総誕イベント・愛と欲望の果て~能登でちゃぷん~第二話 byチーム類
第二話
※こちらのお話は、チーム類の合作となります
誰がどの部分を書いたのか?
想像しながらお楽しみ下さいませ…<(_ _)>
類は、つくしの姿を見つけると、急いでその横に車を近づける。
そして、助手席の窓を開けた。
「遅くなったかな?」
「ううん。 あたしも今、出てきたところ」
つくしは、慣れた手つきで類の車の助手席のドアを開けると、スルリと乗り込んだ。
そしてしっかりとシートベルトを締める。
その時、バックミラーに総二郎の姿が映る。
その焦った表情に、類は内心クスッと笑う。
「出来た?」
「うん」
つくしがシートベルトを締めたのを確認し、類はゆっくり車を発進させる。
「忙しいのに、わざわざごめんね」
「いや、誘ったのは俺の方だし。 それより、、結婚おめでと」
「あっ/// うん。 ありがと」
類は、まずお祝いの言葉を告げる。
その言葉に、つくしは照れながらも嬉しそうな表情で答えた。
その表情が見れただけでも、こうして会って良かったと類は思う。
「結婚式に出られなくてごめんな。 ちょうどワイン商戦が始まったばかりでさ」
「ううん。 類も忙しいもんね。 ずっと海外だし」
仕事が忙しかったのは事実。
だがそれよりも牧野の花嫁姿を直視できなかったという方が正しいかもしれない。
女々しいと言われるかもしれないけど、やはりまだ時間が必要だから。
「総二郎から、結婚式の写真が送られてさ。 あんた、凄く綺麗だった」
「ありがと///」
二人が微笑み合っている写真。
白無垢姿のあんたが、総二郎を見上げてた。
そして総二郎も、満面の笑みで微笑んでいた。
初めて見る二人の姿が、そこには確かにあった。
「んで、総二郎の誕生日プレゼントだろ?」
「そう。 なんでも持っているから悩んでてね」
連絡を取った時、牧野と二人っきりで会いたいと思った。
もちろん邪な考えはない。
二人の幸せを願っているのは事実。
だけど、、俺にとって牧野はやっぱり特別で、その牧野と会えるのはやっぱり至福の喜びであるのに変わりはない。
だから、総二郎の誕生日をダシに使う事を思いついた。
こうすれば、簡単に牧野と二人っきりになれると思ったから。
車の窓を少し開ける。
そして耳を凝らすと、やはり聞きなれたバイクの音が聞こえる。
クスッ…。
あいつ、かなり焦ってる。
さて、どこまで我慢できるかな?
あんな幸せそうなベストショットを送り付け、俺にとどめの一撃を加えるんだから、それなりの覚悟はしろよ。
類は、グンッとアクセルを踏み込む。
そして目的の場所へと車を走らせた。
二人を乗せた車は、郊外の大型ショップモールへと辿り着く。
様々な店舗の他、レストランやシネコン、水族館まで併設された一大施設だ。
こういった場所に縁の薄いつくしは、中に足を踏み入れた途端、目をキラキラと輝かせる。
「凄いっ! 広~い! ここならいいのが見つかるかもっ!」
「あ…でも…。その前にちょっと付き合ってくれる?」
「あっ、そうだった。ごめんね」
すまなそうに告げる類に、つくしも謝る。
この施設はこの夏オープンしたばかりで、運営は花沢物産。
類は、つくしの頼みでここに連れてくる代わりに、現地調査もしたいと告げていた。
勿論それはただの口実で、単につくしをつれ回したいだけなのだが。
「あっ、じゃあまず行くとなると…映画館かなぁ…?」
「ん」
人混みが凄いからと手を繋ぎ、シネコンの方へと足を進める。
そんな二人の後を、しっかりと総二郎が付ける。
…なんだよ…。何で映画館の方へ行くんだ…?
ん…? 映画……?
はっ! ま…まさか……?
-以外、総ちゃんの脳内妄想劇場-
つ『はぁ…素敵なシーンだなぁ…』
類『牧野』
ちゅっ❤️
つ『えっ…類、どうして…?』
類『キスしたかったから。大丈夫、周りは暗いし、誰も見てないよ』
つ『そうね…❤️』
類の右手が、つくしの胸元に…………???
ちょっと待てっ!!
そんなの駄目だろっ!!!
