まだ気づかない01 類つく
「うわっ
虹 虹ですよ専務!
しかもダブルレインボーですよ。
ダブルレインボーって幸運の象徴なんですよ。
専務、今日は間違いなくついてますよ!ラッキーデイです。一緒に宝くじ買いましょう。宝くじ
えっ? いらないんですかぁ。
えぇー残念! 買う時半分。当たれば一儲け出来るかと思ったんですけどね
チッ 残念
あっ、冗談ですって、冗談。
それより、虹って言えばですね、小さな頃、繰り返し繰り返し同じ虹の夢を見てたんですよ。
あまりに繰り返し見るものだから、この夢はきっと大事な夢なんだ!しっかり覚えておこうって思ったんですけどねぇー
小さなあたしの頭の中は、いろんなことを覚えるのに忙しくって、夢のことまで詳しくなんて覚えていられなかったんですよね。
そりゃそうですよ。夢よりも現実。
コレ大事ですから。
うんっ ほんとうに。
えっ?
ならなんかに書き留めておけばよかったんだ……ですか?
ハハッ今のあたしなら間違いなく書き留めますよ。
うんっ。間違いなくですよ。
ですけど、……小さな頃に、そこまで頭が回るものじゃないですって。
俺は書き留めてた?って
あははっ そりゃ偉いですね。本当に、ご立派、ご立派!
ふざけてるな!ですか?
ワタクシ牧野つくしふざけてなんかいません。牧野つくし27才の辞書に目上の者にふざけた態度を取る!なんて事は、一行たり、いいえ、一文字たりとも書かれてませんから。
流石、専務!
ご幼少の頃から、あたし達凡人とは、頭の出来が違います。偉いですねぇー、賢いですねーって、褒めてるんですよ。
感心するを通り越してもう尊敬のあたいです!
ですので、はいっ コチラとコチラお願い致します。
あっ、寝ないでくださいよ。夢は夜に見てくださればいいんですから。
では 失礼致します」
喋るだけ喋って、図々しい態度とは裏腹な美しい所作でお辞儀して牧野は、部屋を後にした。
「はぁっー」
大きなため息を一つしてから、牧野が出て行ったドア、堆く積んでった書類の山、飾っていった花を順繰りに見た。
「俺なんでアイツを入れたんだっけ?」
独り言とも言えない大きな独り言を呟いてから、クルリと椅子を回して立ち上がる。
「うーん なんでだっけ?
まっ、牧野がいると退屈しなくていいんだけどね」
類は、牧野との出会いを思い起こす。受験で英徳にやってきた牧野が、類のいつもの定位置で昼寝してたのが最初の出会いだ。
チャイムが鳴っても気持ちよさそうに寝ていて、いつのまにか釣られて類も寝ていた。起きたらすっかり夕暮れで……カラスがカァカァ鳴いていた。
そう言えば、その時も、なんだかごちゃごちゃ言ってたよな。なんて事を思い出す。
午後の試験受けれなかっただ。学園内が広すぎて迷子になるだ。果ては、なんでお越してくれなかったんだのなんだの。すごくよく喋ってた事を。
媚も売らずによく喋る牧野が物珍しくて、類はジッと牧野の話を聞いてから
「…もう一度、試験受けさせて貰うようにしてあげようか?」
珍しく、そんな事を聞いていた。牧野は大きく頭を振り
「いい、いい。よく考えたら、ママが見栄はるのに受けさせたかっただけだからさ、お金も勿体無いし、都立に行く」
立ち上がり、パンッパンッとスカートを二つ叩いてから、
「じゃっ」
と言って、夕闇に消えてった。
次の出会いは、藤堂静の写る特大ポスターの前。静のポスターに口付けを落とそうとした、まさにその瞬間だ
「アイツ、ポスター泥棒したんだっけよな」
プッと笑って口にする。
