つんつん
いつも色々お付き合いいただいてありがとう♡
夏の思い出!
とっても楽しかったです🎶
今度は、冬?
うふふ
楽しみにしてまーす
で、袖の下w
あの日あの時……なんでそんな事をしたんだろう?
つんつん
前に座る女の肩を突けば、女は盛大に俺の方を振り返った。
プスリっ
位置を変えた俺の指が、見事なほどに食い込んだ。
まぁ、なんだ、クリーンヒットって奴だった。
あまりの見事さに、「ほぉ」と間抜けな感嘆を漏らしたほどだ。
「えっ? なっ、なに? えっ」
女の口から出たのは驚きの声。そりゃそうだよな。見ず知らずの野郎から突然に肩を突かれ頬をプスリとされれば、こんな声が出るやな。やけに納得しながら、全ての事が霞んじまって、女なら誰もが見惚れるような笑顔を浮かべて女の目を見た。
3、2、1
女は恋の魔法にかかる筈だった。
なのに……女の口が紡いだ言葉は
「…キモっ…間違えといて……
笑顔って……マジないわ」
呟くように小さい声だったが、ハッキリとそう言い切った。
大きな銅鑼を耳の真横で叩かれたような衝撃が走り、諸々の恥ずかしさが、腹の底からグゥッとこみ上げてきた。
「ワリィ 知り合いと間違えた」
視線をゆっくり外しながら呟けば、女は興味なさげに軽く頷いてからクルリと前を向いた。
黒髪がサラサラと揺れて、甘い香りが鼻腔をくすぐった。
靡かない女の名前は、“牧野つくし” と言った。
「総二郎さ〜ま〜」
今日も今日とて当たり前のように、女達が寄ってくる。ソフトコンシャスに身を包んだ女達は、一様に同じような容姿をして、同じように俺の周りに侍い、お互いにお互いを牽制しあってい
た。
俺に興味の無さそうな振りをする女だって、俺が笑いかければ、頬を染め恥ずかしそうに俯き、次の日から遠巻きに俺を見つめた。
なのに……牧野つくしは、一ミリも俺を気にしない。
こんなにも……
っん? こんなにも? ぷるりと頭を振り雑念を追い払う。
この頃の俺はおかしい。気がつくと、牧野つくしを目で追っているのだ。いや、それどころか……目にしなくとも何かと考えちまってる。
靡かない女が気になるだけ……だよな?
あぁ、そうだ。間違いない。どこにでも居そうな普通の女じゃないか。
そう結論づけながら……次の瞬間には、牧野つくしの事を考えてんだ。
「「ハァッー」」
ため息がシンクロして、驚きながら顔を上げれば……
「えぇ〜 バイト先、二つともなくなるの?」
「正確には、四つ……ともか…な…」
「えっ 全部じゃん」
「うん。そうなのよ。女将さんとマスター再婚して、家族みんなでニューヨークに移住するんだって」
「ありゃ。カテキョのバイトもかぁ
つくしが二人を引き合わせたんだったよね?」
「うん…。二人がくっつくのは、おめでたい事なんだけどね。まさかのバイト全滅でトホホッよ」
「頑張って、新しいバイト決めなきゃだねっ
私もチェックしとくね 」
「うぅーーー ぷるちゃ〜ん ありがとうね」
そんな話しが聞こえてきた。
あっ? あぁ、そうだよ。耳をダンボにして聞いてたさ。
はぁっ? なんでかって?
俺に惚れさせる。
惚れさせる?
あぁ、このままじゃモテ男としてのプライドに関わる。
あぁ、そうだ。それだけだ。
牧野つくしの現在のバイト先の店主に新しいバイト先として西門を紹介させるように持っていった。
で……
「はじめまして 牧野つくしです。
これからどうぞ宜しくお願い致します」
真っ直ぐに俺の目を見て、そう言った。
アリエねぇ事に、牧野つくしは俺のことなんて全く覚えてなかったんだ。
ハハッ
情けない笑い声しか出なかった。
三年後
黙々と働く牧野は、気付いたら西門の事務局に正社員として働いていた。
そっから五年……あははっ足掛け八年の長い間、俺は牧野を見つめ続け牧野に来る縁談をことごとく壊し、俺の特権を利用して牧野の側に居続けている。
あぁ、そうさ、俺は牧野に恋をしている。ミイラ取りがミイラになっちまった。
いや、あいつの肩を突いた瞬間から、俺はあいつに運命感じちまったんだな。
「ハァッー 若宗匠がいらっしゃったんじゃ、まったくもって、私が目立ちませんから」
「目立つ必要ねぇだろうよ」
「いやっ、私、牧野も適齢期ですので、そろそろ彼氏の一人でもと思っていますので」
「俺が居んじゃん」
「ハハッ 次期お家元と一介の事務員があり得ませんよ」
ニッコリ笑って口にして、あろう事か、俺の前を歩いてく。
真っ白なうなじが目に飛び込んで
つんつん
思わず、うなじを突っついた。
牧野は振り向きもせず
「突っつかないでください」
固い声だけを返してきた。
俺は、もう一度、牧野の白いうなじを突く。
コッチを見ろよと思いを込めて……何度も突く
つんつん
つんつん
つんつん
「もう、つつかないの!」
そう言って振り向いた牧野は、泣いてんのか笑ってんのかわかんねぇ、微妙な顔してた。
伊達に女にモテてきたわけじゃねぇ。女心は手に取るようにわかる。
振り向いた牧野を力一杯抱きしめて、人混みの中で口づけをした。
つんつん
つんつん
つんつん
「もぉー 突っつかないの」
柔らかく微笑みながら、大きな腹を摩るつくしが横にいる。
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