妄想している間に二人を見失い、慌ててその後を追う。
幸い二人は、映画館の前で何やら話していただけで、そのまま別の場所に向かうようだ。
…良かった…。映画は観ないようだな…。
…ったく…。冗談じゃねぇっ…。
…って、今度は何処に行くんだ?
首を傾げる総二郎を他所に、二人は水族館の中に入って行く。
総二郎も慌ててその後を追った。
「うわーっ! 凄いね、鰯の群れが綺麗っ!」
「…美味しそう、じゃないんだ」
「あっ、失礼ね~」
ぷうっと頬を膨らませる姿はとても人妻、それも次期家元夫人とは思えない。
少し拗ねたつくしに『ほら、あんたに似てるのがいるよ』と小さな水槽を示した。
「えっ? どれ?」
「あれ?」
つくしが水槽に顔を近付ける。
中には砂が敷き詰められているが、魚がいるようには見えない。
『ほらっ』と類も顔を近付ける。
その姿を、またも影から眺めていた総二郎は、気が気でない。
何しろ、顔を寄せ何かを見つめる二人は、今にもキスしそうなほど顔が近いのだから。
水槽に目を向けた類は、その硝子に映る総二郎の、恨みがましくこちらを見据える姿に喉を鳴らした。
「…類? どうしたの?」
「ん…なんでもない。ほら、あれ」
総二郎が後をつけてる等と微塵も思わぬつくし。
その気をそらすように、水槽を指差す。
丁度その時、砂の中からひょっこりと、細長い生き物が顔を出した。
「なっ…なにこれっ?」
「チンアナゴ」
「えっ? これがあたしに似てるの…?」
「ん。牧野みたく、小さくて可愛い」
笑顔で可愛いと言われてしまえば、それ以上怒ることなど出来ない。
『えっと…その…』と口ごもりながら、真っ赤になった。
「じゃ、そろそろ店を見てみる?」
「もう類の方はいいの?」
「ん、充分」
にこりと笑い、ショップが並ぶ方へと足を向ける。
洋服、宝飾品、バッグなどの革製品、生活雑貨、ありとあらゆる店舗が揃っていた。
「沢山あって迷っちゃうなぁ…」
「プレゼント、何にするつもりだったの?」
「う…ん…」
総二郎は基本、何でも持っているし、手に入れられる。
そんな相手に渡すとしたら、自分では買わないもの。唯一のもの。つくしにしか渡せないもの。
視線を宙にさ迷わせていたつくしの目に、とある店の品物が目に飛び込んできた。
『365日誕生石 あなたの石は?』
「ねぇねぇ、誕生石って毎日あるの?」
「……へぇ…」
「あたし、トルコ石かラピスラズリだと思ってた……類は、アクアマリンだよね?」
「……何か面白そうだね、見てみよ♪」
「うん♪」
総二郎が尾行している事は確認済み、彼女の腰に然り気無く手を置いて、
これ見よがしにエスコートした。
「……類は……エンジェル・スキン・コラールだって……綺麗な色だね」
「………ピンク色なんだけど…俺 男だよ?」
「うふふ、類に似合いそうだよ?」
**
三月三十日、エンジェル・スキン・コラール
石言葉は『変わらぬ思い』で、美しいピンク色の珊瑚の事。
天使の肌に例えられることが、名前の由来になっています。
硬度が低く、ナイフでも簡単に傷がつく為
取り扱いには十分な注意が必要。
天然ものは非常に高価な宝石で、幻の珊瑚と言われる事もある。
**
「牧野は……あ、これだ…」
「うわぁ、誕生石って青系だと思ってたから、新鮮だわ……」
「あんたの色だね♪」
**
十二月二十八日、ロードクロサイト
石言葉は『新しい愛とロマンを招く』
別名はインカローズで、薔薇色の人生を象徴する石です。
ロードクロサイトは、豊かな愛情で包まれ傷ついた心を癒してくれる。と言うエネルギーがあります。
また、ソウルメイトを引き寄せる力もあります。
**
「……えと…総のは……あ、これだ」
**
十二月三日、ホワイト・ジェダイト
石言葉は『浄化された魂』
ジェダイトとは、翡翠の事。
古代から翡翠は、お守りや魔除けとして使われてきました。
ホワイト・ジェダイトとは、白い翡翠の事で、希少価値が高く、石言葉の通り浄化された魂そのものです。
**
俺の大好きな瞳をキラキラさせて、総二郎の誕生日石の説明を読む牧野の横顔。
彼女が幸せなら、それでいい。
総二郎と結婚したとしても、こうしてこんな風に隣で幸せそうな彼女を見られるなら、
それも、いい。
……ねぇ、牧野。ずっとソウルメイトでいいよね?
