まだ気づかない05 類つく
「ズビッ……ズビビっ 雪ちゃん気をつけて行ってきてね 元気でね」
「うんっ つくしちゃんも元気でね」
「雪ちゃん、Bedankt tot nu toe(これまでありがとう)」
「Graag gedan(どういたしまして) ……って、つくしちゃん、オランダ語、練習してくれたの?」
「……まだ挨拶くらいしか出来ないから……帰ってきたら雪ちゃん教えてね」
牧野は、大きな瞳に涙を溜めながら雪之丞を見上げる。
「そうだね……でも……類さんにオランダ語習って、遊びにおいでよ」
雪之丞はフワリと微笑むと、つくしをギュッと抱きしめ、耳許でささやく。
「Ik wil je meenemen.
…………maar
Ik hoop dat jullie liefde goed gaat.
(君を連れ去りたいな。
…………でも、二人の幸せを祈ってるよ)」
「雪ちゃん、いま、なんて言ったの?」
「うん?つくしちゃんの幸せを祈ってるよって言ったんだよ」
「そうなんだ。
あたしも、あたしも雪ちゃんの幸せを祈ってるね」
雪之丞は、名残り惜しそうに牧野から身体を離すと
「ありがとう。
類さん、つくしちゃんのこと宜しくね。それと……あんまり虐めないであげてね。
じゃぁ行って来るね」
片手をあげ、搭乗ゲートへと去って行った。
飛行機が真っ青な空と同化して見えなくなっても……目と鼻を真っ赤にさせながら牧野は空を見上げてた。
類は、いつもよりも小さく見える牧野の肩を抱きしめたくなった。
でも……
「牧野……不細工がより不細工になってるぞ」
憎まれ口を一つ叩いてから、ハンカチを差し出した。
「ズビッ、ズビビビッ
専務……女子力高っ」
「女子じゃない。って、牧野、鼻噛むな」
類と牧野は、日常に戻って行った。変わった事といえば、雪之丞が顔を見せないということだけだった。
雪之丞が顔を見せない事で、変わったのが牧野の周り。今まで定期的に雪之丞が顔を出す事で男避け効果があったのだが、それがなくなった事で、牧野に熱視線が注がれることになった。
「ねぇ牧野、あんたって凄いモテるんだね。びっくりだよ」
「はいっ? 私がモテる? モテるって言うのは、専務のことを言うんですよ」
「無自覚か…………
辛かった……よな」
類は、雪之丞に思いを馳せながらポツリと呟く。
「もう何なんですか?
辛いのは、私です。私。
毎日、毎日専務の会食やらパーティーやらに付き合わせられて」
「……夕食代浮くって、喜んでたのってあんただよね?」
「うっ」
「手当も付くって、小躍りしてたよね?」
「うぅっ」
雪之丞との約束を守る為、類が取った行動は、会食やらパーティーやらに牧野を付き合わせる事だった。
実際に付き合わせてみれば、専門知識を持ち合わせ語学が堪能な牧野は、至極やりやすい。
「……でも専務、ダンスのレッスンやらお茶のお稽古は意味がわからないんですけど」
「ダンスは、パーティーに必要。お茶は、日本の伝統文化だ」
「伝統文化だ。って、お抹茶にミルク入れてくれって仰る専務に言われても、説得力ないですけどね」
「コホンッ」
「ご都合が悪くなられると咳払いでらっしゃいますか?」
「ねぇ牧野、絶対にミルク抹茶にした方が、世界中の人に愛されると思わない?」
「西門の若宗匠に叱られますから」
「総二郎は、頭堅いんだよ」
類の言葉につくしは首を振り
「専務、日本の伝統文化は大事になさいませんと……ハァッー」
呆れたように息を吐けば、
「あんたもそう思うなら、好都合だね」
類は我が意を得たとばかりにニヤリと笑う。
二つ目の季節が終わる頃、
花沢専務は秘書の牧野と熱愛中だと……
人々の噂にのぼるようになっていた。
二人は、まだ気づかない。
「うんっ つくしちゃんも元気でね」
「雪ちゃん、Bedankt tot nu toe(これまでありがとう)」
「Graag gedan(どういたしまして) ……って、つくしちゃん、オランダ語、練習してくれたの?」
「……まだ挨拶くらいしか出来ないから……帰ってきたら雪ちゃん教えてね」
牧野は、大きな瞳に涙を溜めながら雪之丞を見上げる。
「そうだね……でも……類さんにオランダ語習って、遊びにおいでよ」
雪之丞はフワリと微笑むと、つくしをギュッと抱きしめ、耳許でささやく。
「Ik wil je meenemen.
