夢かうつつか……愛し愛され ちゃぷん……ちゃぷん 第二話


「坊っちゃま、坊っちゃま」
坊っちゃま?
今の俺を坊っちゃまなんて呼ぶのは、誰だ?寝惚け眼で見てみれば
「っん?……つ…くし?
お、お、お前、ど、ど、どうした、その格好?」
「はぁっ?」
怪訝そうに眉を顰めながら、メイド服着たつくしが立っている。ご丁寧に猫耳まで付けて。
って ……もしや、サプライズ誕プレか?
ハハァーン、三条あたりの入れ知恵ってやつだな。
こいつ、たまに思い切ったことやんだよな。
に、しても……猫耳とはな。クゥーっ 可愛いじゃねぇか。
ウンウンと一人頷けば
「坊ちゃま、お目覚めになられましたか?」
なんだ、なんだ、やけに馬鹿丁寧じゃねぇか。さては、コスプレだけじゃなく、メイドプレイか?
そう言うことなら、俺も合わせてやらなきゃだな
「あぁ」
「よくお眠りになられましたか?」
そんな事を話しながら、ベッドの横に移動してくる。
っん? こりゃまた随分と積極的だな。
ナイス 三条!
「坊っちゃま、私、牧野つくし……」
おっ いきなり自己紹介して何のつもりだ?
「……自己紹介では御座いません。
坊っちゃまが先程からブツブツ独り言をおっしゃっておりましたので、ご注意申し上げて宜しいものかどうか悩んでいただけで御座います」
「ブツブツ独り言って……そりゃ つくしだろうが」
思わず言葉が出れば、コレでもかと言うほどに眉根を寄せて
「私、牧野つくし、心に思うことは多々ございましても、独り言を言う癖は御座いませんので」
フンっ と音が出そうな鼻息を一つ鳴らして、掛け布団を剥が……って、おぉーーーー おまっ お前、そんなダイレクトに実力行使って、す、す、スゲェな。向かう所敵なし百戦錬磨のモテ男だった筈なのに……焦った俺、不甲斐ない事に、初めての口付けを待つ女子高生のように目を瞑っちまった。
「坊っちゃま、二度寝禁止です」
いやいや、二度寝じゃないぞ。これは恋する乙女心ってヤツだぞ。まぁ、俺は、乙女じゃなくて男だけどな。
ひんやりとした物体が唇に触れる。
ゴクリと唾を飲み込み、薄目を開ければ、口元には真っ赤な苺。
「なっ、なんだ」
「何って、おめざで御座います。
坊っちゃま、苺お好きでございましょ?」
おめざ……って、いつの話してんだ。そりゃぁ、ガキの頃は脳の栄養補給だって言って食ったけどよ。今のおめざは、苺よりも、ホラっなんだ、お前のが良いやな。
なんて事を考えているのにだ、ほらほらと真っ赤に光る苺が俺の目の前でリズミカルに揺れている。
パクリッ
思わず食らいつけば
「美味しゅうございますでしょ」
つくしは満面の笑みを浮かべて、俺を見る。
ドキンッ
ったぁーーー 可愛い
上半分は覚醒した!
次、下半分いってみっか!
「つくしぃ」
手を伸ばし名前を呼べば、つくしは手を広げて、俺を抱き……抱き……抱き……上げた
「本当に甘えん坊さんですねー」
ちょっ、ちょっ、ちょっと待て……お、お、お、俺の身体、小さくなってやがる
サプライズ?
いや、いや、いや、魔法使いじゃあるまいし、こんなサプライズなんてあるワケねぇよな。
じゃあ なんなんだ。
頭の中がこんがらがってくる。なのに……つくしのふくよかな……いや、小せぇ胸が心地いい。俺の頬はフニャァと蕩けていく。
いや、蕩けてる場合じゃねぇ。
「あらっ、坊っちゃま、どうされましたか?」
どうしたもこうしたも、俺、小さくなってんだ。
そう叫ぼうとした瞬間
「お耳まで、こんな垂れちゃって」
つくしの指先が俺の耳が在るはずのない場所に触れて、そう言った。
「ニャーーー」
俺は、叫び声と共に目を閉じた。

12.03.00:00〜
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