突然の出来事に呆けてる類の目の前で巨大ポスターをクルクル巻いて、
「牧野アイ★ 参上!」とかなんとか言って去っていった。
暗闇で見た横顔は、どこかで見たことある顔で、テレビ番組のドッキリかなにかと、ついつい辺りを見回した。
静への恋心でいっぱいだった筈なのに……静を思うと、同時に「牧野アイ★参上!」のなんだか間抜けな場面を思い出して、到底シリアスな気持ちが維持できずに、長年の恋心は消え去っていった。
なんともまぁ お粗末な初恋の結末だ。と類は、思っている。
三度目は、バナナの皮を踏んづけて転ん……いや、転びそうになってバク宙して、スタッと着地して、拍手喝采の嵐の中、手を振っていた。
バナナの皮で転びそうになるのも驚きだけど、得意げに手を振ってたのには、心底驚いた。横顔を見てもう一度驚いた。あの日出会った牧野アイによく似ていたから。
類は、バナナを見ると、牧野のあの得意げな横顔を思い出す。
四度目は、花沢のマスコットキャラクターの中に入って踊っていた。とは言え、顔は着ぐるみで隠れていて、中に入っているのが男なのか女なのかも皆目わからない状態だった。
ただ、異常にノリノリのマスコット着ぐるみに唖然としながら目が離せないで、キメキメのポーズをとる最後の瞬間まで観ていた。
その様を、珍しい事があるものだとばかりに、類の周りの人間が見ていた。
あまりにも類が真剣に見てたものだから、牧野に金一封が渡された。
金一封を目の前に
「このご時世になんて気前のいい会社!」
牧野は、いたく感動し、気前のいい花沢に絶対に入ろうと固く決意した。
五度目の出会いは……フレンツェの丘。朝もやの中、黒髪の女性が葡萄の実に口づけしていた。どこか幻想的なその光景に目を奪われた。一瞬、目があった気がした。
何も考えずに、いつの間にか類は、走っていた。
彼女の居た場所に着いてみた時には……もうすでに誰も居なかった。
虹 虹ですよ専務!
しかもダブルレインボーですよ。
ダブルレインボーって幸運の象徴なんですよ。
専務、今日は間違いなくついてますよ!ラッキーデイです。一緒に宝くじ買いましょう。宝くじ
えっ? いらないんですかぁ。
えぇー残念! 買う時半分。当たれば一儲け出来るかと思ったんですけどね
チッ 残念
あっ、冗談ですって、冗談。
それより、虹って言えばですね、小さな頃、繰り返し繰り返し同じ虹の夢を見てたんですよ。
あまりに繰り返し見るものだから、この夢はきっと大事な夢なんだ!しっかり覚えておこうって思ったんですけどねぇー
小さなあたしの頭の中は、いろんなことを覚えるのに忙しくって、夢のことまで詳しくなんて覚えていられなかったんですよね。
そりゃそうですよ。夢よりも現実。
コレ大事ですから。
うんっ ほんとうに。
えっ?
ならなんかに書き留めておけばよかったんだ……ですか?
ハハッ今のあたしなら間違いなく書き留めますよ。
うんっ。間違いなくですよ。
ですけど、……小さな頃に、そこまで頭が回るものじゃないですって。
俺は書き留めてた?って
あははっ そりゃ偉いですね。本当に、ご立派、ご立派!
ふざけてるな!ですか?
ワタクシ牧野つくしふざけてなんかいません。牧野つくし27才の辞書に目上の者にふざけた態度を取る!なんて事は、一行たり、いいえ、一文字たりとも書かれてませんから。
流石、専務!
ご幼少の頃から、あたし達凡人とは、頭の出来が違います。偉いですねぇー、賢いですねーって、褒めてるんですよ。
感心するを通り越してもう尊敬のあたいです!
