恐怖の館でお疲れSummer 前編 by plumeria さま
暑い……マジで暑い。
鹿児島より東京の方が暑くね?って思うぐらい暑い。
そんな中で牧野はまた俺のベッドに寝転んでスマホを覗き込んでいる。
今日の服はチューブトップに短パン。一応落ちないようにと首に紐で結ぶようになってるタイプ。
このタイプの服は程よく胸がないと困るんだよな。
胸がデカすぎるとズレてすぐにはみ出るし、なさ過ぎると気が付いたら落ちてる……牧野の場合こっちだけど。
「今度は何見てるんだよ。またどっか行きたいのか?」
「うん……実はね、桜子がいいとこあるって言ってたの。どれかなぁ~って思って」
「三条が?またとんでもねぇ場所じゃねぇの?国内か?」
「うん!割と東京から近いらしいよ……あっ!ここかな?」
「どれだ?」
牧野がスマホの画面を俺の方に向けて、そこに出されてた画像は……お化け屋敷?!
今度はお化け屋敷に行きたいのかっ?!
しかもここには日本一怖いと評判の…て書いてある。日本一怖い…そんなお化け屋敷にこいつが入れるのか?
大声出して化けてる従業員殴って逃げるのがオチじゃねぇの?
「お前、入ってからちゃんと最後まで行ける自信があんのかよ。よく読んだのか?日本一怖いって書いてんだぞ?」
「うん!多分大丈夫!子供の時も泣いちゃう進を抱えて出てきたし、中学の時も震える優紀をおんぶして出てきたもん!」
「・・・何処のお化け屋敷だ?」
「ん?夏祭りの特設会場」
……アホか!規模か違うじゃねぇか!
それぐらいで何でこのアトラクションをクリアする自信が出てくるんだ?
「ねぇ~!今度の日曜日バイトが休みだから行こうよ~!」
「やだね。この前鹿児島に行ったばっかじゃん。部屋でゆっくり……もっと楽しめることあるんじゃね?」
「え~っ!!だってあれはあれは……全然、りょ、旅行じゃなかったじゃん!もっとさ…こう外で元気よく…」
「あれ?その割にはお前…すっげぇ積極的だったよな?いきなり咥えるからマジで焦ったわ!」
「ち~が~う~っ!あれ、あれは…西門さんが意地悪するからだよ!」
「へぇ、意地悪くしたらエロくなるのか?つくしちゃんは!」
こいつの首に結ばれてる紐が俺の手で解かれてるのに気が付いてない。
足をパタパタさせてるから俺に足の裏が丸見え。そこを指でスーッと触ると「ぎゃああーっ!」って身体を反転させた。
そしてその時に簡単にズレ落ちたトップスにも「うわあーっ!」っと色気のねぇ声で大騒ぎ。
「くくっ…連れてってやろうか?」
「えっ?!ホントに?」
「あぁ、その代わり……先に俺を楽しませて?」
今日もまた陽の高いうちからベッドの上で大暴れ。
「もうだめぇ…!」なんて言葉は完全無視して2ラウンドぶっ続けでこいつをノックダウンさせてしまった。
***********
そして日曜日。
例の如く牧野は今日も元気よく西門にやってきた。
行くところがお化け屋敷ってのに信じられないぐらいのハイテンション。本当にこのノリで日本一怖いってヤツを制覇出来るんだろうな?
俺は世界一怖いヤツを生で長いこと見てるからこんなものでビビったりはしねぇけど。
行き先は富士○ハイランド……東京から車で約2時間掛けてそこに行ったが、こんなアトラクションなのに既に何人か並んでて、そいつら殆どが嫌そうな顔してやがる。
嫌なら入らなきゃいいのに…って横を見たらリタイヤって書かれた扉から数人が出てきてその場で倒れてた。
マジか……面倒臭そうだな…。
って入る前からぐったりな俺の服をツンツン引っ張って「ワクワクするね!」……その顔、今だけだと思うけど。
「ねぇねぇ!お化けに追いかけられるのが苦手な人のために”お化けが寄ってこないお守り”が売られてるんだって!買ってこようかなぁ…」
「…入る意味がねぇじゃん」
「だよね!」
どうやらここの設定は”病院”……心霊体験をするには最適って訳か?
