明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

まだ気づかない09

眠ろうと思えば思うほどに目が冴えて眠れずに、何度も何度も寝返りを打った。オス鳥が求愛の歌を歌い出す頃、漸く眠りについた。

漸くついた眠りの中で_______類は夢を見た。


フィレンツェの丘でいつか見た彼女が、黒髪を揺らしながら振り向く。

あの時見えなかった彼女の顔が何故か_______牧野になっていて、あどけない表情の中に色香を纏わせて微笑みながら駆け出してくる。

嬉しくなって、両手を広げ抱きしめようとした、今まさにの瞬間……それは自分にむけてではなく、自分の後ろいた男に向けて駆け出したのだと知る。


夢の中で類は、肩透かしから受けた恥ずかしさではなく、愛おしいものを他の誰にも渡したくない激情に包まれる。


「……だめだ。行くな」

自分の叫び声で目が覚めた。



「専務_______清々しい1日が始まったばかりで、流石にその生欠伸は如何なものでしょう?」

すっかり、いつもの調子に戻った牧野に指摘され、類は、〝誰のせいだ〟と喉元まで出かかった言葉を慌てて飲み込んだ。

小首を傾げた牧野が類を覗き込む。黒髪がサラサラと揺れる。


「えっ」

牧野の零れ落ちそうなほどに見開かれた瞳と、素っ頓狂な声で類は我に返り

「うわっ」

無意識に髪を撫でていた手を慌てて引っ込めた。

「う、うわって……せ、せ、専務から触っておいて」

言葉を噛みまくりながら牧野が言えば

「__________ごめん」

珍しく素直に類が誤った。

「ひゃっ 
専務の口からごめんって、どっか頭でも打ったんですか?
いやっ、間違いなく打ったんですよね。熱、熱計らなきゃですよ」

「熱______は、無い」

「いやありますって」

「いやっ ない」

類の否定に

「生きてるんだから熱がないわけ無いでしょ
爬虫類だって、この部屋だったら体温ありますから」

どこか論点がずれた牧野の答えが返ってくる。

「爬虫類?」

「あっ、モノの例えですから、変温動物の例で使っただけです。あっ、因みに、いまは分類するにしてもそんな単純じゃないって言うことは知ってますんで、突っ込まないでくださいね。
_________って、そういうことじゃなくてですね……」

途中から類は、目の前で延々と喋りまくる牧野を、どうやったら止めれるんだろうと、ただそれだけを考えていた。

「_______って、専務聞いてます?
やっぱり熱でボォっとしてます?
救急車、救急車呼びましょう」

慌てた牧野の腕が類のデスクの上の受話器を取り上げた瞬間________類は、牧野の腕を掴み自分の方に引き寄せた。

バランスを崩した牧野の身体は、前につんのめり類の身体に向けて倒れ込んだ。

瞬間ぶつかる唇と唇。

「すっ、すっ、すみませんっ」

牧野は慌てて立ち上がろうとするが

「あれっ あれっ あれっ」

腰が抜けて動けない。
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