好きじゃないじゃない。
まぁ、それはそれでショックだけどな。
てか、俺、つくしを追っかけろ。
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裏庭の奥にある蔵。小さな頃、自分の中で処理しきれない思いがあると、過ごした場所。
バァちゃんが、全部包み込む微笑みで迎えに来てくれた場所。
蔵の中をそっと覗けば、目尻に涙の跡を光らせて眠る俺の恋女房。
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