牧野が興奮して話すのを聞いたらここの小道具は殆どが実際に医療現場で使われていたものらしくて消毒液の匂いまで再現してるんだと。
「凄いよねぇ、絶対に怖いよねぇ~、時間は1時間ぐらいかかるらしいよ」
「……1時間もこんな中にいんのかよ…」
「西門さん、平気?私を置いて先に逃げないよね?」
「そりゃわかんねぇな。色っぽい幽霊が出てきたら追いかけるかもよ?」
「……バッカじゃないの?!」
「くくっ!」
そして俺達の順番になって、すでに腰が曲がった牧野を連れて入ることになった。
よくわかんねぇストーリーだけどどうやら”過去に事件があった病院の廃業後、迷い込んだ人間”ってのが俺達らしい。
薄暗い廊下を進んでいたら何処かから声が聞こえた。
『……なんで来たの?』『……ここには来ちゃダメ……』
「ぎゃあああーっ!!西門さん、何か言った?何か聞こえた?!」
「……アナウンスだろ?子供の声で」
まだ入って数分なのに既に俺の袖が引き千切られそう……間違いなくリタイアで早く出られると確信した。
その後も牧野の声の方が恐ろしいってぐらい館内に響いた。
「きゃああぁーっ!何処かで赤ちゃんが泣いてるーっ!!」
「うわああっ!ロッカーがガンガン鳴ったーっ!」
「ひえぇ~!!これって血だよ!血だよ!血がこんなに飛び散ってるよーっ!」
「ぎゃあっ!何かが吊されてるっ!西門さん、あそこ、あそこーっ!!」
「……そりゃホラーハウスだからな」
こいつの声で耳がキーーーン、とする。何処だ、リタイアの扉はっ!!
そのうち視界をすべて奪われる”暗黒通路”ってところに来てここでも牧野は『見えないーっ!』を連発。当たり前だっての。
トドメの逃げ場のない”監禁部屋”ってところに来たら、入った瞬間扉が閉められた。
「……なに?ここ、なんなの?西門さん!」
「知るかよ。ってか何か聞こえねぇか?」
「やだやだ!変な事言わないでよっ!」
「でも…ほら、足音みたいなのが……」
2人で振り向いたら奥の方から何かがヨロヨロと近づいてくる。そいつはどう見ても死体…役の男。
血だらけの腕を伸ばして頭には汚れた包帯を巻いて訳わかんねぇ呻き声を上げながら俺達に向かってきた。
「うわ……なかなかリアルだな、ま…」
「いやああああぁーっ!誰か助けてぇっ!!」
それを見た途端、今までで1番怖かったのか牧野は急に走り出した。でもここは監禁部屋だから出口がない。
多分、こういうのは一定時間過ぎなきゃ開かないんだろうけど、牧野は我慢出来なくて手当たり次第にそこら中のドアと壁に体当たりを始めた!
「おい牧野、そんなにしなくてももうすぐ出られるから落ち着け!」
「やだやだ!ここから出るぅ~!誰か出してぇ!!」
「わかったから!一番近いリタイヤの出口探してやるからそこまで騒ぐな!」
「ぎゃああーっ!何かが触ったぁ!!」
牧野の後ろにはさっきの男が迫ってきていて、軽くこいつの腕を触ったのかもしれない。
もの凄い勢いで飛び跳ねたかと思うとその男が出てきた方向に向かって突っ走り、ガタン!と大きな音を立てて何処かのドアを突き破った。
嘘……セットを壊したのか?
俺の横の死体までが唖然としてる。
その死体に「悪かったな」って声をかけて牧野が消えて行った暗闇に向かって歩いて行った。
牧野が消えたところは本当なら仕掛け人が出てくるところなんだろう、そこには小さな電気がついてて少しだけ明るかった。
そこの床に牧野は呆然と座ってて、デカい目を見開いてやがった。
「……アホか!何やってんだよ。…お前、お化け屋敷とか全然ダメなんじゃねぇか!」
「だってぇ…こんなに怖いとは思わなかったんだもん…」
「でも、ここはなんだろ。小道具の部屋かな」
「これ本物の手術台かな?こんなに包帯もあるし病院で見掛けるものが沢山ある…お医者さんごっこが出来そうだね!」
「……」
遠くで次のグループの叫び声が聞こえてきた。
それを聞いてビクッとした牧野に手を差し出すと、ホッとしたようにそれを掴んで立ち上がった。
鹿児島より東京の方が暑くね?って思うぐらい暑い。
そんな中で牧野はまた俺のベッドに寝転んでスマホを覗き込んでいる。
今日の服はチューブトップに短パン。一応落ちないようにと首に紐で結ぶようになってるタイプ。
このタイプの服は程よく胸がないと困るんだよな。
胸がデカすぎるとズレてすぐにはみ出るし、なさ過ぎると気が付いたら落ちてる……牧野の場合こっちだけど。
「今度は何見てるんだよ。またどっか行きたいのか?」
「うん……実はね、桜子がいいとこあるって言ってたの。どれかなぁ~って思って」
「三条が?またとんでもねぇ場所じゃねぇの?国内か?」
「うん!割と東京から近いらしいよ……あっ!ここかな?」
「どれだ?」
牧野がスマホの画面を俺の方に向けて、そこに出されてた画像は……お化け屋敷?!