あんたの誕生日石は、ソウルメイトを引き寄せるんだって、いいよね?
「ねえねえ、類。浄化された魂だってっ!
これで色々浄化されるかな?」
「ぷっ、牧野…それ、総二郎に言っちゃダメだよ?」
「これで、ストラップとか作れるかな?」
「ストラップ?」
「総は、アクセサリーって感じじゃないもん」
「成る程ね…ちょっと待ってて…」
花沢で懇意にしてるジュエリーショップに連絡して、石の確認をした。
総二郎の誕生日石 ホワイト・ジェダイト、
牧野の誕生日石 ロードクロサイト、
そして……俺のエンジェル・スキン・コラール♪♪
………在庫 あり、ラッキーだ♪♪♪
「牧野、行くよ」
「えっ、どこ?」
「石、揃ってるって♪」
再び、モール内の大理石の柱にでもへばりついて様子を伺っているだろう総二郎に見せ付けるべく、牧野をエスコートして少し小走りで外へ。
車をジュエリーショップへ走らせた。
総二郎が追って来てるだろうから、信号なんて無視したい処だが、少しだけ我慢。
曲がり角の信号では、わざと赤信号ギリギリで曲がってやった。
予約を入れたジュエリーショップで、恭しく迎えられ気後れしてるっぽい牧野をエスコートして準備されていた個室へ。
通りの向こう側で歯軋りしてるだろう総二郎を思い浮かべ、込み上げて来る笑いを飲み込み口元を隠した。
「うわぁ、これ素敵ね♪これにするっ!」
「うん、いいね。あんたらしいプレゼントになると思うよ」
「では、こちらのデザインで…ホワイト・ジェダイトで宜しいですね。三日程お時間を頂きますが宜しいですか?」
「はい、宜しくお願いします」
「あ、牧野…総二郎にバレない方がいいんだったら、俺が預かろうか?」
「え?類、大丈夫なの?こっちに滞在はいつまで?」
「暫くこっちに居るから、大丈夫♪」
「じゃあ……お願いしようかな」
「任せて、連絡するね♪」
「うん、お願いね」
出来上がりの連絡は俺の所にして貰い、店を出た。
途中のカフェでお茶して、笑い合う。
二人の間に流れる空気はあの頃のままで、
俺は、嬉しさ半分 悔しさ半分。
それでも、楽しい事には違いない。
その時間は、思いの外直ぐ過ぎて あっという間に西門邸の門が見えて来る。
少し手前で車を停めて、総二郎が先に戻る時間をくれてやった。
「類、今日はありがとう。素敵なプレゼントになりそう」
「そ?それなら良かった」
「うん、本当にありがとね」
「…あ、それ久しぶりに聞いた」
「じゃあ、出来上がったら連絡するね♪待ってて」
「うん、待ってる♪」
門の柱にへばりついているだろう総二郎に聞こえる様に、『連絡』を強調してみた。
「あっ、それからこれ、結婚祝いだと思って貰ってよ。花沢リゾートの温泉旅館の宿泊チケット。俺も関わったし、今度オープンするんだ♪いい所だよ?総二郎の誕生日で押さえてあるからね?」
「えっ!いいの?本当?」
「ごめんね、ありがと」
「ごめんねは、要らないだろ?」
「…うん、ありがと」
「ほら、早く行きな。旦那が待ってるだろ?」
「うん、じゃあね」
総二郎が待つ家に小走りで戻る後ろ姿を見送る。
門に入る前に振り向いた牧野に小さく手を振り、さっきのジュエリーショップに再び連絡を入れた。
「さっきのストラップ、あと二つ作ってくれる?……うん、ロードクロサイトとエンジェル・スキン・コラールで…うん、うん、宜しくね」
これで善し♪三人でお揃いだよ?総二郎。
牧野と俺は、ソウルメイトだもん♪
……いいよね?
一つは牧野に、一つは自身に…『変わらぬ思い』で居られる様に……
車に戻った類は、今日の数時間を思い出して知らずに笑顔になる。
たまに、牧野を連れ出して総二郎に妬かせるのもいいかも?
