明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

ネクタール 07 つかつく

目的の場所についても眠る牧野を見つめていたくて、エンジンをつけたまま停車していた。

眠る牧野は、俺の願望がそう見せるのか……なんだかとっても幸せそうで満ち足りた顔をしていた。その顔を見つめれば、心の奥底からなんとも言えない気持ちが湧いてくる。

フワフワとして甘く蕩けそうで、なのに……なんだか、涙が出そうで……って

「……ったぁ、俺、まったくもってイカれてんな」

恥ずかしくなって……ハンドルにうっぷした途端


プーーー

クラクションの音が大きく鳴り響いた。慌ててハンドルから頭を上げれば、心底驚いた顔した牧野が俺を見た。

「えっ? あっ? あれっ?
な、な、なんで?

あぁーーーーーー」

大きい声で一声叫んだあとに、一人の世界に突入した牧野は、ブツブツとなにやら言い出した。

〝ぁぁ、なんで、あたし、寝ちゃうかな
司さん……無神経な女だって、きっと呆れたよね?
ぁぁ、涎とか垂れてないよね?〟

手の甲でゴシゴシと顔を擦ったあとに

〝……牧野つくし……一生の不覚でござる〟

ガックリと肩を落として俯いた。

「ござるって……牧野、お前、猿だったのか?」

ひっくり返った声でそう聞けば

「へっ?」

牧野は、ひょっとこみたいな顔しながら俺を見上げた。

コイツの驚き顔は、なんともまぁ……

「マヌケだなっ」

声に出していた。

「ちょっ、マヌケって
あたしを、お猿なんて言う司さんの方がマヌケですよ」

鼻の穴をおっ広げて、俺に食って掛かってきやがった。

怒ってる女を見て、自然と顔が綻んで……あぁ、俺、コイツが居れば……何もいらねぇって気持ちに包まれた。


「なぁ、牧野、結婚してくれないか?」

するりとそんな言葉が口から出ていた。


「ぅへっ?」

目ん玉が落っこちる顔って、こう言う顔なんだろうなって思うほどに目を見開いて

「と、と、突然
って……、あぁ、これ夢!
夢なんですね
ぷぷっ、都合の良い夢だなぁ
うふふっ 夢でも幸せだなー」

蕩けそうな顔をして、ウフフと笑う。

「……夢じゃねぇよ」

耳元で囁けば

「ぷぷっ
ホント、都合のいい夢

あっ、少女漫画とかだと、よくあるよねこんなシチュエーション。で、主人公女子が自分じゃなくて相手の頬を抓るんだよね〜 で、相手が 〝あっ痛っ〟とか何とか、これまたベタなセリフを言うんだよね〜
夢かどうか確かめるのに相手を抓るって。ぷぷっ 幾ら何でもないよねー
でも、アレって、本当に夢だった場合はなんて言うん……だろう?」

唇をへの字に結び、上を見上げた牧野は、俺の頬を力一杯につねりあげた。

「あっ 痛っ」

不意打ちの驚きに、物質的な痛さが加わって、牧野が言う所のベタなセリフそのままを口にしていた。

「うわっ そのまんまだ」

そう発した後に、俺の頬と引っ込めた指先を交互に見てから、うーーーんと唸りをあげ、もう一度手を伸ばしてきた。

夢を見ていると言う妄想から牧野を覚ます……いや、正直に言うとあまりの頬の痛みに……条件反射的に牧野の手を掴み上げ、反対の指で牧野の頬を抓ってた。

「あっ 痛っ」

同じセリフが牧野の唇からこぼれ、掴んでいない方の指先で頬を撫でている。

しばしの沈黙の後……

「ギャーー
ど、ど、どうしよう
ゆ、ゆ……め……なのに、痛い
痛いのぉ
こ、こ、こんなの、想定外」

大きな叫び声と共に、頬を撫でていた指先がワシャワシャと髪の毛を掻きむしっていた。
綺麗に結ばれていた筈の髪が、みるも無残なざんばら髪に変わり、牧野の顔を覆い尽くしている。

ソレが、ガキの頃見た何かに似ていて、何だっけかなコレ?と暫く考えた。
しまい込んでいた記憶が初めは朧げに、そして鮮明に蘇ってくる。

「あっ、総二郎の屋敷の蔵に居た妖怪蔵ぼっこ!」

あの日……総二郎の屋敷の庭でかくれんぼをしていた俺は、いい隠れ場所を見つけたと、蔵の扉を開けたんだ。その瞬間、長い黒髪で覆われた蔵ぼっこが突如現れたんだ。
不意打ちを食らった俺は、ビビリにビビってちびった。恐怖と恥ずかしさと誰にもバレたくなくて……後ろも見ずに逃げ帰った。

どんなに皆んなに誘われても、あの日から俺は総二郎の家に行けなくなったんだっけな。

感慨に浸る俺に

「総二郎って、総二郎って……トウの事?
えっ、そんなワケないよ……ね?」

牧野の大きな瞳の視線が注がれた。




お久しぶりでございます
今年もどうぞよろしくお願いいたします(^^)
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2 Comments

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2019/01/19 (Sat) 11:07 | EDIT | REPLY |   

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2019/01/11 (Fri) 19:59 | EDIT | REPLY |   

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