今度はお化け屋敷に行きたいのかっ?!
しかもここには日本一怖いと評判の…て書いてある。日本一怖い…そんなお化け屋敷にこいつが入れるのか?
大声出して化けてる従業員殴って逃げるのがオチじゃねぇの?
「お前、入ってからちゃんと最後まで行ける自信があんのかよ。よく読んだのか?日本一怖いって書いてんだぞ?」
「うん!多分大丈夫!子供の時も泣いちゃう進を抱えて出てきたし、中学の時も震える優紀をおんぶして出てきたもん!」
「・・・何処のお化け屋敷だ?」
「ん?夏祭りの特設会場」
……アホか!規模か違うじゃねぇか!
それぐらいで何でこのアトラクションをクリアする自信が出てくるんだ?
「ねぇ~!今度の日曜日バイトが休みだから行こうよ~!」
「やだね。この前鹿児島に行ったばっかじゃん。部屋でゆっくり……もっと楽しめることあるんじゃね?」
「え~っ!!だってあれはあれは……全然、りょ、旅行じゃなかったじゃん!もっとさ…こう外で元気よく…」
「あれ?その割にはお前…すっげぇ積極的だったよな?いきなり咥えるからマジで焦ったわ!」
「ち~が~う~っ!あれ、あれは…西門さんが意地悪するからだよ!」
「へぇ、意地悪くしたらエロくなるのか?つくしちゃんは!」
こいつの首に結ばれてる紐が俺の手で解かれてるのに気が付いてない。
足をパタパタさせてるから俺に足の裏が丸見え。そこを指でスーッと触ると「ぎゃああーっ!」って身体を反転させた。
そしてその時に簡単にズレ落ちたトップスにも「うわあーっ!」っと色気のねぇ声で大騒ぎ。
「くくっ…連れてってやろうか?」
「えっ?!ホントに?」
「あぁ、その代わり……先に俺を楽しませて?」
今日もまた陽の高いうちからベッドの上で大暴れ。
「もうだめぇ…!」なんて言葉は完全無視して2ラウンドぶっ続けでこいつをノックダウンさせてしまった。
***********
そして日曜日。
例の如く牧野は今日も元気よく西門にやってきた。
行くところがお化け屋敷ってのに信じられないぐらいのハイテンション。本当にこのノリで日本一怖いってヤツを制覇出来るんだろうな?
俺は世界一怖いヤツを生で長いこと見てるからこんなものでビビったりはしねぇけど。
行き先は富士○ハイランド……東京から車で約2時間掛けてそこに行ったが、こんなアトラクションなのに既に何人か並んでて、そいつら殆どが嫌そうな顔してやがる。
嫌なら入らなきゃいいのに…って横を見たらリタイヤって書かれた扉から数人が出てきてその場で倒れてた。
マジか……面倒臭そうだな…。
って入る前からぐったりな俺の服をツンツン引っ張って「ワクワクするね!」……その顔、今だけだと思うけど。
「ねぇねぇ!お化けに追いかけられるのが苦手な人のために”お化けが寄ってこないお守り”が売られてるんだって!買ってこようかなぁ…」
「…入る意味がねぇじゃん」
「だよね!」
どうやらここの設定は”病院”……心霊体験をするには最適って訳か?