いや……凄く楽しかった♪♪
つづく♪
*365日誕生石については諸説ありますが、その中の一つを使わせて頂いております。
※こちらのお話は、チーム類の合作となります
誰がどの部分を書いたのか?
想像しながらお楽しみ下さいませ…<(_ _)>
類は、つくしの姿を見つけると、急いでその横に車を近づける。
そして、助手席の窓を開けた。
「遅くなったかな?」
「ううん。 あたしも今、出てきたところ」
つくしは、慣れた手つきで類の車の助手席のドアを開けると、スルリと乗り込んだ。
そしてしっかりとシートベルトを締める。
その時、バックミラーに総二郎の姿が映る。
その焦った表情に、類は内心クスッと笑う。
「出来た?」
「うん」
つくしがシートベルトを締めたのを確認し、類はゆっくり車を発進させる。
「忙しいのに、わざわざごめんね」
「いや、誘ったのは俺の方だし。 それより、、結婚おめでと」
「あっ/// うん。 ありがと」
類は、まずお祝いの言葉を告げる。
その言葉に、つくしは照れながらも嬉しそうな表情で答えた。
その表情が見れただけでも、こうして会って良かったと類は思う。
「結婚式に出られなくてごめんな。 ちょうどワイン商戦が始まったばかりでさ」
「ううん。 類も忙しいもんね。 ずっと海外だし」
仕事が忙しかったのは事実。
だがそれよりも牧野の花嫁姿を直視できなかったという方が正しいかもしれない。
女々しいと言われるかもしれないけど、やはりまだ時間が必要だから。
「総二郎から、結婚式の写真が送られてさ。 あんた、凄く綺麗だった」
「ありがと///」
二人が微笑み合っている写真。
白無垢姿のあんたが、総二郎を見上げてた。
そして総二郎も、満面の笑みで微笑んでいた。
初めて見る二人の姿が、そこには確かにあった。
「んで、総二郎の誕生日プレゼントだろ?」
「そう。 なんでも持っているから悩んでてね」
連絡を取った時、牧野と二人っきりで会いたいと思った。
もちろん邪な考えはない。
二人の幸せを願っているのは事実。
だけど、、俺にとって牧野はやっぱり特別で、その牧野と会えるのはやっぱり至福の喜びであるのに変わりはない。
だから、総二郎の誕生日をダシに使う事を思いついた。
こうすれば、簡単に牧野と二人っきりになれると思ったから。
車の窓を少し開ける。
そして耳を凝らすと、やはり聞きなれたバイクの音が聞こえる。
クスッ…。
あいつ、かなり焦ってる。
さて、どこまで我慢できるかな?
あんな幸せそうなベストショットを送り付け、俺にとどめの一撃を加えるんだから、それなりの覚悟はしろよ。
類は、グンッとアクセルを踏み込む。
そして目的の場所へと車を走らせた。
二人を乗せた車は、郊外の大型ショップモールへと辿り着く。
様々な店舗の他、レストランやシネコン、水族館まで併設された一大施設だ。
こういった場所に縁の薄いつくしは、中に足を踏み入れた途端、目をキラキラと輝かせる。
「凄いっ! 広~い! ここならいいのが見つかるかもっ!」
「あ…でも…。その前にちょっと付き合ってくれる?」
「あっ、そうだった。ごめんね」
すまなそうに告げる類に、つくしも謝る。
この施設はこの夏オープンしたばかりで、運営は花沢物産。
類は、つくしの頼みでここに連れてくる代わりに、現地調査もしたいと告げていた。
勿論それはただの口実で、単につくしをつれ回したいだけなのだが。
「あっ、じゃあまず行くとなると…映画館かなぁ…?」
「ん」
人混みが凄いからと手を繋ぎ、シネコンの方へと足を進める。
そんな二人の後を、しっかりと総二郎が付ける。
…なんだよ…。何で映画館の方へ行くんだ…?
ん…? 映画……?
はっ! ま…まさか……?
-以外、総ちゃんの脳内妄想劇場-
つ『はぁ…素敵なシーンだなぁ…』
類『牧野』
ちゅっ❤️
つ『えっ…類、どうして…?』
類『キスしたかったから。大丈夫、周りは暗いし、誰も見てないよ』
つ『そうね…❤️』
類の右手が、つくしの胸元に…………???
ちょっと待てっ!!
そんなの駄目だろっ!!!