…………maar
Ik hoop dat jullie liefde goed gaat.
(君を連れ去りたいな。
…………でも、二人の幸せを祈ってるよ)」
「雪ちゃん、いま、なんて言ったの?」
「うん?つくしちゃんの幸せを祈ってるよって言ったんだよ」
「そうなんだ。
あたしも、あたしも雪ちゃんの幸せを祈ってるね」
雪之丞は、名残り惜しそうに牧野から身体を離すと
「ありがとう。
類さん、つくしちゃんのこと宜しくね。それと……あんまり虐めないであげてね。
じゃぁ行って来るね」
片手をあげ、搭乗ゲートへと去って行った。
飛行機が真っ青な空と同化して見えなくなっても……目と鼻を真っ赤にさせながら牧野は空を見上げてた。
類は、いつもよりも小さく見える牧野の肩を抱きしめたくなった。
でも……
「牧野……不細工がより不細工になってるぞ」
憎まれ口を一つ叩いてから、ハンカチを差し出した。
「ズビッ、ズビビビッ
専務……女子力高っ」
「女子じゃない。って、牧野、鼻噛むな」
類と牧野は、日常に戻って行った。変わった事といえば、雪之丞が顔を見せないということだけだった。
雪之丞が顔を見せない事で、変わったのが牧野の周り。今まで定期的に雪之丞が顔を出す事で男避け効果があったのだが、それがなくなった事で、牧野に熱視線が注がれることになった。
「ねぇ牧野、あんたって凄いモテるんだね。びっくりだよ」
「はいっ? 私がモテる? モテるって言うのは、専務のことを言うんですよ」
「無自覚か…………
辛かった……よな」
類は、雪之丞に思いを馳せながらポツリと呟く。
「もう何なんですか?
辛いのは、私です。私。
毎日、毎日専務の会食やらパーティーやらに付き合わせられて」
「……夕食代浮くって、喜んでたのってあんただよね?」
「うっ」
「手当も付くって、小躍りしてたよね?」
「うぅっ」
雪之丞との約束を守る為、類が取った行動は、会食やらパーティーやらに牧野を付き合わせる事だった。
実際に付き合わせてみれば、専門知識を持ち合わせ語学が堪能な牧野は、至極やりやすい。
「……でも専務、ダンスのレッスンやらお茶のお稽古は意味がわからないんですけど」
「ダンスは、パーティーに必要。お茶は、日本の伝統文化だ」
「伝統文化だ。って、お抹茶にミルク入れてくれって仰る専務に言われても、説得力ないですけどね」
「コホンッ」
「ご都合が悪くなられると咳払いでらっしゃいますか?」
「ねぇ牧野、絶対にミルク抹茶にした方が、世界中の人に愛されると思わない?」
「西門の若宗匠に叱られますから」
「総二郎は、頭堅いんだよ」
類の言葉につくしは首を振り
「専務、日本の伝統文化は大事になさいませんと……ハァッー」
呆れたように息を吐けば、
「あんたもそう思うなら、好都合だね」
類は我が意を得たとばかりにニヤリと笑う。
二つ目の季節が終わる頃、
花沢専務は秘書の牧野と熱愛中だと……
人々の噂にのぼるようになっていた。
二人は、まだ気づかない。
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