牧野が興奮して話すのを聞いたらここの小道具は殆どが実際に医療現場で使われていたものらしくて消毒液の匂いまで再現してるんだと。
「凄いよねぇ、絶対に怖いよねぇ~、時間は1時間ぐらいかかるらしいよ」
「……1時間もこんな中にいんのかよ…」
「西門さん、平気?私を置いて先に逃げないよね?」
「そりゃわかんねぇな。色っぽい幽霊が出てきたら追いかけるかもよ?」
「……バッカじゃないの?!」
「くくっ!」
そして俺達の順番になって、すでに腰が曲がった牧野を連れて入ることになった。
よくわかんねぇストーリーだけどどうやら”過去に事件があった病院の廃業後、迷い込んだ人間”ってのが俺達らしい。
薄暗い廊下を進んでいたら何処かから声が聞こえた。
『……なんで来たの?』『……ここには来ちゃダメ……』
「ぎゃあああーっ!!西門さん、何か言った?何か聞こえた?!」
「……アナウンスだろ?子供の声で」
まだ入って数分なのに既に俺の袖が引き千切られそう……間違いなくリタイアで早く出られると確信した。
その後も牧野の声の方が恐ろしいってぐらい館内に響いた。
「きゃああぁーっ!何処かで赤ちゃんが泣いてるーっ!!」
「うわああっ!ロッカーがガンガン鳴ったーっ!」
「ひえぇ~!!これって血だよ!血だよ!血がこんなに飛び散ってるよーっ!」
「ぎゃあっ!何かが吊されてるっ!西門さん、あそこ、あそこーっ!!」
「……そりゃホラーハウスだからな」
こいつの声で耳がキーーーン、とする。何処だ、リタイアの扉はっ!!
そのうち視界をすべて奪われる”暗黒通路”ってところに来てここでも牧野は『見えないーっ!』を連発。当たり前だっての。
トドメの逃げ場のない”監禁部屋”ってところに来たら、入った瞬間扉が閉められた。
「……なに?ここ、なんなの?西門さん!」
「知るかよ。ってか何か聞こえねぇか?」
「やだやだ!変な事言わないでよっ!」
「でも…ほら、足音みたいなのが……」
2人で振り向いたら奥の方から何かがヨロヨロと近づいてくる。そいつはどう見ても死体…役の男。
血だらけの腕を伸ばして頭には汚れた包帯を巻いて訳わかんねぇ呻き声を上げながら俺達に向かってきた。
「うわ……なかなかリアルだな、ま…」
「いやああああぁーっ!誰か助けてぇっ!!」
それを見た途端、今までで1番怖かったのか牧野は急に走り出した。でもここは監禁部屋だから出口がない。
多分、こういうのは一定時間過ぎなきゃ開かないんだろうけど、牧野は我慢出来なくて手当たり次第にそこら中のドアと壁に体当たりを始めた!
「おい牧野、そんなにしなくてももうすぐ出られるから落ち着け!」
「やだやだ!ここから出るぅ~!誰か出してぇ!!」
「わかったから!一番近いリタイヤの出口探してやるからそこまで騒ぐな!」
「ぎゃああーっ!何かが触ったぁ!!」
牧野の後ろにはさっきの男が迫ってきていて、軽くこいつの腕を触ったのかもしれない。
もの凄い勢いで飛び跳ねたかと思うとその男が出てきた方向に向かって突っ走り、ガタン!と大きな音を立てて何処かのドアを突き破った。
嘘……セットを壊したのか?
俺の横の死体までが唖然としてる。
その死体に「悪かったな」って声をかけて牧野が消えて行った暗闇に向かって歩いて行った。
牧野が消えたところは本当なら仕掛け人が出てくるところなんだろう、そこには小さな電気がついてて少しだけ明るかった。
そこの床に牧野は呆然と座ってて、デカい目を見開いてやがった。
「……アホか!何やってんだよ。…お前、お化け屋敷とか全然ダメなんじゃねぇか!」
「だってぇ…こんなに怖いとは思わなかったんだもん…」
「でも、ここはなんだろ。小道具の部屋かな」
「これ本物の手術台かな?こんなに包帯もあるし病院で見掛けるものが沢山ある…お医者さんごっこが出来そうだね!」
「……」
遠くで次のグループの叫び声が聞こえてきた。
それを聞いてビクッとした牧野に手を差し出すと、ホッとしたようにそれを掴んで立ち上がった。
- 関連記事
-
- つんつん
- 星降るキャンプでお疲れSummer 後編 by asu
- 星降るキャンプでお疲れSummer 前編 by plumeria
- 恐怖の館でお疲れSummer 後編 by asu
- 恐怖の館でお疲れSummer 前編 by plumeria さま
- 南の浜辺でお疲れSummer後編 by asu
- 南の浜辺でお疲れSummer 前編 by plumeriaさま
スポンサーサイト