妄想している間に二人を見失い、慌ててその後を追う。
幸い二人は、映画館の前で何やら話していただけで、そのまま別の場所に向かうようだ。
…良かった…。映画は観ないようだな…。
…ったく…。冗談じゃねぇっ…。
…って、今度は何処に行くんだ?
首を傾げる総二郎を他所に、二人は水族館の中に入って行く。
総二郎も慌ててその後を追った。
「うわーっ! 凄いね、鰯の群れが綺麗っ!」
「…美味しそう、じゃないんだ」
「あっ、失礼ね~」
ぷうっと頬を膨らませる姿はとても人妻、それも次期家元夫人とは思えない。
少し拗ねたつくしに『ほら、あんたに似てるのがいるよ』と小さな水槽を示した。
「えっ? どれ?」
「あれ?」
つくしが水槽に顔を近付ける。
中には砂が敷き詰められているが、魚がいるようには見えない。
『ほらっ』と類も顔を近付ける。
その姿を、またも影から眺めていた総二郎は、気が気でない。
何しろ、顔を寄せ何かを見つめる二人は、今にもキスしそうなほど顔が近いのだから。
水槽に目を向けた類は、その硝子に映る総二郎の、恨みがましくこちらを見据える姿に喉を鳴らした。
「…類? どうしたの?」
「ん…なんでもない。ほら、あれ」
総二郎が後をつけてる等と微塵も思わぬつくし。
その気をそらすように、水槽を指差す。
丁度その時、砂の中からひょっこりと、細長い生き物が顔を出した。
「なっ…なにこれっ?」
「チンアナゴ」
「えっ? これがあたしに似てるの…?」
「ん。牧野みたく、小さくて可愛い」
笑顔で可愛いと言われてしまえば、それ以上怒ることなど出来ない。
『えっと…その…』と口ごもりながら、真っ赤になった。
「じゃ、そろそろ店を見てみる?」
「もう類の方はいいの?」
「ん、充分」
にこりと笑い、ショップが並ぶ方へと足を向ける。
洋服、宝飾品、バッグなどの革製品、生活雑貨、ありとあらゆる店舗が揃っていた。
「沢山あって迷っちゃうなぁ…」
「プレゼント、何にするつもりだったの?」
「う…ん…」
総二郎は基本、何でも持っているし、手に入れられる。
そんな相手に渡すとしたら、自分では買わないもの。唯一のもの。つくしにしか渡せないもの。
視線を宙にさ迷わせていたつくしの目に、とある店の品物が目に飛び込んできた。
『365日誕生石 あなたの石は?』
「ねぇねぇ、誕生石って毎日あるの?」
「……へぇ…」
「あたし、トルコ石かラピスラズリだと思ってた……類は、アクアマリンだよね?」
「……何か面白そうだね、見てみよ♪」
「うん♪」
総二郎が尾行している事は確認済み、彼女の腰に然り気無く手を置いて、
これ見よがしにエスコートした。
「……類は……エンジェル・スキン・コラールだって……綺麗な色だね」
「………ピンク色なんだけど…俺 男だよ?」
「うふふ、類に似合いそうだよ?」
**
三月三十日、エンジェル・スキン・コラール
石言葉は『変わらぬ思い』で、美しいピンク色の珊瑚の事。
天使の肌に例えられることが、名前の由来になっています。
硬度が低く、ナイフでも簡単に傷がつく為
取り扱いには十分な注意が必要。
天然ものは非常に高価な宝石で、幻の珊瑚と言われる事もある。
**
「牧野は……あ、これだ…」
「うわぁ、誕生石って青系だと思ってたから、新鮮だわ……」
「あんたの色だね♪」
**
十二月二十八日、ロードクロサイト
石言葉は『新しい愛とロマンを招く』
別名はインカローズで、薔薇色の人生を象徴する石です。
ロードクロサイトは、豊かな愛情で包まれ傷ついた心を癒してくれる。と言うエネルギーがあります。
また、ソウルメイトを引き寄せる力もあります。
**
「……えと…総のは……あ、これだ」
**
十二月三日、ホワイト・ジェダイト
石言葉は『浄化された魂』
ジェダイトとは、翡翠の事。
古代から翡翠は、お守りや魔除けとして使われてきました。
ホワイト・ジェダイトとは、白い翡翠の事で、希少価値が高く、石言葉の通り浄化された魂そのものです。
**
俺の大好きな瞳をキラキラさせて、総二郎の誕生日石の説明を読む牧野の横顔。
彼女が幸せなら、それでいい。
総二郎と結婚したとしても、こうしてこんな風に隣で幸せそうな彼女を見られるなら、
それも、いい。
……ねぇ、牧野。ずっとソウルメイトでいいよね?