ですので、はいっ コチラとコチラお願い致します。
あっ、寝ないでくださいよ。夢は夜に見てくださればいいんですから。
では 失礼致します」
喋るだけ喋って、図々しい態度とは裏腹な美しい所作でお辞儀して牧野は、部屋を後にした。
「はぁっー」
大きなため息を一つしてから、牧野が出て行ったドア、堆く積んでった書類の山、飾っていった花を順繰りに見た。
「俺なんでアイツを入れたんだっけ?」
独り言とも言えない大きな独り言を呟いてから、クルリと椅子を回して立ち上がる。
「うーん なんでだっけ?
まっ、牧野がいると退屈しなくていいんだけどね」
類は、牧野との出会いを思い起こす。受験で英徳にやってきた牧野が、類のいつもの定位置で昼寝してたのが最初の出会いだ。
チャイムが鳴っても気持ちよさそうに寝ていて、いつのまにか釣られて類も寝ていた。起きたらすっかり夕暮れで……カラスがカァカァ鳴いていた。
そう言えば、その時も、なんだかごちゃごちゃ言ってたよな。なんて事を思い出す。
午後の試験受けれなかっただ。学園内が広すぎて迷子になるだ。果ては、なんでお越してくれなかったんだのなんだの。すごくよく喋ってた事を。
媚も売らずによく喋る牧野が物珍しくて、類はジッと牧野の話を聞いてから
「…もう一度、試験受けさせて貰うようにしてあげようか?」
珍しく、そんな事を聞いていた。牧野は大きく頭を振り
「いい、いい。よく考えたら、ママが見栄はるのに受けさせたかっただけだからさ、お金も勿体無いし、都立に行く」
立ち上がり、パンッパンッとスカートを二つ叩いてから、
「じゃっ」
と言って、夕闇に消えてった。
次の出会いは、藤堂静の写る特大ポスターの前。静のポスターに口付けを落とそうとした、まさにその瞬間だ
「アイツ、ポスター泥棒したんだっけよな」
プッと笑って口にする。
突然の出来事に呆けてる類の目の前で巨大ポスターをクルクル巻いて、
「牧野アイ★ 参上!」とかなんとか言って去っていった。
暗闇で見た横顔は、どこかで見たことある顔で、テレビ番組のドッキリかなにかと、ついつい辺りを見回した。
静への恋心でいっぱいだった筈なのに……静を思うと、同時に「牧野アイ★参上!」のなんだか間抜けな場面を思い出して、到底シリアスな気持ちが維持できずに、長年の恋心は消え去っていった。
なんともまぁ お粗末な初恋の結末だ。と類は、思っている。
三度目は、バナナの皮を踏んづけて転ん……いや、転びそうになってバク宙して、スタッと着地して、拍手喝采の嵐の中、手を振っていた。
バナナの皮で転びそうになるのも驚きだけど、得意げに手を振ってたのには、心底驚いた。横顔を見てもう一度驚いた。あの日出会った牧野アイによく似ていたから。
類は、バナナを見ると、牧野のあの得意げな横顔を思い出す。
四度目は、花沢のマスコットキャラクターの中に入って踊っていた。とは言え、顔は着ぐるみで隠れていて、中に入っているのが男なのか女なのかも皆目わからない状態だった。
ただ、異常にノリノリのマスコット着ぐるみに唖然としながら目が離せないで、キメキメのポーズをとる最後の瞬間まで観ていた。
その様を、珍しい事があるものだとばかりに、類の周りの人間が見ていた。
あまりにも類が真剣に見てたものだから、牧野に金一封が渡された。
金一封を目の前に
「このご時世になんて気前のいい会社!」
牧野は、いたく感動し、気前のいい花沢に絶対に入ろうと固く決意した。
五度目の出会いは……フレンツェの丘。朝もやの中、黒髪の女性が葡萄の実に口づけしていた。どこか幻想的なその光景に目を奪われた。一瞬、目があった気がした。
何も考えずに、いつの間にか類は、走っていた。
彼女の居た場所に着いてみた時には……もうすでに誰も居なかった。
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