あんたの誕生日石は、ソウルメイトを引き寄せるんだって、いいよね?
「ねえねえ、類。浄化された魂だってっ!
これで色々浄化されるかな?」
「ぷっ、牧野…それ、総二郎に言っちゃダメだよ?」
「これで、ストラップとか作れるかな?」
「ストラップ?」
「総は、アクセサリーって感じじゃないもん」
「成る程ね…ちょっと待ってて…」
花沢で懇意にしてるジュエリーショップに連絡して、石の確認をした。
総二郎の誕生日石 ホワイト・ジェダイト、
牧野の誕生日石 ロードクロサイト、
そして……俺のエンジェル・スキン・コラール♪♪
………在庫 あり、ラッキーだ♪♪♪
「牧野、行くよ」
「えっ、どこ?」
「石、揃ってるって♪」
再び、モール内の大理石の柱にでもへばりついて様子を伺っているだろう総二郎に見せ付けるべく、牧野をエスコートして少し小走りで外へ。
車をジュエリーショップへ走らせた。
総二郎が追って来てるだろうから、信号なんて無視したい処だが、少しだけ我慢。
曲がり角の信号では、わざと赤信号ギリギリで曲がってやった。
予約を入れたジュエリーショップで、恭しく迎えられ気後れしてるっぽい牧野をエスコートして準備されていた個室へ。
通りの向こう側で歯軋りしてるだろう総二郎を思い浮かべ、込み上げて来る笑いを飲み込み口元を隠した。
「うわぁ、これ素敵ね♪これにするっ!」
「うん、いいね。あんたらしいプレゼントになると思うよ」
「では、こちらのデザインで…ホワイト・ジェダイトで宜しいですね。三日程お時間を頂きますが宜しいですか?」
「はい、宜しくお願いします」
「あ、牧野…総二郎にバレない方がいいんだったら、俺が預かろうか?」
「え?類、大丈夫なの?こっちに滞在はいつまで?」
「暫くこっちに居るから、大丈夫♪」
「じゃあ……お願いしようかな」
「任せて、連絡するね♪」
「うん、お願いね」
出来上がりの連絡は俺の所にして貰い、店を出た。
途中のカフェでお茶して、笑い合う。
二人の間に流れる空気はあの頃のままで、
俺は、嬉しさ半分 悔しさ半分。
それでも、楽しい事には違いない。
その時間は、思いの外直ぐ過ぎて あっという間に西門邸の門が見えて来る。
少し手前で車を停めて、総二郎が先に戻る時間をくれてやった。
「類、今日はありがとう。素敵なプレゼントになりそう」
「そ?それなら良かった」
「うん、本当にありがとね」
「…あ、それ久しぶりに聞いた」
「じゃあ、出来上がったら連絡するね♪待ってて」
「うん、待ってる♪」
門の柱にへばりついているだろう総二郎に聞こえる様に、『連絡』を強調してみた。
「あっ、それからこれ、結婚祝いだと思って貰ってよ。花沢リゾートの温泉旅館の宿泊チケット。俺も関わったし、今度オープンするんだ♪いい所だよ?総二郎の誕生日で押さえてあるからね?」
「えっ!いいの?本当?」
「ごめんね、ありがと」
「ごめんねは、要らないだろ?」
「…うん、ありがと」
「ほら、早く行きな。旦那が待ってるだろ?」
「うん、じゃあね」
総二郎が待つ家に小走りで戻る後ろ姿を見送る。
門に入る前に振り向いた牧野に小さく手を振り、さっきのジュエリーショップに再び連絡を入れた。
「さっきのストラップ、あと二つ作ってくれる?……うん、ロードクロサイトとエンジェル・スキン・コラールで…うん、うん、宜しくね」
これで善し♪三人でお揃いだよ?総二郎。
牧野と俺は、ソウルメイトだもん♪
……いいよね?
一つは牧野に、一つは自身に…『変わらぬ思い』で居られる様に……
車に戻った類は、今日の数時間を思い出して知らずに笑顔になる。
たまに、牧野を連れ出して総二郎に妬かせるのもいいかも?
いや……凄く楽しかった♪♪
つづく♪
*365日誕生石については諸説ありますが、その中の一つを使わせて頂いております。
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